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塾長科研費ベトナム出張編
(2016年度)




東大の関崎研の科研費基盤Aの分担研究者として塾長が第3回遠征に参加しました。塾長以外のメンバーは関崎先生とその学生さんの新井君、遠矢君(写真館その28、30に登場)と新顔の小方君(右から3人目)、Nong Lam大学獣医学部のDr Haiとその学生さん、塾長の教え子のTienさんです。<写真を拡大>今回の遠征の目的は現地調査で、具体的にはホーチミン市近隣の養豚農家を訪問しそこで飼育されている豚の口腔内に棲んでいる細菌叢を採取し、そのDNAを現地ラボで抽出、それを日本に持ち返り次世代シークエンサー解析することです。

Dr Haiの御陰で現地養豚農家の方々から我々の目的を理解して頂いた上で、人獣共通感染症の恐れもあるレンサ球菌を主たる対象とした研究なので防護服に身を包み、豚舎に入る前には消毒ミストを浴びなければなりません。

3月のホーチミンはすでに気温31度、豚舎の中はさらに高温高湿の環境、ゴーグルすぐ曇り、豚の糞尿の臭いがウワアっと鼻をつきますが、そんなことは一切頓着せず一行は豚舎の中を進みます。


過去の遠征の調査結果からサンプリングにもっとも適した生後50?60日の幼豚からのサンプリングです。一見皆健康そうですが、体表が黒い斑点状となっている個体が結構な数認められました。ブドウ球菌が主な原因の「スス病」です。

中にはとてつもない大きさの膿瘍を抱えた個体も居りました。日本の養豚場ではあり得ない光景です。

こんな豚を捕まえて検体採取するのですが、とにかくすばしこい豚を捕まえ、それを保定するのが大変な肉体労働でした。防護服がみるみる内に汗で透けてしまいました。


豚の口腔に綿棒を入れてとにかく唾液をこそぎ取る作業です。5分ぐらいかかるので、何頭も行っている内に豚を保定している手脚の筋肉が痙攣するほどでした。

61の歳の塾長も「獣医魂」を振り絞り奮闘した次第です。

今回の遠征では2つの農家から合計30余頭の豚の唾液サンプリングを何とか完了することができました。


採取した検体をさっそくNong Lam大学の動物病院検査室ラボに持ち帰りDNA抽出作業の開始。この作業も結構時間と手間がかかります。

圧巻は日本から持ち込んだ細胞破砕器で豚の唾液中に混入している細菌細胞の細胞壁を破砕する作業でした。この作業が不十分だと目的のDNAが十分量回収されず日本での次世代シークエンサー解析ができなくなるので念入りに時間をかけて行います。

ラボはWi-Fi環境が備わっているので、日本から他の仕事メールがジャンジャン届いてきます。これらをなんとか実験の合間を使って対応処理します。


作業中は外食できないので近くのお店からランチをテイクアウトして実験の合間に昼食です。この写真のランチで50円ぐらいですが、ラボの専属アシスタントのBinhさんが毎日近くの売店から現地の色々な果物を差し入れしてくれました。

人気No. 1はやはりマンゴーです。日本で買ったら4、5千円するかと思える様な濃密な甘さのマンゴーがその20分の1ぐらいのお値段で賞味できるのです。

ということで、日本ではでバチがあたりそうなぐらいの贅沢な食べ方で賞味させて頂きました。


まる2日がかりのラボ作業を無事完了したご褒美にと、夕方ホーチミン市の中心に繰り出しました。塾長の案内で一行が踏み込んだのがこの路地、「えっ、大澤先生こんなところ入り込んで大丈夫?」と関崎先生が躊躇されるような雰囲気ですが・・・。

心配ご無用、この路地の先に昨年9月出張時(写真館36をご参照あれ)に連夜通い詰めた小洒落たベトナム料理店、「An」があるのです。

定番の揚げ春巻きを前菜に「3,3,3(バーバーバー)」で乾杯!リーズナブルなお値段の料理と旅先の世間話でラボの仕事疲れを癒しました。


帰国の前日に一行は大学の公用車に乗ってホーチミンから南西方面に出発しました。

日本のODAで作った立派な吊り橋、カントー橋でメコン川を渡り、

4時間ほどで着いたのはCan Thoというメコンデルタの中心都市でした。人口は120万人で、ベトナム第5の都市だそうです。町並みや通りはホーチミン市よりも整然とした感じでした。


この町を訪れた目的は、現地のCan Tho大学の視察および農獣医系研究スタッフとの共同研究の可能性についての協議です。この大学は水産学、環境科学、農学を含む13学部を擁する学生数4万人の総合大学です。

キャンパス内はNong Lam大より整然とした感じでした。これも日本のODAの御陰だそうです。

大講堂に学生さん達が就職ガイダンスといことで沢山集まっていました。この辺も日本の大学と同じですね。


授業風景です。獣医コースの先生と学生さん達が突然の訪問にも関わらず笑顔で迎えてくれました。

翌日からキャンパスでは獣医系の学会が開催されるようで、展示スペースには関連業者の宣伝ブースが設置されつつありました。小方君は東京医科歯科大学を卒業後関崎研の博士課程学生さんとして昨年よりメンバー入りした学生さんです。彼女の研究テーマは鶏由来のキャンピロバクターなので思わずこのポーズ。後3年ありますが立派な博士号を大いに期待しています。

現地大学の研究スタッフの皆様と共同研究の可能性等について協議させて頂きました。とても友好的、建設的な話し合いとなりました。


どのような実験施設が利用可能なのか、農獣医学部の副学部長のNguyen Trong Ngu先生に直々に案内して頂きました。

案内された実験室はNong Lam大のラボとほぼ同等の仕事ができそうな設備でした。

低温フリーザーがちゃんと稼働していることがさらに好印象でした。


遠征最終日。Dr Haiとスタッフの皆さんが心づくしの送別会を企画してくれました。「モッ ハイ バー ヨー」」(1、2、3、乾杯!!)

宴の余興として関崎研の「3人姉妹」に現地のお土産として購入したアオザイとノンラーをわざわざ装着してもらって記念撮影しました。皆さん本当にお世話になりました。また会いましょう!

滞在中に塾長の教え子のTienさんの婚約者Hieuさんにも会わせて頂きました。Tienさんと同い年の32歳。不動産コンサルタントをされているそうです。とても物腰の柔らかい包容力のある男性でしたので、時々イケイケドンドン気味のTienさんと仲良くやってゆけそうです。5月に結婚式を挙げ、Tienさん曰く「お互い歳も歳なのですぐ子作りに入ります!」とのこと。幸せなご家庭を築かれることを祈念しています。