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研究概要Overview

@研究の学術的背景Background

【研究状況】
従来の輸出管理法研究は、@国際軍縮法・軍備管理法、安全保障法(安保理決議、大量破壊兵器条約、輸出管理レジーム)といった国際公法規律の分析を中心に行われてきた(業績28)。他方、近年は、A国内法(外為法)上の実務対応の分析が重視されることに加えて(業績22, 34)、B汎用品の増加に伴い、国際経済法(WTO法と外資規制法)との調整と棲み分けを要する場面が増えている(業績51, 53)。このように、輸出管理法研究では、ABをカバーするための分野横断的で包括的な研究が求められている。

【研究成果】
研究代表者(浅田正彦)は、以下のように輸出管理の学術面と実務面の双方に携わってきた。
(1) 学術面:輸出管理に関する書籍・論文を通じて広く学術的な貢献を行ってきた(業績01, 09, 19, 28,29, 40, 41, 42, 47, 48)。また、国際共同研究にも積極的に取り組み、国際法協会(ILA)「軍備管理軍縮法委員会」代理委員(1998年〜2005年)や「核不拡散委員会」委員(2011年〜)も務め、欧米の学者・実務家を中心に結成された「国際安全保障専門家グループ(IEGGS)」の一員として共同研究を推進してきた。さらに、広く安全保障を論じる中で、輸出管理の実務上・理論上の重要性を強調してきた(業績28)。これらの業績をもとにして、「日本安全保障貿易学会」の会長を務めた。
(2) 実務面:@外務省の軍縮不拡散・科学部と定期的に協議を行ってきた。A各種の政府間会議・国際交渉に政府代表団顧問として出席している。B化学兵器禁止機関(OPCW)「秘密保護紛争解決委員会」委員として、産業秘密の保護に関する実務に携わった。C国連安保理「北朝鮮制裁委員会」委員として対北朝鮮経済制裁の審査の現場に携わった。D「財団法人安全保障輸出管理センター」(CISTEC)とも広く協力関係を築いている。

【着想の経緯】
上記の諸活動を行う中で、次の着想を得るに至った。@軍民両用技術・汎用品の増加に伴い、輸出管理法制度の分析に国際経済法分析が不可欠となっている。特に、通常兵器規制(武器貿易条約等)、国際経済法秩序の展開(FTA/EPA締結の拡大、安全保障例外条項の利用、投資自由化規定)、武器禁輸政策の転換(防衛装備移転三原則)といった要因により、両法体系の関係を包括的に分析する必要が生まれている(下記図2参照)。実際に、中国資源禁輸案件を通じて、輸出管理とWTO法の抵触問題が論じられている(Mitsuo Matsushita, Export Control of Natural Resources: WTO Panel Ruling on the Chinese Export Restrictions of Natural Resources, Trade, Law and Development, vol. 3 (2011), pp.267-295)。A実務上も両法関係の調整と分析が強く求められている。とりわけ、技術立国日本の場合、「防衛装備移転三原則」と防衛装備協力協定の運用を見据えた国際政治学的分析が不可欠である(特に、日米豪等の防衛装備協力)。このように、従来の研究成果を踏まえて、@国際経済法研究を取り込むと同時に、A国際政治経済学研究を取り込む必要がある。

【発展内容】
なお、多国間輸出管理レジームに関する包括的研究としては、Christer Ahlstrom, The Status of Multilateral Export Control Regimes: An Examination of Legal and Non-Legal Agreements in International Co-operation (1999) がある。また、本研究メンバーの業績も多い。そこで、こうした業績をもとにし、分野横断的な研究を行うと同時に、研究内容の対外発信に力を入れる(国際シンポジウムや欧文書籍出版)。

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A明らかにする課題Issues

本研究は次の点を明らかにする。(1) 輸出管理法制における行為規範内容を特定する。輸出管理レジームは、ハード・ローに加えて、ソフト・ロー規制で構築されているため、関連文書を丁寧に分析し、現行の行為規範を明らかにする。(2) 各国の法令とその実施状況(輸出管理実務)の比較検討を行い、(1)の内容を補完する。(3) 輸出管理法制における安全保障法(国際軍縮法・国際軍備管理法)と国際経済法(WTO法・国際投資法)の抵触問題を分析し、両法体系の交錯状況を明らかにする。上記 (1) (2) (3) を通じて、官公庁・民間企業への実務提言を行う。(4) 国際政治経済の知見を踏まえて輸出管理レジームの将来像を構想する。例えば、日本の防衛装備移転三原則の将来構想には、対中政策や環太平洋安全保障(日米安保、日豪防衛装備協力等)の議論が欠かせない。

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B学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義 Originality & Significance

【特色・独創性】
(1) 輸出管理の実務経験者・学識者が多く参加している。浅田正彦と山本武彦は「対北朝鮮制裁委員会」に委員として参加し、鈴木一人は「対イラン制裁委員会」に委員として参加した。そのため、国連安保理による禁輸措置の実務を踏まえた実践的研究を行うことが可能である。
(2) 輸出管理に関する日本で唯一最大の学会である「日本安全保障貿易学会」との間に強い協力関係を有する。本研究メンバーには、山本武彦(初代会長)、村山裕三(第二期会長)、浅田正彦(第三期会長)、青木節子(第四期会長)がおり、多くのメンバーが同学会理事である。そのため、学会との協力(情報交換等)が可能である。
(3) 国際軍縮法・国際軍備管理法の分析に加え、国際経済法(平覚、川島富士雄、玉田大、中谷和弘、中島啓)研究を織り交ぜた包括的研究を行うことが可能である。さらに、法的分析に加え、政治学(山本武彦、鈴木一人)と経済学(村山裕三)を交えた分野横断的な研究が可能である。
(4) 外国(フランス)の研究グループと共同研究を行い、国内法制の比較研究が可能である。特に、フランスは原子力技術や航空技術に関する輸出管理実務が発展しており、日本の実務分析にも参考になる点が多い。
(5) 本研究では、共同研究グループに官公庁・民間企業の輸出管理担当者を迎えており、実務上の問題点を把握すると同時に、理論的分析結果を実務の面で活かすことが可能である。


【結果と意義】
(1) 輸出管理を通じて、安全保障と国際経済という国際法の2つの分野の関係を明らかにする。同時に法理論研究(ソフトロー等)でも貢献が期待される。
(2) 研究会および国際シンポジウムの開催の成果を英語で海外発信する(毎年Indexという形で情報を広く公開する)。日本の輸出管理実務を海外に紹介し、1つの国家実行として認知されることを目指す。
(3) 「研究者・官公庁・民間企業」を交えた共同研究を推進する。輸出管理における産官学の協働関係を実現することができる。
(4) 輸出管理に関する実務提言は、日本の産業技術の活用提言に繋がる。日本のような技術立国にとって、輸出管理は必ずしも制約事由としてではなく、汎用品の輸出促進の観点から再評価すべきである(防衛装備輸出三原則)。輸出管理の現状を解明することにより、実務上・政策上の提言を行うことが可能である。

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