統計遺伝学グループ



注:現在は指導教員が不在のため統計遺伝学領域の研究は行っておりません。


 統計(量的)遺伝学は、動物の特定の性質を遺伝学的に解明し、選抜・交配という手段を通じて、動物集団の能力を人間が希望する方向へ改良するためのプロセスを研究する分野である。われわれの回りを見ると、長い歴史のなかで「人間が希望する方向へ改良」してきた動物(家畜)集団の例を多数見ることができ、日常生活のなかで多くの恩恵を被っていることが分かります。

 セントバーナードもチワワも犬であり、交配によって子供が産まれます。これほど外貌が異なっていても生物学的には同じ犬科に属しています。今話題のトキは1年間にわずかな卵しか生みませんが、産卵鶏は年に365個もの卵を生むものも珍しくはありません。私達が、毎日食べている乳製品の原料を生産する乳牛は1日に20〜30kgもの牛乳を生産します。肉牛は1日に1kg程度も体重が増加します。いずれも、本来の野生動物が持たなかった特性を備えており、これは人類が長い間、試行錯誤を重ね、希望する方向へ動物の特性を遺伝的に改良してきた成果です。このような動物の特性は、産卵数や乳量のように生産量が多いか少ないか、あるいは体格が大きいか小さいかというように、連続的に変化する特性であり、これらは量的形質と呼ばれています。量的形質は多数の遺伝子に支配され、また動物を取り巻く様々は環境の影響を受けて発現します。動物集団は希望する方向へ変化させるには、連続的に変化する特性の変異の内どの程度が遺伝的な原因に起因するのかを明らかにした後に、個々の動物の遺伝的は性能を正確に評価し、遺伝的に望ましい個体を次代の親に選ばなければなりません。

 私達の研究室では、この動物集団の特定の形質について、遺伝的能力を正確に評価する方法論、さらにどのように選抜し、交配すれば集団の特性が速やかに変えられるかをコンピューターを用いたシミュレーションによって研究しています。例えば、黒毛和種というわが国固有の肉用牛の遺伝的評価に関する研究を行っていますが、これは全国の肉牛の血統や経済形質に関する膨大な情報のデータベース化し、統計的手法によって個体の遺伝的能力を評価し、その改良への利用法を検討しています。一方、野生動物であれ家畜集団であれ、その存続や将来を見越して遺伝的資源を確保するためには一定の遺伝的多様性を保っていることが必要になります。これは人間が望む方向へ改良することと矛盾する側面を持っており、動物の遺伝的多様性を保ちつつ集団の能力を変えていく方法をも考えていく必要があるのです。

 このような問題点に対して、研究室に所属する4回生や大学院生は一人一人がコンピュータの利用をマスターし、自らの研究テーマをもって、研究に取り組んでいます。

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