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  Nonlinear Sci. Lab.  

  KOBE University  

■一部論文の概要

[1] Gunji, Y. (1990). Biosystems 23:317-334.

細胞間相互作用の反応速度に比して、細胞内相互作用のそれが無視できるほど速くないにも関わらず、あらゆるパターン形成のモデルは、無視できることを仮定する。ひとたびこの仮定を棄却するなら、細胞内・間反応を接続する論理は、自己矛盾に陥る。ここではこの矛盾を、局所的規則を同時的に空間全体に適用することの不可能性として構成し、ランダムな非同時的適用の集積として離散的時間発展を定義した。これによって、細胞間相互作用に細胞内反応が寄与する不定さを評価し、スキームをセル・オートマトンに適用し、抽象的にはセル・オートマトンで評価できる貝殻紋様のパターン形成において不定さの効果を評価した。その結果、単独の拡散反応系やニューラルネットでは得られないパターンが普遍的に説明された。

[2] Gunji, Y. & Konno, N. (1991). Appl.Math.Comput.43:271-298.

第一に、[1]で述べた細胞内・間反応が帰結する矛盾を、有限観測速度の問題として定式化した。第二に、かかる矛盾が、時間発展の枠組では、事前の不定さと事後の確定に分節され、両者の集積として一対多型の関数が得られる様相を明らかにした。すなわち矛盾を力学系で構成するには、時間順行型規則と逆行型規則が共に不可避的に必要となる。これをセル・オートマトン上で構成し、時間の非可逆性=進化が、「可逆系を維持しようとして、規則を変化させ続け、逆に状態の不定さに起因して可逆系からずれる過程」と観測される様相を論じた。これは不断不均衡化過程と呼称された。第三に、規則空間の全体で非可逆系を発生し得ない初期規則を、時間逆行型規則の代数構造から分類した。

[3] Gunji, Y-P.. (1992). Appl.Math.Comput.47:267-288.

細胞内反応と細胞間反応とを統一的に記述しようとする際の矛盾は、一見オペランドとオペレーターとを同一視する特定の論理内(例えばλ算術のような)に埋め込み可能に思えるが、それによって問題は原理的に解消せず、無限の階層に言及する動的階層モデルを考える必要がある点を論理的に論じた。これによってプログラム不可能性の動的表現が、不断不均衡化過程であり、更にその安定性を規則の高階化に還元しようとする際、無限階層・動的階層が現前することが明かとなった。また無限の階層構造は、事前論理と事後論理との接続によって構成可能であり、その方法は、力学系の時間発展に於いて、可能性の縮退を強調することで、論理哲学のクリプキのアプローチ(権利上の必然性を構成する方法)につながる点(事実上の必然性の欠如としての権利上の必然性)が示された。

[4] Gunji, Y-P.. (1993). Appl.Math.Comput.57:19-76.

第一に、細胞が受信情報を同定し、その後に出力を決定する系に関して、一つの情報同定規則を与える時、それを公理系とする形式体系と、その意味論を構成できることを示した。更に、受信情報同定の最中に新たな入力信号が強制的に侵入する状況を考察し、一般的には(ゲーデルの不完全性定理と同じ意味で)命題の真偽値が決定できない場合が生じることを示した。逆に、命題の種類が限定されている体系を考えていることから、特定の公理系に関してはそのような場合ですら、命題の真偽値は決定でき、そのような公理系が可逆系に関係していることを示した。第二に、この枠組みをセル・オートマトンに適用し、真偽値の決定不能性に関して、遷移規則を分類した。第三に、意味値の決定不能性の問題と、ウィトゲンシュタインの意味に関する懐疑を平行して論じ、決定不能性を導く証明過程全体を圏論で解釈することで、時間順行規則と時間逆行規則がアジョイントになるように、一般的に理論が構成できることを示した。

[5] Gunji, Y-P.., Nakamura, T. & Konno, N. (1993).

N.Jb.Geol.Palaeont.Abh.190:219-236.

軟体動物の殻紋様形成に関して、細胞内反応と細胞間反応とを、各々三値論理、二値論理で定義し、両者を接続することで帰結される矛盾を、矛盾を取り除こうとして運動し続ける相互作用として構成し、貝殻紋様形成の問題において(1)で示したよりも積極的に観測の効果を内包したモデルを提示した。よく対比されるように、アリストテレスの因果律における、形相因、質量因、作用因が現在の科学パラダイムで用いられる機械論的因果律を構成し、アリストテレスの第4因子、目的因(final cause)は、この枠組みからはみ出すといわれてきた。しかし、ここで提示したモデルは、機械論的因果律が各々独立ではないことから、矛盾をはらみ、結果としてその時間発展に目的因が見いだされる様相を明らかにした。自然界の貝殻紋様にみられるパターンの断続的変化の説明は、寿命や外部環境の変化などに帰されてきたが、このモデルは、それがシステムの矛盾とそれを除去しようとする過程の結果としてもたらされることを示し、その結果臨界現象的振舞いが得られることを示した。またモデルの枠組みは、我々の以後の研究に於けるハイティング・ブール代数間の相互作用モデルに対する出発点を与えた。

[6] Gunji, Y-P.., Shinohara, S. & Konno, N. (1993).

Appl.Math.Comput.55: 219-253.

時間順行規則と逆行規則の二つを用いて、生物系の決定不能性を構成するとき、いわゆる情報に事前情報と事後情報が認められることを示した。すなわち前者は、特定のパターンへの縮退に関する情報であり、シャノン情報と同義である。後者は、縮退した情報がどの様にその後時間発展したか、に関する情報である。例えば、ある書物を読んで、その固有の意味を、万人が同じ意味で理解可能であるなら、その意味は事前情報である。他方、読むことによって、各人が異なる行動を起こし、その行動の多様性によって書物の意味を決定するなら、その意味は事後情報である。逆に、もし事前情報として決定可能であるとするなら、それが書き換えられることによって事後情報が現前する。ここでは、ごく単純な時間順行規則と逆行規則の二つを有する学習システムを定義し、そこに与えられる事前情報と、リアプノフ指数として計算できる事後情報との関係を論じた。思い違いに気付くことで、事前情報が書き換えられ、それが新たな思い違いを誘発する。つまり、情報量を減らそうとしつつ逆に増やす連鎖的過程が、学習過程には本質的であることが示された。

[7] Gunji, Y-P.. (1994).Appl.Math.Comput.61:231-267.

第一に、細胞内・細胞間反応を接続する際に、ローヴェルの定義する自己言及的特性を満足する形式が得られ、それによって不動点定理から矛盾が帰結できることを証明した。第二に、論理的に不動点近傍システムの挙動を調べるため、弱い自己言及的特性を定義し、それを満足しようとして満足し得ない遷移規則の空間全体を、自己言及システムと定義した。自己言及システムはステップ毎に規則を変化させつづけ、決して特定の規則に吸引されないように規則空間全体を動き続ける場合が存在し、また与えられた規則と、それと対を成す弱い自己言及的規則との辻妻合わせの結果として、常に、空間全体に万能な局所的規則を帰納できない特徴を合わせもつ。その結果、システムは一般にクラス4と呼ばれるセル・オートマトン規則と似た挙動を持ち、しかしクラス4と異なり、局所的遷移規則の同定に既に決定不能性を含んでいる、点が示された。この二重の決定不能性が生命の様相に関与している、と主張されている。

[8] Gunji, Y-P.. (1995). Biosystems 35:33-62.

[7]で述べた自己言及システムと計算の万能性/効率との関係を調べるため、自己言及システムのスキームが、球体計算(完全弾性衝突を論理演算に置き換える計算で、万能計算が可能)を実現するマーガラス・オートマトンに適用された。まずマーガラス・オートマトンを拡張して、マーガラス・オートマトン系を定義し、適当な変換に於いて球体計算を実現する規則が弱い自己言及的特性を満足することが証明された。これによってマーガラス系の任意の規則は、弱い自己言及的特性を有する規則との代数的距離によって、不安定性の程度を評価できる。最も不安定な規則を並列計算過程の素子として用いると、その生成パターンは殆どランダムなパターンとしてしか認められず、格子状態(系の定義に用いられる最小単位)を球体と考える限り球体計算は不可能である。しかし適当な初期条件で、適当に境界条件を変化させ続けるなら、大域的パターンを球体とみなして球体計算が可能となることが示された。論理計算においては計算の万能性と効率の間にトレードオフ原理が認められるが、不安定な計算機を論理的計算機として観測する観測の効果を考慮するなら、計算の万能性は高効率計算の定義とは別の位相で可能となることが示され、生物系の計算能力に於ける万能性と効率との関係は観測が考慮される論理的計算とは別な位相にあることが示された。

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