研究内容

1)線虫C. elegans における生殖細胞形成機構

線虫C. elegans の生殖細胞の形成に必須なクロモドメイン蛋白質MRG-1を発見し、その機能を研究しています。胚発生後期に2つの始原生殖細胞に限局するMRG-1が、包括的な転写抑制制御に関与することで、ゲノムDNAの安定化に寄与することを明らかにしています。また、MRG-1の始原生殖細胞への限局が3’ 非翻訳領域を介したmRNAの安定性制御によることも明らかにしています。 さらに、胚発生が完了した後の過程では、MRG-1が他の因子と共にヒストンのアセチル化修飾を通じて生殖細胞遺伝子の発現を活性化することを明らかにしています。


 線虫 C. elegansの雌雄同体


母性のMRG-1を受け継げない変異体は生殖細胞を形成できない。

 


線虫 C. elegans の始原生殖細胞に局在するmRNP顆粒(緑:PGL顆粒)
とクロマチン相互作用因子MRG-1(紫:MRG-1蛋白質)

 

MRG-1の始原生殖細胞への限局はmrg-1 mRNAの3’UTRによって制御されている

 

MRG-1は始原生殖細胞に限局した後、胚発生が完了するまでの期間、
生殖細胞遺伝子の転写抑制とDNA修復の両方に機能することでゲノムDNAの安定化に寄与する。

 

 

胚発生が完了した後の過程では、MRG-1がメチル化ヒストンを認識して生殖細胞遺伝子領域に
アセチル化酵素MYS-2を呼び込むことで生殖細胞遺伝子の転写を活性化する。

 




2) 線虫mRNA輸送関連因子NXF-2の機能

真核生物ではNXF-1(またはTAP)と呼ばれる輸送受容体がmRNAを核から細胞質へ輸送しています。線虫C. elegans にはNXF-1に加えて、構造のよく似たNXF-2が存在しており、その機能を研究しています。NXF-2が生殖細胞特異的に発現し核膜近傍の領域において、特徴的な顆粒状構造を形成することを明らかにしています。


生殖細胞の有糸分裂領域において、NXF-2は核膜近傍で顆粒状構造を形成する