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塾長北海道視察研修編
(2017年度)




9月1日〜9月3日の3日間、塾長が学術幹事を務める神戸産学官交流会の12名の会員方々、神戸大学イノベーション研究科の吉田健一教授と塾長の計14名<写真を拡大>で北海道の帯広およびその周辺地域を視察研修しました。今回の研修の主旨はこの地域における「食と農業」を柱とした地域産業政策『フードバレーとかち』での産学官の具体的な取り組みを視察・研修することで、神戸とその周辺地域における同様な取り組みにも応用・活用できる情報収集と人の輪を作ることです。

神戸空港から札幌千歳空港に到着した一行はチャーターバスに乗り日勝峠を貫通する高速道で帯広に向いました。

峠の前でトイレ休憩。吉田先生と神大工学部OBの伊藤浩一さんと記念撮影。伊藤さんは現役時にH2ロケットのエンジンの作成に関わられた凄い方です。


明興産業の下土井会長は北海道名物のソフトクリームを思わず購入。「若いときにはこんなもの食べられなかった」んだそうで、その反動でつい食べたくなってしまうそうです。下土井会長は長年の社会福祉功労の功績により本年の4月に叙勲(旭日単光章)された凄い方です。

塾長の学生時代には車での日勝峠は難関でしたが、その後開通した道東自動車道はかなり長いトンネルが幾つも作られていて(よくもまあ沢山掘ったもんです。大感心!)、これによって帯広まで2時間半ぐらい、びっくりするぐらい近くになりました。昔(40年前)は旭川に迂回して5、6時間はかかったような記憶があります。

トンネルを貫けると眼前に十勝平野が広がりました。「東は白糠丘陵、北は石狩山地、西は日高山脈に囲まれ、南は太平洋にのぞむ面積 3600km2もあり北海道の1割も占める大きな平野で、東京都の約5倍の面積 」だそうで関東平野についで日本で2番目の大きさの平野です。ここに畑作、畜産、酪農、漁業といったほとんど総てのジャンルの農業が営まれています。


今回の視察研修に産学官交流会の学術幹事として参加して頂いた近畿大学経済学部の廣田章光先生の案内で帯広の西に市する芽室町に立ち寄り、

障碍者、高齢者、健常者が共働する九神ファームめむろ社が提携している農家での大豆、ジャガイモ、カボチャ等の農産物栽培の状況を見学しました。

1年前の8月は北海道に3つの台風が次々に上陸し、これによってこの地域でも河川の氾濫しこの畑も完全に水没してしまったそうです。が、一年後には再び収穫できるまでになりました。農家の方々の凄まじい執念を感じました。芽室町長の強い意志で「障がい者が自立就労できる場を提供」し、企業にも明確なメリットを与える"プロジェクトめむろ"での成功事例となっています。


その後九神ファーム社の古御堂様の案内で同社工場を訪問し、

九神ファーム社の事業取り組みについてご紹介頂きました(詳細についてここをクリック)。宮西芽室町長の強い意志で「障がい者が自立就労できる場を提供」し、企業にも明確なメリットを与える"プロジェクトめむろ"での成功事例となっています。

同社工場での食品加工の様子を見学いたしました。農作物の生産、食品加工、食材供給、地産地消レストランの垂直統合型ビジネスで、独立自立した経営モデルです。


芽室町長がこのような取り組み推進しようとしたきっかけは「私が死んだらこの子はどうやって生きてゆくのでしょう」という障碍児の母親の言葉だったそうです。

工場では19名の社員の皆さんが一心にジャガイモの皮を剥いていました。できあった九神ファーム社製のポテト真空パックです。農林水産省主催の「ディスカバリー農山漁村の宝」プロジェクトで見事受賞。式典ではポテトサラダを阿部首相にも食べて頂いたそうでうす。

芽室の皆さん!たいへん参考になりました。このような立派なお取り組みをされていることを神戸、兵庫の皆さんにお伝えします。


次に訪問したのが帯広畜産大学です。さすが北海度の大学です。正門から本校舎までの導線が長い!

キャンパスの空き地は白樺林に芝生です。欧米の大学の風情です。

キャンパス内の産学連携推進センターの前でお出迎え頂いたのは帯広市産業連携室の大村茂雄主任です。ここから先の旅程はほぼ帯広市の全面協力によるものでした。かたじけない!


大村主任にセンターの建物内にセミナー室案内され、そこで小田有二センター長から大学と地元企業を含む食品メーカーの恊働による食品開発の取り組みについてご紹介頂きました。小田先生は吉田先生とお互いに前の職場、福山大学の同僚です。一見温厚な趣のある方ですがそのお言葉には大学・学生・研究に対する真摯なる熱さを感じました。

帯広畜産大学では学生教育との連携による活動が特徴で、地元企業を含む食品メーカーとの具体的食品開発を学生参加によって実現した事例をご紹介頂きました。

ただ企業側に寄り添い過ぎれば、身勝手な企業論理に振り回されてしまうという全国どこの大学にもあるジレンマにも言及されました。


お話が終わって小田先生が大学産の牛乳を振る舞っていだだきました。

乳脂肪分4%以上の濃厚な旨味のある牛乳でした。畜産大ではこの他チーズやアイスクリーム等も販売しているそうです。(詳細についてここをクリック)。

大学の実習でもパン作りがあるようで、これが女子学生に大人気だそうです。パン作りの虜になってパン屋に就職された学生さんもいるようです。そんなことを嬉しそうに語られる小田先生とセンター前で記念撮影。小田先生ありがとうございました。


その日の夕べは帯広市のご紹介のお店で会食いたしました。

この店自慢の「ホルモンとジンギスカン(ラム)の鍋」

ジャガイモを2つに割って揚げた巨大なフライドポテト等々、帯広の大地の恵を賞味させて頂きました。


2日目、再びチャーターバスに乗り込んで、

帯広市産業連携室の奥村哲秋主査と

フジッコ株式会社研究開発室紙谷年昭主任のご添乗・案内にて、


とかち財団(十勝フードバレー)の本部を訪問し、

同財団の小池晃一事務局長、葛西大介事業部長より農業試験場、産品流通を担うJA十勝と連携し、消費財製品開発、販路開発支援の取り組みについてご紹介して頂きました。

同財団、フジッコ株式会社、そして神戸大学(吉田健一先生)との産学官共同事業(詳細についてここをクリック)である、大豆ピニトール事業(枝豆の茎、葉からシロップを抽出し、糖尿病への効果が期待できる機能性食品の開発を目指す)の実験プラントを視察、紙谷主任から抽出工程等の概要についてご説明いただきました。


同財団の食品グループによるものづくり産業支援の成果がロビーのショウケースに展示されていました。牛肉麹発酵食品(牛肉のカラスミ)、ワインビネガー、ジャム、無塩漬コンビーフや、

桜の花入りヨーグルト、水牛モッツレラチーズ、各種農産物の真空乾物品等々、意欲的な食品開発が行われていました。

財団では長いもソーラープランターなどの農業機器開発、バターカッターなど機器開発も行っているそうです。単なる最終商品の開発だけでなく、人づくり、ネットワークづくりなどの仕組みによって、産品、産業機器、最終商品、ブランド開発などのエコシステムの構築推進の役割果たそうとされています。通常お休みの土曜日の訪問にも関わらず丁寧にご対応いただきありがとうございました。


次に一行は帯広の東、十勝川沿いにある池田町に向いました。河川敷では一年経過したいまでも所々で堤防工事が行われていました。台風恐るべし!

バスの車窓からブドウ畑が見えてきました。

池田町が経営するブドウ・ブドウ酒研究所(詳細についてここをクリック)を訪問しまた。建物の景観がヨーロッパ中世の古城に似ていることから「ワイン城」とも呼ばれています。


敷地内のブドウ園、ここはヨーロッパの田舎の風景です。

同所の斉藤良市製造課長のご案内で、ワイン生産の歴史と現状のご紹介、

そしてブドウ酒製造の工程、


ブドウ酒を蒸留してのブランデー作りの工程について丁寧にご説明頂きました。

ワインは酸味が強い独特のテイストで人によって好き嫌いがあるかもしれません。

ブドウ生産に必ずしも適していないと思われる寒冷地でのブドウ酒作りの取り組みはこれからも続そうです。斉藤良市製造課長、研究所の皆様、ご対応ありがとうございます。皆様のご健勝をお祈りします。


帯広市内に戻ってくると駅前周辺にかなりの人だかりが・・・・

そうです、今回の視察研修旅行の主要な目的の1つが毎年9月の3日間にわたり帯広駅周辺で開催される食のイベント「とかちマルシェ」(詳細についてここをクリック)の見学です。

十勝産の農畜魚介品とその加工品の販売や、ホテルシェフや地元人気店によるグルメがビッシリ勢揃い、


例えば採れたての海の幸や

北海道「特産?」の熊肉の缶詰、

十勝平野は最近麦作りが盛んになっているようで、麦焼酎も結構つくられるようになりました。


藤製作所の藤澤社長も今流行の「ジビエ」をちょっとだけ体験すべくエゾシカのジャーキーを購入、

吉田先生は地元の農業高校の学生さん達がつくっているトマトジュースを購入

神戸産学官交流会の仲西律子座長は帯広市黙認のローカルヒーロー「ジバサンダー」(詳細についてここをクリック)としばし交流。こんなキャラクターまで作って地元の産業を盛り上げようとしている十勝平野の皆さんの心意気に大いに感動しました。


2日目の夕食は北海道の海の幸を賞味させて頂きました。花咲蟹がメインではなく前菜的にお膳に登場しているのがいかにも北海道らしい!

とれとれのサンマの塩焼きにトウモロコシ、これも北海道らしい! 手前の北海道産の樽酒と絶妙のマッチングでした。

翌日、「とかちマルシェ」を再度見学後、一行は再び日勝峠を貫けての帰途につきました。長いトンネルに入る前の車窓から見えた十勝平野のたおやかなひろがりと秋の空です。十勝の皆様ありがとうございます。またお邪魔します!お元気で!