極限環境[塩]〜好塩菌〜


 もう一つの注目すべき極限環境微生物に 好塩菌があります。この好塩菌は高塩濃度環境、特に自然の塩水湖や太陽熱によって水が蒸発し塩濃度を高くした池で生息しています。後者は、海水が集まり蒸発する人工の池で、後には高濃度の塩が残り、その塩は氷 を溶かす目的のために収穫されます。
   塩を多く含む環境は、炭酸ソーダやある他の塩が アルカリ性に傾くイオンを放出することによって極端に アルカリ性に傾く場合があります。驚くことではありませんが、これらの環境に生息する細菌は強塩基と高塩濃度の両方に適応しています。
 好塩菌は魅惑的な適応によって塩濃度の高い条件でも生活することが出来ます。水は濃度の高い領域から濃度の低い領域に流れる傾向があるので、非常に塩濃度の高い溶液内に浮遊した細胞は、もしその細胞質がその環境よりも高い塩(またはその他の溶液)濃度でなければ水分を失い、脱水してしまいます。好塩菌は 細胞内の溶質を多量に生産 することによって、または 外部から引き込んだ溶質を保持 ことによってこの問題を解決しています。例えば、Halobacterium salinarumとして知られる古細菌はその内部で塩化カリウムを濃縮します。さすがに細胞質内の酵素は高濃度の塩化カリウムが存在する時だけ作用するのでしょう。しかし、H.salinarumの細胞構造で環境に接触する部分のタンパク質は高濃度の塩化ナトリウムを必要とします。
 塩耐性酵素の潜在的な応用は、他のextremozymeの応用ほど容易に 考えつきません。しかしながら、研究者たちは好塩菌のextremozymeを油田から抽出する原油の量を上昇させるための方法に組み入れようとする研究を進めています。
 研究者達が自然界で単独な種の細菌を多量に見つけ、それらを実験室の培地で育てることはめったにありません。そのため極限環境でのライフスタイルをもつ生物を分離したり大規模な生産を行うことは困難でしかも莫大な費用がかかります。

本文は、「SCIENTIFIC AMERICAN」に掲載された「Extremophile」を参考に作成したものです


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