Title: 地球シミュレータデータの可視化
Authors: 陰山 聡, 大野 暢亮
Abstract: NKHラジオの「気象通報」という番組を御存じだろうか? 各地の風向、風力、気圧などの数字をアナウンサーが次々に読み上げていく番組である。 これをただ耳で聞いているだけでは天気は分からない。 しかしペンと地図を手にし、番組を聞きながら読み上げられる各地点に気圧などを書き込み、 最後に同じ気圧になりそうな点を曲線(等高線)でつなげていくと、 低気圧や高気圧が図---天気図---としてあらわれる。 知識のある人が天気図を見れば、 明日の天気がだいたいわかるらしい(私にはできないが)。 この天気図に入っている情報は、 もともとラジオのアナウンサーが読み上げる数値データに全て含まれていたはずである。 だが、そのような数値データの羅列をいくら注意深く聞いてもあるいはそれを数表にして紙の上に書き、 それをじっと睨んでみても明日の天気を知るのは難しい。 紙の上に天気図という図にしてみてはじめてデータに隠されていた情報を引き出すことができたのである。 このようにたくさんの数値データを何かの方法で図にする操作が可視化である。 天気図はデータ可視化の一番身近な例であろう。 天気図の場合は観測されたデータであったが、 同じことは計算機シミュレーションの出力データについても言える。 計算機でシミュレーションを行い、 最後に出てくるもの(出力)はやはり数字の羅列である。 気象通報の場合には、観測データが得られる場所(アナウンサーが読み上げる地名)の数は、日本各地とその近所で、せいぜい50から60地点程度である。 それにその数字といっても「風力3」とか、「1029ヘクトパスカル」などという 一桁や、せいぜい四桁程度の整数なので、 それほど大変な量の数値データではない。 ところが、計算機シミュレーション、 特に地球シミュレータを使って行うような大規模な計算機シミュレーションになると、 データがとれる位置---つまり計算格子点---の数は、 後述するように$10^9$(10億)点に上ることも珍しくない。 また、その数字も整数ではなく、 ふつうは一つの数字あたり8バイトの情報量で表現される実数(倍精度実数)である。 (これは10進の小数で書くと16桁近くある。) このような膨大な量の数値データになると、 紙とペンを使って等高線を描くことなど不可能である。 そもそも現在のシミュレーションは天気図のような2次元的なデータを扱うことはまれであり、 現実の(3次元の)複雑な現象を3次元のまま計算したものが多い。 今日のシミュレーション研究者は、 単に膨大なサイズのデータを処理するというだけでなく、 その数値データの海の中に潜む複雑な3次元構造を可視化を通して抽出し、 理解しなければならない。・・・