摂氏1度から3度といった 平均温度を維持している海が地球表面の半分以上を覆っていることからも 分かるように、 寒い環境は熱い環境よりもより一般的に存在します。 しかも北極や南極といった巨大な陸地は、永久に凍っていたり、 夏の数週間しか氷が溶けなかったりします。 驚くべきことに、このような極寒の環境も最も熱い環境と 同じように生命を養っており、この冷たい環境で生育する細菌を 好冷菌 と言います。
ワシントン大学のJames T.Staleyと彼の同僚達は 1年の大半が凍った 状態にある南極海の氷の中に微生物集団が生息していることを 明らかにしました。 これらの集団の中には微生物だけではなく、 光合成をおこなう真核微生物や、特に藻類、珪藻類なども含まれていました。 Polaromonas vacuolataというStaleyのグループが採取した 微生物は、好冷菌の最も代表的なもので、その微生物の 成長に最適な温度は摂氏4度であり、摂氏12度以上 では繁殖するには暖かすぎることが分かっています。
生産物の腐敗を避けるために低温での作業を必要とする食品加工業社や 高温で揮発する 芳香剤の製造者、 低温洗浄のための洗濯洗剤の生産者たちは 冷蔵庫の中と同じような温度でも働くことのできる酵素が必要 となり、 彼らは、低温環境でも活発に活動している好冷生物に興味を持ち始めました。本文は、「SCIENTIFIC AMERICAN」に掲載された「Extremophile」を参考に作成したものです