The Ring of Intergenomicsインターゲノミクスの輪

動物染色体のインターゲノミクス

動植物の栽培化・家畜化とインターゲノミクス

 ヒトの体は、一個の受精卵が、体細胞分裂を繰り返すことにより増殖したおよそ60兆個の細胞からできている。これらの体細胞は、分裂する前にゲノムを複製し、それを娘細胞に分配するので、一部の例外を除き基本的に全く同じゲノムを持つ。しかし、親から子へとゲノムが継承されるときには、減数分裂と受精により、新たなゲノムのセットが生まれる。大抵のヒトの場合は(ミックジャガーのような大スターや、重婚を認めている民族・国は例外として)、生殖の対象となる生涯の伴侶は1人のことが多い。そのため、減数分裂によるゲノムの多様性の創出が、子孫における遺伝的多様性の確保のために特に重要となる。

 私は哺乳類であるマウスを実験材料として、減数分裂における染色体の動態を分子レベルで理解することを目標に研究を行っている。注目している分子は、コヒーシン(cohesin)やコンデンシン(condensin)と呼ばれるタンパク質複合体である。コヒーシンは染色体の接着(cohesion)に、コンデンシンは染色体の凝縮(condensation)と分離に寄与することが知られている。どちらもSMC(Structural maintenance of chromosome)タンパク質のヘテロダイマーをコアサブユニットとしてその複合体に含んでいる。SMCタンパク質は、バクテリアにも存在するので、ヌクレオソームの構成分子であるヒストンタンパク質よりも、その進化的起源は古いと考えられる。我々の当面の課題は、これらのタンパク質複合体が、どのように減数分裂に特徴的な染色体動態(相同染色体の対合・組換え・分離)と関わるかを明らかにすることである。

 インターゲノミクス研究会との関わりについては、特に深く考えずに、「インターゲノミクス」という名前に惹かれて入会しました。しかし、動物の染色体を扱っている研究者(室)はあまり多くないようなので、その辺のところで貢献できればと考えています。