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塾長・石川先生奄美・鹿児島出張編
(2018年度)



2月下旬に塾長が鹿児島県に出張しました。最初の目的地は奄美大島です。昨年のNHKの大河ドラマの「西郷どん」で西郷隆盛が幽閉された流刑の島です。伊丹空港から飛行機で行けば1時間ちょっとで到着しますが、鹿児島市からのフェリーでは12時間ほどかかるそうです。

今回の出張には神戸大の科学技術イノベーション研究科の石川周准教授が同行しました。塾長が欧州出張ではいつもお世話になっている吉田健一教授の教室に所属され、枯草菌や植物と「共生」する乳酸菌、Leuconostocの専門家の先生です。
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空港からレンタカーを借りて石川先生と島内をほぼ隅々「巡回」しました。

奄美大島は沖縄の6割ぐらい、淡路島よりはちょっと大きいぐらいの島ですが、その地形は険しく海岸線はほぼリアス式でたいへん入り組んでいます。

そのため島内の村々間の往来の利便性向上のため沢山のトンネルが作られていました。人口4万人ほどの島なのですが、どれも立派な長い長いトンネルでした。相当のお金がこの建設につぎ込まれている感じです。離島の民に対する国の「思いやり」なのでしょうか?ただただ感心するばかりです。

島の内部も険し山道の連続です。2月は雨続きの天候だったので山の斜面ががけ崩れを起こして片側通行の場所が多々ありました。

そんな海岸線、山間部を車でウネウネしているうちにお昼時となり、路肩の食堂にて奄美大島のソウルフード「鶏飯(けいはん)」を賞味いたしました。

加えて島のソウルドリンク、そして今回の出張の「主人公」である「みき」も賞味いたしました。

「みき」はご飯から作られ発酵食品です。その名前の響きから「お酒」を連想しますが、まったくアルコールを含んでいません。ちょっと甘酸っぱくなった冷めた「お粥」的な味覚です。島内で販売されている「みき」に含まれている乳酸菌分離のためのサンプリングとその製造方法についての情報収集が今回の出張の目的です。

島内のスーパーや道の駅を訪問すると、

食品コーナーに必ずヨーグルトと一緒に「みき」が販売されていました。

銘柄も島内の地区で異っているようです。昔は多くのご家庭で自家製の「みき」が作られていたようですが、現在はこのように店頭販売されているものを飲まれているとのことでした。


「みき」の島内販売シェアの大手である「花田みき店」を訪問しました。写真の左から代表者の花田謙一郎さん、その奥様、そしてご長男で4代目となられる花田大樹さんにお忙しい中にもかかわらず歓待して頂き、
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「みき」の製造プロセスの見学までもさせて頂きました。

朝一で炊いた白米に生のサツマイモのみじん切りにしたものを加えて室温でしばらく放置、時々しゃもじで撹拌しているうちに発酵が進みトロみが出てきて液状になるようです。最後に「仕上げる」として砂糖を加えて出来上がりだそうです。出来立てホヤホヤのものを賞味いたしましたがただただ甘いお粥でした。それが冷蔵で保存している内にさらに発酵が進み酸っさが増してくるようです。製造後7日目の「みき」も試飲させて頂きましたが、これがベストなテイストでした。仕事柄「みき」を飲み続けられている花田さん一家はこれまでにインフルエンザに罹ったことが一度も無いとのことでした。「発酵の過程で増殖してくるおそらく乳酸菌がプロバイオティクス的に働いていいる」と塾長も石川先生も確信した次第です。

翌日は島の南部地域に足を延ばしてそこで「みき」を製造している「竹山食品」を訪問、


店主の竹山さんにも製造方法をご教示いただきました。ここでは炊いたご飯に砂糖を初めから混ぜてそれから生のサツマイモの砕いたものを添加しているようでした、

やはりその後にしゃもじでかき回す作業をされていて、この撹拌の加減が「みき」の出来に影響するようです。ということで「みき」の発酵に必要な乳酸菌はサツマイモにもともと定着しているもので、それも高温でも生残でき、低温でも発酵活性をもつもの、石川先生曰く「何となくLeuconostoc的な菌」のようです。

島内の「みき」探しの道中、ちょっと休憩がてら環境省が運営する「奄美野生生物保護センター」に立寄ました。


その中の展示で奄美大島が国立公園となったのは僅かに1年前であることをしりました。「アマミノクロウサギ」を筆頭に生物多様性が豊富な生物圏を持つ島なのです。もっと前から国立公園とすべきだったのでは?と感じた次第です。

出張1日目の夜は昼間訪問した花田さんが一押しの郷土料理 「春」で夕食をすることになりました。ちょっと暗い路地にひっそりとそのお店はありました。地元民御用達感100%。花田さんのご仲介で事前にご予約をしていただいた御陰で我々「一見さん」でもすんなりと暖簾をくぐることができました。

奄美大島のお酒はなんといっても黒糖焼酎です。カウンター席のお隣のお客さんが「一番」とお勧めしてくれた「長雲一番橋」をさっそく賞味いたしました。香りとほんのり甘い後味が奄美の肴と絶妙のハーモニーでした。

ふと店に飾られている額縁に目をやるとサイン入りの色紙。あの井上陽水さんも来られたようです。

春の女将さん、そしてカウンター席のお隣のお客さんに「みき」のお話を聞かせていただきました。昔は各ご家庭で作られていて、特に夏場に「夏バテ」して食欲が無くなったときの対策として飲まれていたようです。それにしても手前のお客さんがあの「博多華丸大吉」の華丸さんに、その奥のお客さんがB&Bの島田洋七さんにお顔や言動がそっくりなのにびっくりでした。奄美大島はなかなかのキャラ宝庫です。皆様楽しく耳寄りな奄美のお話ありがとうございました。

出張3日目は奄美大島を離れ空路にて鹿児島市に向かいました。鹿児島空港着陸まえに機窓から桜島を望むことができました。

目的地は鹿児島大学農学部の、

焼酎・発酵学教育研究センターです。


センター内の施設と研究活動を「焼酎製造学部門」の高峯和則教授(写真中央)と二神泰基准教授(写真左)のお二人の丁寧なご案内を頂いて見学させていただきました。

焼酎の原料として使われるサツマイモは概ねこのように表面が白っぽい「黄金千貫」と呼ばれる種類です。普通のサツマイモよりもデンプン含量が高く、細長さを省けばジャガイモの様相です。

蒸したサツマイモを砕いてこれを麹菌と混ぜて発酵、その後酵母も加えて「もろみ」となったものからアルコール成分を抽出する蒸留工程に入ります。高峯先生からその工程で使うラボラトリーサイズの蒸留器の仕組みをご説明いただきました。

色々な醸造条件で出来上がった焼酎はそのアルコール度数、香りや味が様々なので、品質全体のレベルをチェックする識別テストが必要不可欠です。石川先生も臭うだけでどれがアルコール度数が高いかのテストに挑戦して、みごと正解されました。


センターを楽しく見学させて頂いた「お返し」として石川先生が現在取り組まれている植物と共生する乳酸菌の生態と性状についてプレゼンをいたしました。プレゼンの後センターの学生さんたちと真摯な質疑応答が行われましたが、一番の関心事は「みき」や焼酎の原料であるサツマイモと乳酸菌の「共生」の可能性でした。

その後、このサツマイモと乳酸菌の「共生」の有り様を検証する共同研究の可能性について二神先生らと打ち合わせを行いました。

その晩は大学近くの居酒屋さんで鹿児島料理と芋焼酎を賞味しながら懇親会。写真はかごしま地鶏の刺身の盛り合わせです。


高峯先生、二神先生に加えて食品化学研究室の坂尾こずえ先生、宮田健先生、生分子機能学研究室の加冶屋勝子先生らに友情参加頂き楽しい宴となりました。皆様、ありがとうございました。これからますます交流いたしましょう!
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宴もたけなわの中、高峯先生が写真のごとく名刺大のカードを見せてくれました。武庫川女子大で開発されたアルコール体質検査で入手できるカードだそうです。これによって人によってお酒に対する体質は様々で、本人がその体質をきちんと自覚することによってお酒との「つき合い方」を学べる、とのことです。お試しあれ!