The Ring of Intergenomicsインターゲノミクスの輪

タンパク質のリン酸化によってシグナルを伝える

 植物は刻々と変化する自然環境で生育しています。いったん根を生やすと容易に移動できない植物は、好まない生活環境に耐え、状況が好転するまで待たなければなりません。そのため植物は進化の過程で様々な環境適応能を獲得してきたと考えられています。また植物は自然環境の変化にただ耐えるだけではなく、その変化を情報として利用し自身の形態や代謝反応を制御しています。このような環境適応を発揮するためには、環境の変化を特異的に感知する「センサー」、センサーが受け取った情報を正確に伝達する「シグナル伝達経路」およびそれぞれの変化に対する「応答系」が機能する必要があります。我々の研究グループでは環境の変化を植物がどのように認識し、自身の成長を制御するか、あるいはストレス耐性を獲得しているのかを明らかにすることを目的として、特に細胞内のシグナル伝達経路に着目して研究を進めています。近年ではシグナル伝達経路を改変することでストレス耐性を付与したり、特定の代謝系の働きを強めたりするなど有用な植物を作り出すことに成功した例も報告されており、農学的にも注目されています。

<インターゲノミックス的発想による今後の研究アプローチ>

 植物は動物とは異なり、環境の変化を感じる特定の組織や器官(目や鼻など)をもっていません。そのため個々の細胞が環境の変化を感じ取り応答すると考えられているのですが、そのままでは組織や個体レベルでの応答ができません。つまり個々の細胞が何らかの方法でやり取りをし、機能を分担し互いに制御することで組織・個体レベルの応答が成立すると考えられます。しかしこれまでのところそれがどのような仕組みでなされているかについては分かっていません。個々の細胞にあるゲノム間の相互作用としてこの問題を捉え、インターゲノミックス的発想を用いるとこで新しい成果が見つかるのではないかと考えています。