Intergenomics研究会
神戸大学 / 神戸大学農学部・大学院農学研究科
 
What is Intergenomics?

ホーム(新着情報)

# 研究会について

 インターゲノミクス研究会について

 ゲノミクスの現状とインターゲノミクスの可能性

 アプローチの具体例

 研究会ロゴについて

# インターゲノミクスの輪

 メンバー研究内容紹介

 学内外研究者・研究室へのリンク

 「ジョージ・ビードル “非凡な農民”(訳:中村千春)」

 「メンデルの仕事と生涯 “今に私の時代が来る”(著:中村千春)」

# セミナーと勉強会

 公開セミナー

 勉強会

# ご意見、お問い合わせ

アプローチの具体例 ~ブフネラとファイトプラズマと葉緑体

 トップページには、「(インターゲノミクスでは)ゲノムとゲノムの相互関係を統一的な視点から分子レベルで追求し、種や階層の壁を越えて議論を深化する」とずいぶん高尚なお題目が掲げられていますが、このコンセプトがどのような新しい視点を生命科学に提供するのか、ここでは具体的に例を挙げながら少し紹介してみたいと思います。

ブフネラは、昆虫のアブラムシの細胞内に存在する共生細菌です。分類学的には大腸菌に近縁であるこの細菌は、アブラムシが植物から吸汁する師管液に不足しがちな必須アミノ酸を合成して宿主に提供し、代わりに宿主からは自らが増殖に必要な各種栄養素を提供してもらうことで共生関係を成立させています。

 ファイトプラズマは、グラム陽性細菌に近縁の植物病原細菌で、植物の細胞内に寄生します。昆虫によって伝搬され、これまでに600種以上の植物種で萎縮・叢生・てんぐ巣・フィロディー(葉化)などの特徴的な病徴を伴った病気を引き起こすことが知られています。

 葉緑体は、植物細胞内のオルガネラの一種です。葉緑体は、細胞内で太陽から発せられる光エネルギーを化学エネルギー、電気エネルギーに変換することで炭酸同化作用を行い、植物の生育に必要なエネルギーと炭水化物を生成します。このオルガネラは、植物の祖先となる細胞にシアノバクテリアが細胞内共生したことに起源を持つと現在では広く信じられています。

 これらの共生・寄生・オルガネラ化などの生物現象は、細菌、細胞内共生(寄生)という共通のキーワードを持つものの、広域な生物種に亘り、異なる専門性を要するため、すべてを包括的に議論するような場は、これまであまり提供されてこなかったように思います。「インターゲノミクス」という概念は、これらの現象をすべてゲノムとゲノムの相互作用と見なすことで、同一次元で捉えることを可能とします。すなわちブフネラゲノムとアブラムシゲノム、ファイトプラズマゲノムと植物ゲノム、葉緑体ゲノムと植物ゲノムという図式で捉え、ゲノム-ゲノムの相互作用に共通した特徴はないか、あるいはある種のゲノム相互作用に固有の特徴はないかという形の視点を提供します。

 実際、そのような視点でこれらの生物現象を捉えた時、いくつかの非常に共通した現象が起こっていることに気付きます。その一つは例えば細胞内共生に伴って起こるゲノムサイズの大幅な減少、ゲノムリダクション、です。ブフネラは細胞内共生に伴って、ゲノムサイズがほぼ7分の1になっていると報告されています。ファイトプラズマでは4分の1、また一般的な葉緑体ではシアノバクテリアと比較すると1/20程度というゲノムサイズになっています。これらの例は、「ゲノムとゲノムが一つの細胞内で長期に渡って相互作用する時、細胞質に存在するゲノムのサイズが減少していく」というある種の傾向、あるいは何かの生物的なプログラムがあることを予感させます。重複して脱落した遺伝子はそのほとんどが細胞質に存在するゲノム側というのも興味深い現象です。

このように「インターゲノミクス」では、多様な生物現象をゲノムとゲノムの相互作用と捉え直すことにより、その共通性あるいは特異性を浮き彫りにすることを目的としています。この視点は、ゲノムレベル、遺伝子レベル、あるいは物質レベルなど、すべての理論・実験科学で適用可能であり、より広い生物現象の本質を提示する発見につながることを我々は期待しています。


(C) Copyright Intergenomics Community, Kobe University