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研究の紹介

若手研究者探訪


ヒトiPS細胞をつかって癌などの疾患を再現することで,病気の発症メカニズムの解明や治療法の開発に資することを目指して研究をされている青井貴之先生に,iPS細胞を使った研究との出会い,現在の研究内容,今後の抱負についてお話を伺いました.



聞き手:お医者さまから基礎研究をされるようになったいきさつをお聞かせ下さい.

青井先生:もともと消化器内科医(消化管内視鏡)をしていたなかで,今の医療では治せない患者さんもいて,申し訳ないという思いもあり,基礎研究の重要性を感じていました.大学院という期間限定ですが研究をしようという気持ちがあり,京都大学大学院生として,山中先生の下で研究を開始しました.ちょうど私が,山中先生が京都大学に移られてからの第一期生となりました.博士論文のテーマはiPS細胞を使って肝臓からねずみを作るというものですが,これは臨床医にとっても理解しやすい研究テーマであり,この基礎研究は自身にとってとても意義あるものであったと感じています.

聞き手:博士号取得後も引き続き基礎研究をされた動機はどういったものでしょうか?

青井先生:2006年にiPS細胞が発見され,翌2007年にはヒトのiPS細胞ができ,2008年に論文発表と,まさにiPS細胞研究が拡大する時期であったことや,学術振興会PDがとれたことも後押しとなったことが研究を続ける動機となりました.山中先生が京都大学で研究室を持たれた2005年時点では,20人もいない少人数の研究室でしたが,組織の拡大と共にメンバーの一人として助教ポストに就きました.これまで医師をやっていたので,病院とのコミュニケーションが取れる人材としても必要とされ,今に至っています.10年前にはこうなるとは想像もしていませんでした.



聞き手:聞き手:現在行っておられる研究や活動をお聞かせ下さい.

青井先生:2013年に神戸大学に赴任して,まずはじめに取り組んだのはiPS細胞の研究ができる環境や体制の整備です.現在ではiPS細胞の培養が出来る環境が整っています.私のポリシーとして,iPS細胞を使った研究をする人それぞれが,iPS細胞の培養が出来るようになってもらいたいと考えており,他機関の研究者にも積極的に技術を伝授するようにしています.iPS細胞の培養技術は既に確立していますので,研究のステージとしては「iPS細胞を使って何をするか」という段階にきています.iPS細胞のメリットは,病態を何度でも再現できる上(サンプルの量的制限の回避),病気の成り立ちを動的に観察できることです.病気が発症するきっかけを与えて,病気が成立するまでのプロセスの情報を得ることができます.このようなメリットを最大限活かした研究をしようとしています.今や,病気の何を明らかにするかという視点でのターゲットの絞込みが大事になっています.現在取り組んでいる研究は,具体的には,肝臓の領域におけるiPSを使った病態再現をやっています.他の領域においても,専門とする先生と共同で研究を行っています.



聞き手:今後の研究展開についてお聞かせ下さい.

青井先生:現在のところ,ヒトの癌をつくることには成功していません.しかし,iPS細胞で再現できる可能性があるので,取り組んでいこうとしています.再生医療に関連する研究も行っています.癌に対する免疫療法をテーマとして研究を進めていますが,実用化段階にまでもっていくには,資金的な面で厳しい事例が世界的にみられるのが現状です.産業化へいかに進めるかということで,産業化までの道筋をみて標的領域を決定するという方針をたて,iPS細胞ならではの治療法を開発しようと考えています.開発コストをおさえることも再生医療では重要であり,ゼロからの開発ということではなく,先例があるものを前提としてステップバイステップ(現状の研究過程に,あらたにiPSを使う)の開発を意識し,京都大学や東京大学で先例のあるγδT細胞を使った研究を進めています.γδT細胞は様々な癌に有効であるとされており,一製品を多くの患者に適用できる可能性があります.γδT細胞をターゲットとして,将来的には臨床試験まで進めたいと考えています.



2017年1月(配信)  聞き手:犬伏祥子,吉田一 文責:城谷和代

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