日付 |
発表者 |
タイトル ( 概要 : タイトルをクリック ) |
4/11(水) |
小林努
(立教大学)
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縮退高階スカラー・テンソル理論の最近の話題
宇宙の加速膨張や量子重力の研究などに動機付けられ、一般相対論を拡張する試みがおこなわれているが、このような文脈で提唱されている多くの重力理論は(少なくとも何らかの極限で)スカラー・テンソル理論により記述することができる。
運動方程式が2階になる最も一般的なスカラー・テンソル理論であるホルンデスキ理論は、高階微分に起因する不安定性(オストログラドスキー不安定性)のない最も一般的な理論だと考えられてきた。
しかし、近年、高階微分をもつにも関わらずオストログラドスキー不安定性の問題を回避できるような抜け穴の存在が指摘され、「縮退高階スカラー・テンソル理論」と呼ばれるそのような理論が具体的に構築されている。
今回のセミナーでは、縮退高階スカラー・テンソル理論研究の一連の流れをレビューしつつ、私がここ1,2年取り組んできた関連研究をいくつか紹介したい。
・縮退高階スカラー・テンソル理論のさらなる拡張と普遍的に存在する不安定性について
・特異点のない宇宙論解の不安定性と縮退理論でそれを回避する方法
・最近の重力波観測に関連した話題、相対論的天体の解
などについて時間の許す範囲で説明する予定である。
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4/18(水) |
早田次郎
(神戸大学)
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重力波研究の展望
これまでの重力波研究の流れと現状を概観し、今後の重力波研究の進むべき方向性を議論する。
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5/9(水) |
西澤淳
(名古屋大学)
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銀河の種族分類がもたらす宇宙論的情報
銀河は宇宙の大規模構造を探査するうえで重要なプローブであるが、宇宙には様々な種族の銀河が存在している。
典型的に銀河を特徴付ける物理量としては、質量(星質量)、星形成活動、年齢などが挙げられる。
銀河の種族毎の進化を宇宙論的スケールで理解することは、銀河進化そのものの理解を深めるのみならず、
大規模構造の構造形成進化をトレースするうえでも重要である。
本セミナーでは、異なる種族の銀河が、最も大規模な重力束縛系である銀河団においてどのように進化してきたかを
すばる望遠鏡に搭載されたHSCカメラを用いたイメージングサーベイの最新データを用いて解析した結果について紹介する。
また、別の観点から、合体ブラックホールから生成された重力波と各銀河種族との空間的相関から、
重力波を生み出すブラックホール連星のオリジンについて言及可能か、実データとシミュレーションに基づいて議論する。
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5/16(水) |
野海俊文
(神戸大学)
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Weak Gravity Conjecture and Infrared Consistency
As is captured by the word “string landscape,” an almost infinite number of low-energy effective theories may be described in the string theory framework.
However, recent studies have revealed that there exist a certain class of consistent-looking IR effective theories which are not realized in string theory, or more generally in a consistent UV theory of quantum gravity.
Such theories are said to live in the “swampland” and clarifying the boundaries of landscape and swampland is an important issue in both the theoretical and phenomenological contexts.
In the first half of this talk, I will review a typical example for such a criterion called the Weak Gravity Conjecture and its phenomenological implications.
In the latter half, I will discuss its possible connection to other QFT principles such as unitarity.
In particular, I will introduce our new proposal which we call the Tower Weak Gravity Conjecture based on the recent work arXiv:1802.04287.
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5/23(水) |
村田佳樹
(大阪大学)
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AdSバルクのブラックホールは見えるか?
AdS/CFT対応を信じれば、熱場の理論はAdS時空中のブラックホールに対応する。
そのブラックホールの姿を、場の理論の観測量を通して''見る''ことはできないだろうか?
天文学において、ブラックホールの''直接''観測とは、その影の観測のことである。
つまり、ブラックホールの背後にある光源を見て、ブラックホールが作る影を観測するのである。
我々は、AdS/CFT対応において同様なセットアップを考える。
球形のAdSブラックホール時空を用意して、そのAdS境界の一点に局在化した外場を与える。
場の理論側の物理量として、その外場に対する応答関数が得られる。
その応答関数には、ブラックホール時空を通ってきたバルク場の情報が含まれており、そこからブラックホールの影の姿を構成することが出来ることを示す。
ある熱場の理論が与えられたときに、その背後にブラックホールとしての描像があるか?
そのテストに、このAdSブラックホールの影の観測が使えるのではないかと考えている。
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5/30(水) |
日韓共同
(2国間交流メンバー)
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6/6(水) |
柳哲文
(名古屋大学)
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ガウシアン曲率揺らぎと密度揺らぎの閾値を用いた原始ブラックホール量の見積もり
初期宇宙において星の重力崩壊とは異なる過程によって形成されるブラックホールを原始ブラックホールと呼ぶ.
特に主な形成過程として注目されるのは,インフレーション中に生成された揺らぎの中で稀に大きな振幅を持つものが,重力崩壊を起こしてブラックホールになるような場合である.
本セミナーでもこのような原始ブラックホール形成過程に注目する.
原始ブラックホールの存在量はこれまで,何らかの宇宙論的揺らぎを表す物理量の振幅に対して1変数のガウス分布を仮定し,その振幅がある閾値を超える場合にブラックホールが形成されるという,単純な方法(Press-Schecheter法)で見積もられてきた.
しかし,これらの方法はいくつかの原理的な問題を抱えている.
本セミナーではこれまでの方法をおさらいし,どのような問題があるかを説明した後,その問題を解決するより信頼性の高い見積もり方法を提案する.
我々の新しい見積もり方法は曲率揺らぎが正規確率場(Gaussian random field)であると仮定し,曲率揺らぎのピーク確率分布に基づいて計算される.
原始ブラックホールの形成条件としては,これまで知られている中で最も曖昧さのない,密度揺らぎの体積平均を用いたものを用いる.
曲率揺らぎと密度揺らぎの長波長極限における非線形な関係式をつなぎ合わせ,正規確率場の性質を用いて原始ブラックホール量の見積もりを行う.
結果として,原始ブラックホールの質量スペクトルが一桁大きい方にずれ,さらに原始ブラックホールの量は慣用的な手法による見積もりに比べて何桁も大きなものとなることがわかった.
この原始ブラックホール量の増加は主に,最適化された原始ブラックホールの形成条件によるものである.
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6/8(金)-9(土) |
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6/13(水) |
吉田大祐
(神戸大学)
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Kerr時空上のベクトル場
最近、Kerr時空上でのベクトル場の、変数分離の研究が盛んである。
電磁場のKerr時空における場の変数分離は、Teukolskyによって重力場とともにnullベクトル基底を用いたNewman-Penrose定式化によってなされた。
しかし、この方法には、電磁場の二つの偏光を、変数分離する形で取り出せないという重大な欠点がある。
近年、Luninによって、ゲージポテンシャルをnullベクトル成分に分解することによって、すべての偏光モードの運動方程式が変数分離できることを示した。
これによって、Kerr時空の座標の変数分離と、偏光モードの分離が達成された。本発表では、このLuninの方法について解説する。
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6/27(水) |
高橋慶太郎
(熊本大学)
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次世代電波望遠鏡SKAによるパルサー研究の未来
SKA (Square Kilometre Array)は次世代の長波長電波望遠鏡計画である。
これまでにない高感度、高分解能、広視野、広帯域でパルサー、宇宙再電離、宇宙磁場、銀河進化、宇宙論、宇宙生物学など宇宙物理学の様々な謎を解き明かすポテンシャルを持つ。
本講演ではまずSKA計画の概要を紹介し、そのキーサイエンスであるパルサーについて2020年代にどのようなサイエンスが期待できるか解説する。
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10/3(水) |
伊藤飛鳥
(神戸大学)
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ヒッグスインフレーションと摂動的ユニタリー条件
素粒子標準模型の枠組みでつくられるヒッグスインフレーションモデルは、ヒッグス場と重力場のnon minimalな相互作用を仮定すれば、CMBなどの観測とよく整合することが知られている。
ただしこのモデルは繰り込み不可能なので、あるカットオフスケール以下で成り立つ有効理論である。
一方で、(摂動的な)ユニタリー条件からカットオフスケールに上限が与えられることが知られており、カットオフスケールがインフレーションのエネルギースケールに近くなってしまうことが指摘されている。
本発表では、1925年にアインシュタイン自身が提唱した重力のPalatini定式化の場合を考え、この場合には上の問題が解決されることを説明する。
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10/10(水) |
北嶋直弥
(名古屋大学)
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宇宙初期および中性子星まわりのアクシオン電磁気学
アクシオンは素粒子模型や高次元の理論が予言する仮想粒子であり、現在の宇宙に存在する暗黒物質の有力な候補となることが知られている。
本セミナーではアクシオンと(ダーク)フォトンの相互作用に焦点を当て、その宇宙初期および中性子星まわりにおける特異な電磁気現象を議論する。
まず、宇宙初期のアクシオンがその振動開始時期においてダークフォトンのタキオン不安定性を引き起こす現象に焦点を当てる。
特にダークフォトンを生成した反動によって、暗黒物質としてのアクシオン残存量が大きく変更される可能性と、生成されたダークフォトンが暗黒物質となるシナリオを議論する。
次に非常に強い磁場を有する中性子星付近に着目し、磁場中のアクシオン光子変換の現象を応用する。
中性子星が作る磁場まわりのアクシオンと電磁場の系の格子シミュレーションによる解析結果を紹介し、将来の電波観測による検出可能性を議論する予定である。
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10/17(水)14:00~ |
Anupam Mazumdar
(Groningen University)
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Towards Scale free and singularity free theory of gravity in the ultraviolet
I will discuss solutions of ghost free and infinite derivative theory of gravity where the solution asymptotes to scale invariant in the ultraviolet, and also non-singular for a static and non-static backgrounds.
This result is extremely rich in constructing non-local compact objects, rotating and non-rotating and can possibly act as a blackhole mimicker.
Hopefully future experiments will either rule out or constrain such constructions of gravity in the ultraviolet.
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10/24(水)16:00~ |
二間瀬敏史
(京都産業大学)
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タイプIa型超新星のm-z関係におけるレンズ効果を用いたニュートリノ質量と暗黒エネルギーへの制限
宇宙の大規模構造はそれによる弱い重力レンズ効果によってあらゆる宇宙論的観測に影響を与え雑音となる。
しかしこの雑音には宇宙論的な情報が含まれており、それを引き出すことによって重要な情報が得られる。
このことをタイプIa型超新星の見かけの明るさと赤方偏移関係におけるレンズ効果を例にとって考察する。
近い将来行われる近赤外サーベイWFIRSTやLSST(Large Synoptic Surcey Telescope)で期待される超新星のデータを用いることで、ニュートリノ質量に対して0.2eV程度や暗黒エネルギーに対する現状よりもより厳しい制限が求められることを示す。
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10/31(水) |
加藤亮
(神戸大学)
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TBA
TBA
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11/21(水) |
青木真由美
(金沢大学)
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重力波による隠れた質量起源の検証
電弱相転移の起源や暗黒物質の存在は、標準模型を超える物理の鍵となる。
本セミナーでは、隠れたセクターにおけるカイラル対称性の力学的破れによって、素粒子の質量起源と暗黒物質の存在を説明するスケール不変性に基づく拡張模型について紹介する。
さらに、隠れたセクターのカイラル相転移で生成される重力波による模型の検証可能性について議論する。
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11/29(木) (Z301) |
青木新
(神戸大学)
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CLASSを用いたCMBスペクトル計算方法
Planck衛星による宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の温度・偏光ゆらぎの高精度な観測データを利用するためには,それ以上に高精度な数値計算が必要である.
本発表では,そのための数値計算コードのひとつ「CLASS」を用いて,CMBスペクトルを計算する方法を説明する.
*実際にCLASSを動かしてみたい人は個人PCを持ってきてください.
( class-code.netからCLASSプログラムをダウンロードしておく.CLASSを動かすためにはCコンパイラ,CMBスペクトルをプロットするためにはPython環境が必要)
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12/6(木) |
田中貴浩
(京都大学)
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"Flux-balance formulae" for extreme mass-ratio inspirals
カーブラックホールまわりを運動する天体からの重力波放出による、エネルギー、角運動量、およびカーター定数の平均進化を決定する「フラックスバランス公式」は、約15年前に最初に導出された。
しかし、この導出は、運動が非共鳴の(すなわち、動径方向と角度方向の振動数が簡単な整数比にならない)場合に限定され、質量比の大きな連星合体において重要だと考えられている共鳴を通過する領域を除外するものになっていた。
今回提案する自己力を作用角変数を用いて扱う新しい導出法は、以前のものよりもはるかに簡単であり、複雑な考察なしに共鳴軌道にも適用可能である。
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12/12(水) |
正木愛美
(神戸大学)
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Axion-Photon Conversion
宇宙には、様々な強度の磁場がいたるところに存在している。
よってある光源から放たれた光は、磁場を通ってわれわれのもとに届く。
このように電磁波が磁場中を通過する場合、単独では伝播しないことが知られており、その痕跡が電磁波の強度や偏光に残る。
本発表では、電磁波と共に伝播するものとしてアクシオンを例にとり、転換現象の基本的な仕組みを説明する。
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1/9(水)14:00~ |
西澤篤志
(名古屋大学)
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重力波伝播による重力理論の検証
LIGO が中性子連星合体からの重力波を初検出し、ガンマ線バーストとの到来時間差から重力波の伝播速度が非常に精密に測定された。
この結果により、あるクラスの修正重力理論に対して強い制限が与えられた。
一方で、重力定数の時間変化も重力波伝播にとっては重要な観測量であるが、現在のところ非常に弱い制限しか得られていない。
本セミナーでは、重力波伝播による重力理論検証の理論的枠組みについて解説し、現在および将来期待される観測的制限について紹介する。
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1/16(水) |
Maxim Yu. Khlopov
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Strong Primordial Nonhomogeneities from physics of very early Universe
Strong primordial nonhomogeneities and primordial structures are considered as reflection of the fundamental structure of particle theory in very early Universe.
Early dust like stages and Primordial black hole formation will be considerd.
On the example of a simple axion-like U(1) model formation of large scale correlations in the energy distribution of the coherent axion field oscillations and os clusters of massive primordial black holes will be discussed, pending on whether the Peccei-Quinn like phase transition takes place on inflationary stage or after reheating.
Similar type of model of spontaneous baryosynthesis can lead to existence of surving antimatter domains in baryon asymmetrical Universe.
These predictions can be peobed in Gravitational wave experiments and search for cosmic anti-He-4 in AMS02 experiment.
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1/23(水) |
金 スロ
(神戸大学)
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非平衡系と対称性の自発的破れ
非平衡系はクォーク・グルーオン・プラズマ、インフレーション宇宙論など物理の幅広いスケールで現れる。
特に、非平衡系での対称性の自発的破れは散逸のある流体力学の文脈で議論が盛んでおり、対称性の自発的破れに付随するNambu-Goldstoneボソンも拡散モードの分散関係を持つなど平衡系の場合と違う性質を持つことが知られている。
本発表の前半では一番簡単な例であるブラウン粒子のダイナミックスを用いて開放系の記述方法であるMSR形式やSchwinger-Keldysh形式について紹介する。
後半では有効場理論を用いて非平衡系での対称性の自発的破れとそれに付随するNambu-Goldstoneボソンの性質について議論する。
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2/5(火) 集中講義:10~15時, セミナー:15時~ |
彌永亜矢
(立教大学)
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スカラー・テンソル理論の一般化、および2自由度スカラー・テンソル理論について
修正重力理論の1つに、スカラー・テンソル(S-T)理論がある。
これはテンソル場とスカラー場によって記述される重力理論であり、一般的なS-T理論の持つ自由度はテンソル型の2自由度とスカラー型の1自由度の合計3自由度を持つ。
ただし、一般的なS-T理論のサブクラスとして2自由度のみを持つような理論も存在する。
この理論は一般相対論と同じ自由度を持つという観点から、「最小限に」修正を加えた理論と捉えることができる。
本講演では、初めに一般的なS-T理論の枠組みについて説明する。
その際、理論の持つ作用と自由度の解析力学的な関係についても詳しく述べるつもりである。
次に、2自由度S-T理論の1例であるcuscuton理論を紹介する。
そしてcuscuton理論に関する近年の研究として、cuscuton理論をより一般化したextended cuscuton理論の構築および宇宙論的性質について考える。
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2/22(金) |
吉田大介
(McGill University)
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Spacetime singularity in inflationary universe
Despite the fact that exact de Sitter space is free of spacetime singularity, the absence of singularity in inflationary universe is still non-trivial.
In this talk, I will focus on singularity problem of two kinds of inflationary universe: past asymptotic de Sitter space and torus compactified de Sitter space.
In the former case, I find that the presence of the singularity depends on how fast the scale factor approaches to that of exact de Sitter space toward the asymptotic past.
In the latter case, I find that the end point of an incomplete geodesic in compactified de Sitter space is locally extendible but there is no globally consistent extension of spacetime.
In other words, compactified de Sitter space has so called quasi regular singularity.
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