講義・セミナー
学術講演会のお知らせ
以下のセミナーを開催いたします。
日 時 : | 2018年06月01日(金) 午後 3時30分〜 |
場 所 : | 神戸大学・理学研究科C棟 C509号室 |
講 師 : | 中山 潤一 博士(基礎生物学研究所) |
演 題 : | 高次クロマチン構造の形成と維持の分子機構 |
講演要旨
真核細胞の染色体には、ヘテロクロマチンと呼ばれる高度に凝縮した構造が存在している。ヘテロクロマチンは、セントロメアやテロメアなどの染色体機能ドメインの構築に必須な役割を果たしているだけでなく、エピジェネティックな遺伝子発現制御にも重要な役割を果たしている。これまでの研究によって、ヘテロクロマチンがどのように形成されるのか、その分子構造が明らかにされてきた。ヘテロクロマチンが形成される領域は、ヒストンH3の特徴的なメチル化修飾によってマークされており、このメチル化マークを認識してHP1と呼ばれるヘテロクロマチンタンパク質がクロマチンに結合することで、ヘテロクロマチンに特徴的な高次クロマチン構造が形成される1)。また、凝縮したヘテロクロマチンの外観から、この領域からの転写は抑制されていると長い間考えられてきたが、実際にはヘテロクロマチン領域にも弱い転写活性が存在し、しかもその転写されたRNAを分解、あるいは認識する機構が、抑制的なクロマチン構造を形成するのに必要なことが明らかになってきた2, 3)。本講演では、染色体機能に必須なヘテロクロマチンとよばれる高次クロマチン構造が、どのように形成されまた維持されているのか、その分子機構に関して、最新の知見を含めて紹介したい。
参考文献
1) Machida S, et al., Mol Cell, 385-397 (2018)
2) Shirai A, et al., eLife, e31641 (2017)
3) Ishida M, et al. Mol Cell, 228-241 (2012)