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塾長ベトナム出張編
(2016年度)



9月11日〜9月18日の7日間、塾長が学術幹事を務める神戸産学官交流会の8名の会員方々、神戸大学農学研究科植物病理の土佐教授と塾長の計10名<写真を拡大>でベトナム・ホーチミンおよびダラット周辺地域を視察研修しました。 視察研修の趣旨は我が国の近未来的TPP参加の可能性を踏まえ、TPP参加国の1つであるベトナム民主共和国南部地域の農・食産業の現況と未来を現場の視察および現場の人々と食に接することで「体感」することでした2出発時間が遅れたこと、そしてホーチミン空港周辺の悪天候のため予定の到着時間を1時間ほどオーバーして都合6時間かけてホーチミンに到着しました。

ベトナム社会主義共和国の面積は32万9241km2(日本の約90%)約9434万人、国民平均年齢は28歳。(参考:タイ34歳/中国35歳/日本45歳) 総人口の約半数が25歳以下の若者、人口の8割を40歳以下の年齢層で占めていることが圧巻です。研修では日本向けにどのような農産物・加工品生産が行われているのか?どのような日本の農産物・加工品がベトナムで人気があるのか?それら現場で改善・改良すべき点は何なのか?をとりあえず勉強してみようということになりました。

今回我々が訪問したホーチミン市はの旧名はサイゴン。古くからベトナムの経済的中心地として栄え、「東洋のパリ」と呼ばれたフランス統治の影響が残る街並みと、経済成長で建てられた高層ビル郡と雑多なバイク渋滞が同居し、アジアらしさを残す街並みです。登録人口ベースで800万人を抱えるホーチミン市はベトナム南部圏の中心として、同国GDPのおよそ半分を占め経済を牽引しているのです。とにかく通りのオートバイ(カブが殆んど)の数に圧倒されます。

研修2日目の午前、ドラゴンフルーツを日本やその他近隣諸国に輸出している日本企業ヤサカフルーツを視察しました。

ヤサカフルーツ専務取締役渡邉真澄様とから会社の事業内容等につきブリーフィング頂きました。現在 ベトナム産マンゴーと、ドラゴンフルーツに続き対日輸出しています。日本へ果物を輸出するための植物防疫法上の問題点、ベトナム人を雇用するに当たっての問題点、それらの解決法と将来の展望について意見交換を行いました。

昼食後に国立Nong Lam大学を訪問しました。そこで国際協力部門の Nguen Ngoc Thuy部長、食品科学学部のPhan Tai Huan学部長、植物防疫学教室のLe Khac Hoang博士らと国際的視野をもった人材を育成するためにどのような取り組みを行なっているか、TPPの時代に向けてどのような人材を育成しようと考えているか、等について意見交換を行ないました。

面談の終わりに神戸産学官交流会からの贈り物、南部の鉄瓶を湊社長から、国際協力部門 Nguen Ngoc 部長にお渡しました。

研修3日目、ジェトロホーチミン事務所を訪問し、ベトナムの政治・経済等の状況について、栗原海外投資アドバイザー、南雲主席研究員らから最新のデータを元にブリーフィングを受けました。データは詳細かつ多岐にわたるもので、非常に有意義でした。

参加された方のコメント:ジェトロ現地アドバイザーの方にベトナム、ホーチミンの現状と今後をお話し頂き勉強になりました。総合的には 共産国の利点は国営企業で大型設備して形を作り、それを途中で民間にする、そして中身を先進国 日本等に指導を受ける事により軌道に乗るのではないでしょうか?中国の繁栄がこれからベトナムに移る感じがします。

研修4日目: ホーチミン市から車で約2時間の場所にあるメコンデルタの入り口の港町,ミトーを訪問しました。メコンデルタの面積はおよそ3万9000平方キロメートル(九州より大きい)。その土壌は肥沃で様々な熱帯作物が生産されています。ココヤシもその1つ。ココヤシの用途は、ジュースとして飲むほか、砂糖漬けやキャンディなどのお菓子、葉は、屋根を葺いたり箒(ほうき)などに使われ、内側の殻からは工芸品が作製されます。その他パパイヤ、マンゴスチン、ジャックフルーツ、ドリアン、バナナ等多種の果物が生産されていました。

ホーチミンへの帰り道ヤサカフルーツさんにドラゴンフルーツを納入している農家を訪問しました。ドラゴンフルーツは年3回の収穫。収穫の仕分けはサイズ別 S:320〜380、M:380〜440g、L:480〜540gでヤサカフルーツ向けはSサイズのみで、M,Lサイズには成長促進剤を適用、中国向けとのことであった。日本向けに対しては食の安全が徹底されているのを感じた。

空芯菜とニンニクの塩炒めと揚げ春巻きの塩加減が絶妙でビールが進みに進みました。

研修4日目: ホーチミンから北東に300キロほど離れ、標高約1500メートルに広がる高原の街、ダラットに移動しました。ダラットはフランス植民地時代に避暑地として開発された観光都市です。2009年の人口は約20万人。冷涼な気候を利用した野菜、花卉生産が盛んです。

午前中に市内の胡蝶蘭園[「YSA Orchid」を視察した。この胡蝶蘭園は近畿地方を中心に展開するクリエイティブ・フラワー・コーポレーション(株)の系列だそうです。

お茶(ウーロン茶、緑茶、紅茶)主に生産しているCAU DAT FARM を訪問、視察しました。この会社は一年前に国営企業から民間に成ったそうです。


茶葉を天日で乾燥し、次いで機械によって何度も茶葉を乾燥する工程を見学しました、

これで見学終了かと思いましたがこの後、事務所の裏方に案内され広大な土地と大きな農業ハウスを紹介されました。農業ハウスの一つではIT技術を駆使して環境にやさしいイチゴ、野菜作りが行われていました。でも、 素人が見てもほとんどのイチゴが病気にかかっており実がほとんどついていないようでした。土佐先生が農作物の病気の専門のドクターだと知るや若い農業リーダー達はどうすればよいかを熱心に質問し、土佐先生はそのカビがどんな種類のカビかを特定してから適切な農薬を使うことをアドバイスされていました。

土佐先生のコメント: ダラットは、冷涼・温暖な気候で、植生も日本とほとんど変わらず、日本の種子を導入して日本の野菜・花卉等を生産するには、極めて適した地であると実感した。大規模に農業を展開しようとしている若手経営者がいることを知り、将来性を感じた。しかし、病虫害診断と対策指導を行なう人材が不足しているように思われた。


研修6日目午前、DALAT AGRIFOOD社を訪問し、その食品加工工場(冷凍食品製造工場)を視察しました。ちょうど日本向けの冷凍ほうれん草の製造をしているところでした。

その他の野菜の品目も日本に輸出したいのだが、日本の食品安全基準が厳しくてなかなか実現できないとのことでした。

次の目的地の移動する途中の村で肥料、農薬等を販売している小売店を飛び入り視察しました。 土佐先生のコメント: 農家はこの店に病害に罹った植物を持ち込み、診断してもらい、農薬を処方してもらっていた。しかし、植物の診断は、持ち込まれた植物を見ただけでは分からない(間違う)ことが多い。それでも、農薬販売店は、薬を売るのが商売であるから、適当に診断して薬を処方する。すなわち、ベトナムの状況は、人間の病気の場合になぞらえて言えば、「薬剤師はいるが医者がいない」という状況であるように思われた。ベトナム農業のさらなる発展のためには、「植物医師」の育成が必要であると思われる。


昼休みのカフェで偶然であった77歳の日本人、高橋様のお誘いで、彼が居候?している農園を訪問しました。会員の方のコメント:35歳の若き経営者は「日本スタイル野菜」とイチゴ、野菜のプラスチック個装に表示、ホーチミン市の高級レストランに納入していた。

イチゴは都市部で高価に売れるので作り甲斐のある作物である。が、味見すると日本のイチゴよりも甘みが少なかった。

そしてここも病害に悩んでいました。土佐先生のコメント:ダラットは、冷涼・温暖な気候で、植生も日本とほとんど変わらず、日本の種子を導入して日本の野菜・花卉等を生産するには、極めて適した地であると実感した。大規模に農業を展開しようとしている若手経営者がいることを知り、将来性を感じた。しかし、病虫害診断と対策指導を行なう人材育成が必要であるように思われた。


今回の研修の締めくくり?に昆虫食のレストランを訪問しました。 ベトナムでは昆虫はかつてタンパク源の乏しい農村地帯の非常食でしたが、いまではなぜか「高級食」だそうです

厨房の大バケツの中にはコオロギやサソリが一杯。見るだけでも圧倒されました。これをホーチミン市内の高級レストランに卸しているそうです。

が、ここでも食べられるそうで、まさかこれを食することになるとは・・・・・・7日間の強行軍視察でしたす、農場から食卓までの現場および人々と食に接することができたので皆様ベトナム民主共和国南部地域の農・食産業の現況と未来をそこそこ「体感」することができたのではないでしょうか? 皆様お疲れさまでした。