講義・セミナー

重点研究チーム「多細胞生物の構築原理と保障機構」学術講演会のお知らせ

以下のセミナーを開催いたします。

日 時 : 2014年 7月 9日(木) 午後 5時~ 6時30分
場 所 : 神戸大学・理学研究科C棟 C509号室
講 師 : 木村 宏 博士 (大阪大学・生命機能研究科/東京工業大学・生命理工学研究科)
演 題 : ヒストン翻訳後修飾と転写活性化の生細胞動態

講演要旨

 ヒストンの翻訳後修飾は、遺伝子発現制御やゲノム維持に重要な役割を果たしており、発生や分化、細胞周期、外部刺激などに応じてダイナミックに変化する1)。また、ヒストン修飾やDNAメチル化を介したエピゲノム制御の破綻と細胞のがん化との関係も最近注目されており、ヒストン修飾酵素・脱修飾酵素の阻害剤開発などが積極的に進められている。
 我々は、各種ヒストン修飾に特異的なモノクローナル抗体を開発し、クロマチン免疫沈降(ChIP)や大規模シーケンス解析と組み合わせたChIP-seq等を用いてエピゲノム解析を行っている他、ヒストン修飾の単一細胞解析も進めている。特に、蛍光標識された特異的抗体(Fab断片)を用いて、蛋白質翻訳後修飾を生細胞可視化する系(FabLEM; Fab-based live endogenous modification labeling)を開発し、ヒストン修飾の細胞周期やマウス初期胚発生におけるダイナミクスを明らかにしてきた2-4)。最近、この系をRNAポリメラーゼIIの開始型と伸長型に見られるリン酸化に適用し、グルココルチコイドによる遺伝子の活性化に伴うヒストンとRNAポリメラーゼIIの動態の解析を行った。その結果、ヒストンH3のK27アセチル化が転写活性化における二つの異なるステップ(転写因子の結合、及び、転写の開始から伸長への移行)を促進することが明らかになった。また、この結果は、ChIP-seqによるエピゲノム解析結果からも支持された。このヒストンアセチル化による二段階の制御は、核内受容体による転写活性化の頑強性に働くと考えられる。
 一方、ヒストン修飾を生きた個体レベルで観察するための遺伝子コード系の開発にも成功しており5)、この系を用いた生体内ヒストン修飾イメージングについても紹介する。

References
1) Kimura H. Histone modification for human epigenome analysis. J Hum Genet 58, 439-445 (2013).
2) Kimura H, Hayashi-Takanaka Y, and Yamagata K. Visualization of DNA methylation and histone modifications in living cells. Curr Opin Cell Biol 22, 412-418 (2010).
3) Hayashi-Takanaka Y et al. Visualizing histone modifications in living cells: spatiotemporal dynamics of H3 phosphorylation during interphase. J Cell Biol 187, 781-790 (2009).
4) Hayashi-Takanaka, Y. et al. Tracking epigenetic histone modifications in single cells using Fab-based live endogenous modification labeling. Nucleic Acids Res 39, 6475-6488 (2011).
5) Sato, Y et al. Genetically encoded system to track histone modification in vivo. Sci Rep 3, 2436 (2013).

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