>写真館
塾長科研費タイ出張編
(2017年度)



東大の関崎研の科研費基盤A(詳細についてここをクリック)の分担研究者として塾長が第5回遠征に参加しました。今回の遠征先はタイです。タイの首都バンコクに所在するカセサート大学(Kasetsart University)の獣医学部の全面的な協力のもと行われました。タイにおける最初の農業大学でその開設された人文、工学系学部学生を含めるとその6万人近いマンモス大学です。写真は宿泊しているホテルの部屋からの写真です。真正面にある建物がその獣医学部と動物病院の建物です。巨大です。

その建物の裏側に11階建てのピンク色の建物があります。一目見たとき化粧品会社の建物かと思いましたが、これが獣医学部の研究および実習の為に最近新たに建設された校舎です。

今回はその建物内の実験室や機材を拝借させて頂くことになりました。ピンク色は獣医学部を象徴する学部色だそうです。

ベトナム遠征(写真館40に掲載)と同様に今回も現地で飼育されている豚の唾液検体の採取の作業です。今回は別日で2つの養豚場で検体採取を行いました。日本から苦労して運び入れた資材や現地調達の物品(例えば長靴)を大学の公用車のミニバンに載せて作業の開始です。

バンコク市内の道路はどこも渋滞だらけでなかなか町をでられません。バンコクから70キロ西にある農村地帯に行くのに片道2時間もかかりました。

ようやく養豚場に到着しました。

まずは養豚場のオーナーと「主治医」の獣医さんにご挨拶、どのような作業をするのか説明、またどのような飼育状況なのか情報収集しました。通訳は関崎先生の教室を3年ほど前に博士卒業されたカセサート大学獣医学部の教員であるヌイ先生です。

遠征隊は防護服に身をつつみ豚舎に向かいます。

ベトナムの養豚場にくらべ訪問したタイの養豚場はとてもクリーンな感じ、臭いもかなり抑えられていました。「乳酸菌を配合した飼料を食べさせている・・・」とのことでした。

養豚場で従業員の方の協力を頂きながら検体採集作業が開始されました。写真ではわかりにくいですが、このぐらいの大きさの豚はもう大人2人がかりでないととても保定できません。とにかく暴れる、悲鳴をあげる、ちょっとした戦場の様相です。特性の綿棒をなんとか豚の口の中に入れ、しばらく時間をかけてクリグリと、そうして綿棒の綿に豚の唾液をしみ込ませ唾液検体を採取します。

防護服にすっかり身を包まれているので認知いただけないとおもいますが、今回の遠征には科研分担研究者のお一人である京都大学大学院医学研究科微生物感染症学分野の中川一路教授に「助っ人」として参加して頂きました。大柄な先生なのですが、やはり豚の保定に悪戦苦闘されていました。

塾長は中川先生のような「立ち技」を早々にあきらめ、足腰に負担が少ない「寝技」にて保定作業を行いました。でもやはり翌日は両腕、両足が筋肉痛となりました。

ヌイ先生はじめそのスタッフ、学生さんにもかいがいしく色々な作業を手伝って頂きました。ありがとうございます!

開始から2時間、ようやく検体採取作業が終了。作業からの開放感に皆素敵な笑顔です。

<写真を拡大>

豚と格闘後の中川先生と塾長です。作業中に破れた防護服をガムテープで応急補修、外からは豚の糞、内からは自ら汗まみれです。ご苦労さまでした!


得られた検体を持って再び大学のラボへ。ここからまた根気のいる作業が始まります。

その作業とは豚の唾液に混入している口腔内細菌のDNAを抽出、収集する作業です。

悪戦苦闘の末にやっとのこと採取した唾液はほんの僅かで、綿棒からできるだけたくさん回収しなければなりません。手間と時間のかかる作業が続きます。


この間にも関崎「遠征隊長」のもとには大事な用件のメールが送られてくるので、その対応、また帰国後直ぐにある講義の準備等々があります。ヌイ先生の粋なはからいでエアコン完備で快適な彼女のオフィスで行うことができました。

今回の遠征隊は「最新兵器」を日本から現地に持ち込みました。上述の口腔内細菌からのDNAの抽出にはまず細菌の細胞壁を破砕することが必要不可欠です。これを破砕してはじめて中身の細胞質に浮遊するDNAを得る事ができるのです。「最新兵器」とはこの破砕作業をする震盪機ですが、何が最新かというと3月のベトナム遠征時には1回の震盪に1本しか処理できなかったのが今回一気に12本処理できるのです。即ちこの菌体破砕作業時間が少なくとも10分の1に短縮されたことです。これは凄いことです!

中川先生を始め関崎研の2名の博士課程学生諸君、小方君(写真館40で紹介)と金君の奮闘のおかげで採取した唾液検体総てからDNA抽出完了。これを日本に持ち帰り次世代シークエンサーやリアルタイムPCRにて豚の口腔内の細菌叢の構成を調べます。


異国での時には過酷、単調な作業の続く日々。楽しみはやはり食べる事でした。ということで色々タイ料理を賞味させていただきました。そのほんの一部の写真を以下に掲載します。

タイ料理の定番、トムヤムクンです。液面に浮いている黒く細長いのが唐辛子です。とにかく「辛旨い」がタイ料理の骨頂です。

宿泊していたホテルの朝食の海鮮粥です。魚介の旨味と塩加減が最高でした。


これも定番のレッドカレー。辛いなかにもココナッツミルクが広がり、「お口の中がちょうどタイランド」です。

そしてこれも定番のグリーンカレー。液面に浮いている緑色の破片が青唐辛子です。小粒ですが上記のトムヤムクンに入っていた赤唐辛子よりも10倍辛く感じました。これを食べると「お口の中はちょうど噴火口」です。全体的に価格的には日本で食べる同等のものの3分の1ぐらいです。例えばこの写真セットはショッピングモールのフードコートで食しましたが、60バーツ(約200円)です。

そしてテナガエビの丸焼き。淡水のエビで生きている時は真っ青な色ですが、加熱するとこのように赤くなります。これと地ビールのChangビールで食します。もう最高っす!


遠征の中日当たりの夕刻、カセサート大学のスタッフや学生さんにつれられて大学キャンパス内で開催されているお祭りのようなイベントに連れて行ってもらいました。そうですこれがあの有名なタイの灯籠流し「ロイクラトン」です。葉や鮮やかな花で彩られた手作りの灯篭を近くの川や池に流す伝統行事です。

カセサート大学の学生さんだけでなく近隣住民も総出のごったがえしでしたが、周りのイルミネーション効果も加えられとても幻想的でした。

<写真を拡大>

帰国前日にカセサート大学(Kasetsart University)の獣医学部の学部長のお招きでヌイさん含め学部スタッフと会食させて頂きました。タイの皆様本当に「 Kap khun kap!」(ありがとう!)