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メンバー紹介

片岡 徹 Kataoka Tohru

所属・職名医学研究科医科学専攻
生化学・分子生物学講座分子生物学分野・教授
E-mail
TEL/FAX078-382-5380 / 078-382-5399
研究室ホームページhttp://www.med.kobe-u.ac.jp/molbiol/top.htm

研究テーマとその内容

  1. Ras/Rap1標的蛋白質ホスホリパーゼCε (PLCε) の活性制御機構と生体内機能の解析
    低分子量G蛋白質Ras/Rap1によって活性制御を受けるPLCεを発見した。PLCε遺伝子ノックアウトマウスを作製し、このマウスがras癌遺伝子の活性化による二段階皮膚化学発癌に強い抵抗性を示すことから、PLCεがras癌遺伝子依存性の発癌に必要であることを発見し、抗癌剤開発の新しい分子標的となることを提唱した。さらに、PLCεノックアウトマウスが癌抑制遺伝子APCの変異による腸癌発生にも抵抗性を示すことを発見した。また、PLCεノックアウトマウスが、ホルボールエステルTPA誘発皮膚炎モデル、紫外線照射皮膚炎モデル、潰瘍性大腸炎モデル、および、接触性皮膚炎モデルにおいて誘発される炎症反応の著明な抑制を示すこと、並びに、PLCεを皮膚角質細胞特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスが皮膚の慢性炎症を発生することから、PLCεが炎症反応に普遍的に関与することを発見し、抗炎症薬開発の新しい分子標的となる可能性を提唱した。これらの研究を通じて、発癌プロモーション(促進)やプログレッション(悪性進展)と慢性炎症反応との関係を分子レベルで解明することを目的としている。
  2. Rasを分子標的とした抗癌剤の創薬研究
    31P-NMR解析により、GTP結合型H-Rasには、標的蛋白質との結合能力を持つ”ON”状態の構造 (state 2) と持たない”OFF”状態の構造 (state 1) が相互変換可能な状態で混在する事が分かっていたが、State 1の高次構造は未解明であった。我々は、RasのホモログM-Rasの高次構造のX線結晶解析とNMRによる解析から、state 1の高次構造の決定に世界で初めて成功した。State 1では、Switch I領域のThr-35残基側鎖とGTPのγ-リン酸基との結合が解離し、Switch Iが外側に偏位して大きなポケット構造が生じていた。このポケットに陥入してstate 1を安定化する物質が抗癌剤となる可能性を提唱した。
    さらに、H-Ras型のアミノ酸置換変異を持つM-Ras変異体のstate 1の高次構造を、X線結晶解析により1.35オングストロームの高分解能で決定した。このM-Ras変異体state 1構造の有するポケットに嵌入しstate 1を安定化する低分子化合物のインシリコ・スクリーニングを日本電気(NEC)との共同研究で行っている。高次構造既知の229万種類の低分子化合物についてコンピュータ計算(MMPBSA法)により最適結合モードと結合エネルギーの予測を行い、Rasのstate 1のポケットに対する予測結合親和力が上位の化合物を1300個選抜し、この中から試験管内測定によりH-RasのRaf結合能力を阻害する化合物の同定に成功している。さらに、PLCεの選択的阻害剤の開発も、その酵素触媒部位の高次構造情報に基づくインシリコ・スクリーニングにより行う予定である。
    また、G蛋白質の活性サイクルにおけるstate 1の機能について解析している。
  3. M-RasのエフェクターであるRap1活性調節因子RA-GEF-1とRA-GEF-2の生体内機能の解析
    我々が発見したRap1特異的グアニンヌクレオチド交換促進因子RA-GEF-1の遺伝子ノックアウトマウスを作製したところ、卵黄嚢における脈管形成 (vasculogenesis) 不全による胎生9.5日での胎児致死性の表現型を示した。Rap1経路の変異マウスとして、初めて脈管形成の異常が観察された。コンディショナル・ノックアウトマウスを作成して、脈管形成における分子作用機構を解析している。
    Rap1特異的グアニンヌクレオチド交換促進因子RA-GEF-2が、TNF-α刺激に伴って活性化されたM-Rasと結合して形質膜へ移送されてRap1を活性化し、インテグリンLFA-1依存性の脾臓Bリンパ球の細胞接着を誘導することを、RA-GEF-2遺伝子ノックアウトマウスを用いて証明した。RA-GEF-2遺伝子ノックアウトマウスは、脾臓肥大を示す以外は正常に発育する。TNF-α受容体刺激がM-Rasを活性化する分子機構を解析している。

GCOE関連代表論文

  1. Yoshikawa, Y., Satoh, T., Tamura, T., Wei, P., Bilasy, S. E., Edamatsu, H., Aiba, A., Katagiri, K., Kinashi, T., Nakao, K., and Kataoka, T.
    The M-Ras-RA-GEF-2-Rap1 pathway mediates tumor necrosis factor-α-dependent regulation of integrin activation in splenocytes.
    Mol. Biol. Cell (8):2949-2959, 2007.
  2. Ieguchi, K., Ueda, S., Kataoka, T., and Satoh, T.
    Role of the guanine nucleotide exchange factor Ost in negative regulation of receptor endocytosis by the small GTPase Rac1.
    J. Biol. Chem.282 (32):23296-23305, 2007.
  3. Ikuta, S., Edamatsu, H., Li, M., Hu, L., and Kataoka, T.
    Crucial role of phospholipase Cε in skin inflammation induced by tumor-promoting phorbor ester.
    Cancer Res.68 (1):64-72, 2008.
  4. Bilasy, S. E., Satoh, T., Ueda, S., Wei, P., Kanemura, H., Aiba, A., Terashima, T., and Kataoka, T.
    Dorsal telencephalon-specific RA-GEF-1 knockout mice develop heterotropic cortical mass and commissural fiber defect.
    Eur. J. Neurosci.29 (10): 1994-2008, 2009.
  5. Li, M., Edamatsu, H., Kitazawa, R., Kitazawa, R., and Kataoka, T.
    Phospholipase Cε promotes intestinal tumorigenesis of ApcMin/+ mice through augmentation of inflammation and angiogenesis.
    Carcinogenesis30 (8): 1424-1432, 2009.