極限環境[酸・塩基]〜好酸性菌・好塩基性菌〜


極限環境微生物の中には、 強酸性や強塩基性をより好むものもおり、それらは 好酸性菌、好塩基性菌 と 呼ばれています。 地球上のほとんどの自然環境は、本来pH5から9といった中性の値です。 しかし好酸性菌はpH5以下といっためずらしい生息地で繁殖し、好塩基性菌 はpH9以上の生息地を好みます。
 強酸性の環境は、熱水噴出口や、一部の温泉内の硫黄ガス産物といった 地球化学の活動によるものや、ある好酸性菌自身による代謝活動によって つくられます。 好酸性菌は炭坑から掘り出され残っていた破片の中にもみつかっています。 おもしろいことに、好酸性である極限環境微生物の細胞内部は強い酸性に 寛容ではありません。おそらくそのような酸性はDNAといった重要な分子を 破壊してしまうからでしょう。 彼らは 酸を細胞中に入れないようにして 生き延びています。しかし、細胞を保護する防御分子はその環境に接触する他のものと同じように極端な酸性条件で作用しなければなりません。実は、pH1以下で働くことの出来るextremozymesが一部の好酸性細菌の細胞壁やその下にある細胞膜から分離されました。
 酸に寛容なextremozymeの潜在的応用は、酸性溶液内で化合物を 合成させるための触媒としてや、動物の胃の中で働かせようとする 飼料への添加物など、様々です。 食料内への酵素の使用はすでに一般化されています。 選び出された酵素は、細菌が普通食物を摂取に適した大きさに 破壊するために周囲へ分泌しているものです。 食物に酵素を加えた時、酵素は 安価な穀物の消化率を改良 し、そうすることによって、少しでも高価な食物の必要を避けることができます。
 好塩基性菌は炭酸塩を多量に含む土壌や、エジプトやアフリカの リフトバレイやアメリカ西部で見つかったような、いわゆる炭酸湖 (soda-lakes)に生息しています。 アメリカや海外の洗剤製造者は、特に好塩基性菌の酵素に強い興味を 持っています。 効果的に作用するために、洗剤は食べ物や油を含むソースで出来てしまった シミに対処しなければなりません。 そのシミを取り除く作業は、プロテアーゼ(タンパク質分解)や、 リパーゼ(脂肪分解) といった酵素によって成されます。 しかし、洗濯洗剤は強くアルカリ性に傾き、標準のプロテアーゼやリパーゼでは破壊される傾向にあります。しかし好塩基性菌から抽出した酵素は、 アルカリ性に傾いた環境でも活性を維持 するためその問題を解決することができます。そして今日、熱かったり、冷たかったりする条件で効果的に作用することの出来る様々な酵素が使用されており、また活発な開発が進んでいます。

本文は、「SCIENTIFIC AMERICAN」に掲載された「Extremophile」を参考に作成したものです


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