講義・セミナー

特別講義のお知らせ(理学研究科)

特別講義「現代の生物学」

日 時 : 2018年06月01日(金) 午後 1時20分〜
場 所 : 神戸大学・理学研究科C棟 C509号室
講 師 : 中山 潤一 博士(基礎生物学研究所)
演 題 : クロマチン構造と生命機能

授業のテーマ

 生物の遺伝情報はDNAにコードされている。DNAによって規定される遺伝子の情報はRNAに転写され、さらに翻訳によって機能本体であるタンパク質へと変換されて生命活動を担っている。このことから、DNA配列こそが生命機能を決定している要素であり、DNA配列の違いが細胞、組織、そして個体の多様性を生み出していると長い間考えられてきた。しかし、実際の生物個体では、同じゲノムDNAを持つ細胞が多種多様な細胞へと分化することが知られている。このようなDNAの一次配列によらない遺伝現象は「エピジェネティクス」と呼ばれ、個体の発生だけでなくがん化や老化とも関連するとして注目されている。近年、DNAを取り巻く環境である「クロマチン」の構造変化が、エピジェネティクス現象に密接に関わることが明らかになってきた。真核生物のゲノムDNAは、核内でクロマチンとして高度に折りたたまれて存在している。このクロマチンの基本単位が「ヌクレオソーム」であり、4種類のコアヒストンH2A、H2B、H3、H4とDNAから構成されている。さまざまなヒストンの亜種(バリアント)やヒストンの化学修飾、DNAのメチル化などを選択的に利用することで、クロマチン構造や動態に多様性を付与していることが分かってきた。このようなクロマチンの構造的な多様性が、エピジェネティクスの分子基盤であることが明らかになりつつある。今回、クロマチンの基本構造とエピジェネティクス現象との関わりについて紹介し、真核生物でのゲノム機能制御のメカニズムについて議論したい。

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