三村個人

 光合成により太陽エネルギーを有機物に固定できる植物は、地球上で最も成功した生命体としてその繁栄を謳歌しています。植物が存在しなければ、私たち人類を含む従属栄養型の生物はこの地球に生存できません。
 植物は、光合成によって有機化合物を合成する能力を手に入れたため、動物のように必要なエネルギー源としての食糧を求めて動き回る必要がなくなりました。この動く必要が無い(動かない)ということは、周りの環境の影響から逃れられないということも意味しています。こうして、植物は動くことを止めた代わりに、周りの状況に自分を合わせる力を進化させてきました。この力を、今私達は植物の環境感覚と環境適応能と呼んでいます。植物は、自分が根付いた場所の環境に合わせて体の形や機能を変えながら、光合成に加えて、必要な栄養を土壌から取り込んで生きています。
 植物も動物も共通の祖先から地球上に生まれたのであり、生命活動の維持に利用している遺伝子やタンパク質には共通のものもたくさんあります。つまり、植物は、私たち人類と同じような道具を用いながら、異なる戦略をとることで地球上に共存している仲間と考えることができます。
 私の研究室では、この植物という生き方を知るために、土壌の栄養を初めとして、植物が必要とする様々な低分子量物質の状態を、植物がどのように認知し、どのように取り込み、組織や細胞内に分配するのか、それぞれの物質はどのような作用をもっているのかを、主に細胞・組織レベルの生理現象を中心に研究しています。
 近年問題になっている食糧不足や環境破壊の多くは、生育に有害な物質やイオンが、植物体内に入り込んでその生育を阻害することによります。今人類が直面している食糧問題も環境問題も、植物とイオンの関係に帰着させることができます。植物の機能を知ることは、人間が近い将来も地球上で繁栄していくために必須の過程だといえます。ただ、植物と人間の関係は、このような即物的な面だけが重要なのではありません。私たち人類は、共通の祖先をもちながら異なる生き方を選択した植物を、同じ地球上で共存する対等の生命体として理解すべきでしょう。私達は、「植物として生きるとはどういうことか」を明らかにしたいと考えて研究を進めています。


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