講義・セミナー

学術講演会のお知らせ

以下のセミナーを開催いたします。

日 時 : 2017年 8月31日(木) 午後 3時10分〜
場 所 : 神戸大学・理学研究科C棟509号室
講 師 : 浦 聖恵 博士(千葉大学大学院理学研究院)
演 題 : ヒストンの多種多様性を介したゲノム機能制御

講演要旨

 近年、ヒストンの多種多様性が、DNA塩基配列を越えた遺伝子機能制御“エピジェネティクス制御”の重要な分子基盤になるとの考えが定着してきたが、ヒストンの多種多様性の分子機能は未だに謎に包まれている。この問いに答えるために、私達はリンカーヒストンH1と、コアヒストンH3の36番目リジン残基 (H3K36) のメチル化酵素 Wolf-Hirschhorn syndrome candidate 1 (Whsc1, 別名NSD2, MMSET) に焦点を当てて、再構成クロマチンやES細胞・マウス個体レベルでクロマチンの構造と機能解析を進めている。
 H3K36のメチル化は、種を越えて転写活性なゲノム領域に集積し、また、一方でこの修飾を特異的に認識して結合する因子としてDNA損傷修復に関わるものが複数、見つかっている。哺乳類ではこれまでに少なくとも6種類のH3K36メチル化酵素が報告されている。その一つ、NSD2がヒト4番染色体片アレル欠損によって発症する発育不良、形態異常、精神遅滞そして免疫欠損を特徴とする4p症候群の主要な原因遺伝子であることを、私達は遺伝子欠損マウスを作製してこれまでに突き止めた。Nsd2欠損マウス胎仔から作成したMEF細胞は早期にp53に依存した細胞老化を示し、DNA損傷応答に関与することが示唆された。しかし、放射線などランダムに外から誘導したDNA二本鎖切断損傷への集積は認められない。一体 ヒストンH3K36メチル化酵素Nsd2は何をしているのか?
 DNA切断・組み換えを伴って分化が進行する、造血幹細胞からのB細胞分化過程に焦点を絞ってNsd2の機能解析を進めたところ、転写とDNA損傷修復をリンクさせた新しいゲノム維持機構が見えて来た。

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