日付 |
発表者 |
タイトル ( 概要 : タイトルをクリック ) |
4/15(水) |
徳田 順生
(神戸大学)
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インフレーション中における赤外発散の問題について
インフレーション中の量子ゆらぎの相関関数を摂動的に計算すると、ループレベルで非常に大きい赤外永年成長項が現れ摂動論が破綻する問題が知られている。
この赤外永年効果の物理的意味を理解しゆらぎの相関関数へどう影響を与えるかを精査することは、インフレーション模型を観測的に検証する上で重要な問である。
この動機のもと本講演では、近年再注目されているストカスティックアプローチと赤外永年効果を量子デコヒーレンスと関連づけて理解することで、
ゆらぎの量子状態のどのような構造が赤外永年成長効果を生み出すかを明らかにする。
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4/22(水) |
齊藤 海秀
(神戸大学)
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行列正則化とDiracスピノルを使った構成法について
M理論は弦理論の5つのタイプの統一理論として存在が予想されているが、実のところ作用すらわかっていない。近年では、膜の一体理論を「行列正則化」という手法で離散化した「行列模型」がM理論の様々な側面を捉えることが知られていて、M理論の定式化の候補となっている。本セミナーではこの「行列正則化」をスピノルを用いて構成する方法を紹介し、平坦トーラスを例にとり具体的な写像の構成を議論する。
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5/13(水) |
早田 次郎
(神戸大学)
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メゾスコピックスケールの宇宙
インフレーション宇宙論の最大の課題は、10-28cmの時代の量子論的時代の痕跡を1028cmの現在の宇宙の中に見つけることにある。このミクロとマクロのスケールの中間スケールであるメゾスコピックスケール(10-4
cmくらい)は色々な意味で興味深い。
これは既知の物理理論の限界であるエネルギー(TeVくらい)に対応する温度の宇宙のホライズンスケールである。また、ニュートン重力がよくわかっているスケールの下限付近でもある。量子力学が古典的な振る舞いをする上限くらいともなっている。このメゾスコピックスケールの宇宙像を明らかにすることが宇宙の量子的起源の理解に繋がるのではないだろうか。という現在模索中の研究の方向性を議論する。
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5/20(水) |
野海 俊文
(神戸大学)
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Duality and Weak Gravity
本講演では場の量子論や弦理論に存在する様々な双対性と「Weak Gravity Conjecture」の関係を議論したい。前半では、電磁双対性の一般化であるS-双対性や弦理論に特有のT-双対性について復習したのち、これらの双対性が低エネルギー有効理論を絞るのにどのように使えるかを議論する。後半ではその応用として、量子重力と無矛盾な理論模型の整合性条件として期待されている Weak Gravity Conjecture を示す上で双対性がどのような役割を果たすか議論する。
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6/3(水) |
髙橋 一史
(神戸大学)
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スカラーテンソル理論におけるステルス解について
現在までの観測は一般相対論における厳密な時空解と整合的だが、将来の重力波の観測においては一般相対論では説明できない現象の発見が期待されている。多くの修正重力理論の時空解は一般相対論の解と異なるが、中には一般相対論と同じ厳密解
(ステルス解)
を持ち、従ってこれまでの観測的制限を容易に満たすことが可能な模型も存在する。修正重力理論のうち、このような模型を系統的に扱う枠組みを構築できれば、今後の重力波の観測をもとに強重力場の物理を探査するための理論テンプレートとして有用であろう。そこで本講演では、修正重力理論の代表的な枠組みであるスカラーテンソル理論に着目し、ステルス解の存在条件を議論する。
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6/10(水) |
吉田 大介
(神戸大学)
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特異点解消をヒントにした重力理論の探査
一般相対論の抱える問題の一つとして、時空がそこを超えて定義できなくなる、特異点の生成が挙げられる。特異点は一般相対論をその適応範囲外まで使用しているために生じている見かけのものと考えられている。そのため、「特異点解消」という性質は一般相対論を超える超高エネルギー領域における重力理論に期待する有力な性質である。本講演では、特異点解消という観点から超高エネルギー領域における重力理論に迫ろうという研究のアプローチを紹介し、特に、そのために重要となる、初期宇宙モデルの特異点の判別法の定式化を行う。
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6/17(水) |
伊藤 飛鳥
(神戸大学)
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Pulsar timing residual induced by ultralight vector dark matter
Ultralight bosonic dark matters are expected to solve the core-cusp problem in dark matter halos.
In this talk, we study the ultralight vector dark matter with a mass around 10−23 eV.
The vector field oscillating coherently on galactic scales induces oscillations of the spacetime metric with a frequency around nHz, which is detectable by pulsar timing arrays.
We find that the pulsar timing signal due to the vector dark matter has nontrivial angular dependence unlike the scalar dark matter and the maximal amplitude is three times larger than that of the scalar dark matter.
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6/24(水) |
榊原 由貴
(Sun Yat-sen University)
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Non-singular universe with finite anisotropies
Non-singular universe, which avoids the appearance of the singularity of the spacetime at the very early time, has been investigated for many years. Most of the analyses have been done under the assumption that spacetime is homogeneous isotropic for simplicity. However, the existence of anisotropies can easily spoil the achievement of the non-singular universe. We propose a new framework motivated by limiting curvature hypothesis, and, by introducing a mechanism to limit anisotropies in this framework, we obtain a stable non-singular anisotropic universe. It is remarkable that our framework gives a unified picture of mimetic gravity and cuscuton gravity in the context of limiting curvature theories.
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7/1(水) |
小幡 一平
(京都大学)
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Statistically Anisotropic Tensor Modes from Inflation
原始重力波はインフレーション理論が予言する宇宙最古の時空のさざ波であり、その観測はインフレーション理論の検証並びに宇宙の晴れ上がり以前の高エネルギー物理を探索する上で非常に重要な課題となっている。通常、原始重力波はインフレーション期の真空中の量子揺らぎから生成され、スケールにほとんど依らない統計的に等方なスペクトルを持つと考えられてきた。しかし、高エネルギー理論が予言する物質セクターの振る舞いを考慮すると、これらとは異なる統計的性質を持った原始重力波が生成される可能性がある。本セミナーでは、ベクトル場が主要な役割を果たす「非等方インフレーション」模型から予言される統計的に非等方な原始重力波について、その生成機構と宇宙背景放射による観測可能性について議論する。
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7/8(水) |
金 スロ
(神戸大学)
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Drawing the borderlines in the EFT landscape using Unitarity
ユニタリー性は低エネルギー有効理論のUV completionを議論する上で有用である。例えば、フェルミー4点散乱振幅のユニタリー性の破れからWボソンのエネルギースケールを見積もることができた。今回の講演ではUnitarityを用いて、現象論的モデルとしてよく使われるP(X)モデルのUV completionについて議論する。特に、P(X)モデルが二つのスカラー場でUV completeできる時はX^3以上の項は現れないことを示した上で、宇宙論への応用を議論する。
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8/5(水) |
玉岡 幸太郎
(京都大学)
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Pseudo Entropy and Holography
近年、量子重力理論のホログラフィー原理に基づく定式化を理解するために、量子情報理論を用いたアプローチが盛んに行われている。
特に、ホログラフィー原理の具体的な実現である超弦理論のAdS/CFT対応において、「笠-
高柳公式」と呼ばれる「場の理論のエンタングルメント・エントロピー」と「重力理論の面積」を関連づける関係式が知られており、AdS/CFT
対応の基本原理の理解へ役立ってきた。本講演では、pseudo entropy (擬エントロピー)
という量を新しく導入し、その基本的な性質、操作的意味づけ、そしてAdS/CFT
対応における重力双対について議論する。この量は、エンタングルメント・エントロピーのpost-selectionへの一般化と解釈することができる。特に、pseudo
entropyの重力双対が漸近的 Euclidean AdS
空間における最小曲面と同定できること、そこからホログラフィー原理へ与えられる示唆を議論する。時間があれば、混合状態への拡張などについても議論したい。
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9/24(木) 10:30 |
濱田 雄太
(APC, Paris)
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Stringからのde Sitter 時空の実現について
最近、String理論からde Sitter 時空を実現するセットアップが存在するかどうかが盛んに議論されています。議論の1つに、ゲージーノ凝縮を高次元でどのように記述するかという問題があります。本講演では最近の発展を我々の論文を中心にお話しします。時間があれば、de Sitter 時空実現の別の問題点についても簡単に紹介します。
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10/5(月) |
正木 愛美
(神戸大学)
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アクシオン暗黒物質の転換現象
磁場中で、アクシオンと光子は互いに転換しながら伝播することが知られている。暗黒物質の正体としてアクシオンを想定した場合、そのコヒーレントな振動によってパラメータ共鳴を生じ得る。本発表では、転換現象とパラメータ共鳴について復習した後に、アクシオン暗黒物質と磁場が共存する系のふるまいについて議論する。
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10/12(月) |
髙 鵬遠
(神戸大学)
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Inflation with SU(3) gauge field
We research the anisotropic property of inflation under the coupling of a scalar field and SU(3) gauge field numerically. This is not the final result as the research is in progress. We set up a gauge field with only isotropic parts of SU(2) and components of $\lambda^8$( note that $\lambda^8$ commute with SU(2) group generators). The $\dot{\phi}-\phi$ phase graph is similar to that of U(1) coupling case except that there is a "drop-down" at the end of inflation because of the oscillation behaviour of isotropic SU(2) gauge field. The degree of anisotropy is related to the proportion of energy of SU(2) gauge field and the $\lambda^8$ component, and thus subject to the initial condition of them.
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10/19(月) |
佐竹 響
(神戸大学)
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p形式ゲージ場に対する弱い重力予想
弦理論は量子重力の候補として期待されている理論である.弦理論のエネルギースケールは我々が観測不可能なほど高いため,弦理論が実験可能な領域に残す痕跡を探ることが近年研究されている.弦理論から実現可能な場の量子論模型全体はランドスケープ,弦理論から実現不可能な場の量子論模型全体は沼地と呼ばれる.弱い重力予想は重力が一番弱いことを主張していて,ランドスケープと沼地を分ける基準の一つである.本発表では量子論的な高階微分補正を加えることでブラックブレーンがp形式ゲージ場に対する弱い重力予想の要請を満たすことについて示す.
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10/26(月) |
竹内 俊暁
(神戸大学)
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Review of [1905.08762]
近年AdS/CFT対応の理解が進んだことで、CFT側から演算子を再構成可能なAdSの領域が明らかになってきた。そのような領域はEntanglement Wedgeと呼ばれている。[1905.08255]と[1905.08762]ではブラックホールの情報喪失問題を念頭に、AdSブラックホール時空におけるEntanglement Wedgeの時間発展が調べられた。その結果、ブラックホールが半分蒸発した時刻(Page time)においてEntanglement Wedgeの領域が急激に縮小する相転移がおき、CFT側から演算子を再構成できないIslandと呼ばれる領域がブラックホール内部に現れることが示された。Islandにおける演算子はホーキング放射から再現されると考えられ、ブラックホールに落ちたものの情報が回復されることを示唆する。特にPage time以後に情報が回復されるという結論はブラックホールのトイモデルを用いたHaydenとPreskillの主張を裏付けるものである。今回は、[1905.08762]をもとにして近年の情報問題の進展を紹介したい。
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11/9(月) |
井上 奉紀
(神戸大学)
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標準模型有効理論に対するextremal positivity boundの有効性の紹介
標準模型有効理論の演算子に対するpositivity boundの計算方法として,extremal positivity approachと呼ばれる手法が最近提唱された.この手法はこれまでの計算手法に比べ,より強い制限を与えることが可能で,さらにより複雑な系に対してもアルゴリズム的に計算することができるため使い勝手が良い.本発表では,ゲージボゾンの4点結合に対するパラメータ領域の制限を例に,この手法とその有効性について紹介する.(内容はarXiv:2009.04490に関するレビューである.)
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11/30(月) |
宇賀神 知紀
(YITP)
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Entanglement between two disjoint universes
We use the replica method to compute the entanglement entropy
of a universe without gravity entangled in a thermofield-double-like
state with a disjoint gravitating universe. Including wormholes between
replicas of the latter gives an entropy functional which includes an ``
island" on the gravitating universe. We solve the back-reaction
equations when the cosmological constant is negative to show that this
island coincides with a causal shadow region that is created by the
entanglement in the gravitating geometry.At high entanglement
temperatures, the island contribution to the entropy functional leads to
a bound on entanglement entropy, analogous to the Page behavior of
evaporating black holes. We also apply the formalism to black holes in
de Sitter space, and find similar islands.
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12/7(月) |
M1
(神戸大学)
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M1発表
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12/14(月) 19:00- |
Andrew J. Tolley
(Imperial College London)
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Recent Progress in Positivity Bounds
I will discuss a couple of different recent works describing how
positivity bounds can be used to constraint effective field theories.
Firstly I will discuss how maximal crossing symmetry can be used to place
lower and upper bounds on Wilson coefficients and derive various new
positivity relations. In addition I will discuss the application of
positivity bounds to QED coupled to gravity, and derive under familiar
assumptions a new low cutoff for this effective theory missed by previous
works which focused only on the Euler-Heisenberg low energy effective
theory.
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12/21(月) 18:00- |
佐藤 亮介
(DESY)
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Axion fragmentationとその応用
Axion (およびaxion like particle) は素粒子模型にしばしばあらわれる、周期的ポテンシャルを持つ軽い擬スカラー粒子である。
Axionの一様成分が十分大きな運動エネルギーを持っていた場合、一様成分が一定の速度を保ちポテンシャルを乗り越え転がり続けることができる。この過程において、一種の共鳴現象によりAxionの空間的な揺らぎが指数関数的に成長し、axionの一様成分から運動エネルギーを奪うことができる。本講演では、この現象を"axion fragmentation"と呼ぶことにし、詳しく議論する。Relaxion模型に与える示唆についても議論する。
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1/18(月) |
野村 皇太
(神戸大学)
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非線形電磁気学におけるブラックホールの安定性解析
古典電磁気学において電磁場はマクスウェル方程式に従うが、これを補正し、運動方程式が非線形となるように拡張した理論は総じて「非線形電磁気学」と呼ばれる。非線形電磁気学は、量子補正を取り入れた有効理論として実現されることがあるほか、曲率特異点を持たないブラックホール解が構成できる例もあり、興味深い。本発表では、非線形電磁気学におけるブラックホール解を見た後、解が摂動に対して安定であるための条件を導出し、いくつかの非線形理論を例に安定性条件が満たされるかを確かめる。
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