食の安全科学技術演習開講および実施報告

神戸大学大学院農学研究科

食の安全・安心科学センター

Research Center for Food Safety and Security,
Graduate School of Agricultural Science,
Kobe University

FSSlogo.jpg

食の安全科学技術演習開講および実施報告

平成22年8月23日(月)~9月3日(金)
於:農林水産消費安全技術センター(FAMIC)神戸センター

 本センターの起案により本学農学部の3回生以上を対象とした「食の安全科学技術演習」が本年8月23日(月)~9月3日(金)の2週間(月~金の10日間)、神戸市ポートアイランドに所在する農林水産消費安全技術センター(FAMIC神戸センター)で行われました。

 応用動物学科・応用動物学コース及び生物機能化学科・応用生命化学コースでは食品衛生課程を履修し、定められた科目を修得することによって、食品衛生管理者および食品衛生監視員の資格を得ることができます。本演習は、上記資格をさらに補強しようとする者や同等の知識・技術を習得しようとする者を対象とし、食品中の危害物質検出、同定する実践的レベルの手法やシステムを体得することを目的とするもので、本年度は農学部に在籍する5名の学生が神戸センターでルーティン業務として行われている食品等の一般・微量成分分析および食品表示等真正性確認分析について実践的レベルで研修しました。主な研修内容は下記(添付写真はFAMIC神戸センターのご提供)のごとくでした。

そば加工品のアミノ酸分析
そば加工品(そば粉、干しそば、生そば)は、主な原材料として「そば粉」、「小麦粉」が使用され、その配合割合は様々であり、「8割そば」等「そば粉」の配合割合が表記されているものも多く見受けられます。そば粉と小麦粉とでは構成アミノ酸のパターンに特異的な違いがあることから、そば加工品のアミノ酸組成を分析し、原料そば粉の配合割合を推定することができます。この分析方法は、試料中のたん白を酸で加水分解し、アミノ酸としたものをアミノ酸アナライザー(HPLC)でアミノ酸(約20種)を測定します。この分析法を用いていくつかの銘柄のそば粉配合割合を推定しました。

100823-1.JPG

しょうゆ(全窒素分、無塩可溶性固形分、性状、色度、異物、内容量)
しょうゆのJAS規格では全窒素分等の基準により「特級」、「上級」、「標準」に区分されています。買い上げた商品がJAS規格を適合しているかについての確認のため、全窒素分、性状、色度、無塩可溶性固形分、異物及び内容量等を測定しました。

100823-2.jpg

醸造酢(酸度、無塩可溶性固形分、性状、異物、内容量)
醸造酢のJAS規格では、果実酢、穀物酢など種類毎に酸度の基準が設定されています。買い上げた商品がJAS規格を適合しているかについての確認のため、酸度を測定しました。性状、無塩可溶性固形分、異物及び内容量を検査します。                                                 電位差滴定装置を用いて中和滴定等を行いました。

100823-3.jpg

農産物中の残留農薬分析
① GC-MS、LC-MSを用いた一斉分析法
農産物中の残留農薬のサンプリング、抽出、測定を行いました。残留農薬の分析方法はGCMS,LCMS等を用い、一斉分析法で約100農薬を同時に測定しました。

②有機JAS格付け品と通常栽培農産物について
有機農産物は限られた農薬しか使用することができません。市販されている有機農産物(野菜等)を買い上げ、残留農薬を測定し、通常の野菜の数値と比較しました。

100823-4.JPG

炭素安定同位対比によるC4植物原料混入の有無(果実飲料)
「ジュース」と表示可能なものは果汁が100%のものだけです。砂糖、異性化液糖等を添加された製品について炭素安定同位対比の分析により、表示との整合性を確認しました。

DNA分析による魚介類の品種判別
サバ属魚類はマサバ、ゴマサバ、タイセイヨウサバの3種が知られています。近年、ヨーロッパから輸入されるサバ類の大部分はタイセイヨウサバで、塩蔵、塩干魚類に加工され、切り身や表皮を取り除く等の加工がなされ販売されていることから、目視では判別が困難です。そのため、原料原産地の表示が適正にされているか確認することが必要です。
DNA分析によりサバ属魚類3種(マサバ、ゴマサバ及びタイセイヨウサバ)の種判別を行い、適切な表示がなされているかを確認しました。

ICP-MSを用いた元素分析による加工品等の原料原産地の推定
原料原産地の表示が定められている加工食品等において、当該サンプルを酸により分解し、得られた試料溶液中の元素を分析し、そのデータを統計解析し国産若しくは輸入品の産地判別等を行いました。

100823-5.JPG

本演習を終えて履修した学生さんの感想は以下のごとくでした。
・身近な食品について、様々なことを学べて、とてもよい演習でした。特に、講師の先生方と話す時間が多くあったので、仕事内容などの話も聞けて、感謝しております。
・普段では触ることのないような検査機械や貴重な薬品を惜しみなく使わせていただき滅多にない体験ができました。将来の選択にも新たな幅が生まれる良い機会になりました。ありがとうございました。
・学校では使えない機器を使うことができ楽しかったです。濃度の分析では、実践的な方法を知ることができてとてもためになりました。
・センターの方には、とても良くして下さって、本当に感謝しています。研修の内容は、大学ではしたことのないことばかりで、とても新鮮で貴重な経験でした。ありがとうございました。
・大変親切に指導して下さりありがたかったです。色々な課で様々な実験ができて、また高価な機械も使わせていただき勉強になりました。

 わずか10日間の短期ではありましたが、履修生にとって大変充実した演習となりました。来年度以降も引き続き本演習を継続し、我が国の食の安全安心の将来を担う人材を本学より輩出して行きたいと思います。
 本演習の企画・実施にあたりご尽力いただいたFAMIC神戸センターの職員の皆様に心より感謝する次第です。今後ともどうぞよろしく御願いいたします。