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内海域環境教育研究センターの強み・特色

内海域環境教育研究センタ-は、瀬戸内海などの閉鎖海域の自然環境に関する基礎的研究と教育を行うほか、沿岸環境の保全と修復に関わる産官学連携研究を行うことを目的として設置され、「先端研究と文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」をビジョンとして掲げる神戸大学における基幹研究推進組織の一つとして位置づけられている。

本センターは理学部附属臨海実験所(昭和38年設置)を母体とし、平成7年に学内共同利用の省令施設として設置された内海域機能研究センターを、神戸大学と神戸商船大学との統合を機に拡大改組したものである。現在は「海底物理学研究分野」、「環境生化学研究分野」、「生物多様性研究分野」の3つの研究分野と、臨海教育研究施設である「マリンサイト」から構成されているが、平成30年4月からは海域に留まらずその集水域にあたる陸域の水系の生態系との連環もふまえて内海域環境を理解するため新研究分野「集水域生態系研究分野」を設置する予定である。またこれを機に既存の研究分野も「海洋地質学研究分野」、「海洋環境科学研究分野」、「海域生物多様性研究分野」と名称変更する。

マリンサイトは平成26〜30年の期間、教育関係共同利用拠点として認定を受け学内外の学部・大学院学生を対象に様々な教育プログラムを提供すると共に、周辺海域における研究活動の支援を行っている。


各研究分野の主な研究内容

海洋地質学研究分野

海洋域に加え、砕屑物など堆積物質を供給する陸域も含めた地質体の地球科学幅広い地質学的手法により海底堆積物を解析し,内海域の環境及びその時空変化の内的・外的要因を解明し,将来の環境予測や海域利用のための基礎的研究を行う。

海洋環境科学研究分野

海洋をとりまく諸現象を化学,生物学,物理学の視点から観測,評価,解析し,汚染物質などの環境影響評価,環境動態解析,将来予測を元に環境保全・修復技術の開発に関する基礎的研究を行う。

海域生物多様性研究分野

内海域における水生生物の生物多様性と生態の解析,及びこれらの生物を指標として内海域環境を評価・モニターするための手法に関する基礎的研究を行う。

集水域生態系研究分野

沿岸生態系に大きな影響を与える溜池,湖沼,河川,河口域などの集水域の生態系がもつ生物多様性と生態学的特性について,沿岸生態系との連環の解明を目指した基礎的研究を行う。

研究面での強み・特色

海洋地質学研究分野では、内海域の海底堆積物に加え、国内およびインドネシア、中国など世界各地の地層を分析し、内海域の古環境変遷および第四紀の海水準、気候、地磁気に関する数多くの成果を挙げてきた。中でも、大阪湾海底堆積物コアの地磁気逆転と気候・海水準変動データを組合せて開発した磁気・気候層序年代法は地球科学に限らず、人類学や考古学にも貢献する新たな年代法として高く評価され、同分野教員の日本第四紀学会学術賞受賞の主要な成果となった。また、78万年前と107万年前の地磁気逆転期の詳細な磁場変動と大阪湾周辺の植生変化から発見した最高海水準期の気候の寒冷化とその原因の解明は、大気中CO2濃度以外に銀河宇宙線-雲アルベド効果が気候制御の重要な因子となることを明らかにし、多くのメディアに取り上げられた。さらに、房総半島の千葉セクションにおける古気候・古海洋環境研究の成果により、千葉セクションを前期-中期更新世境界の国際標準模式層断面および地点(GSSP)の候補として提案する日本からの申請に貢献した。第一次審査において3つの候補の中から千葉セクションが選出され、現在国際地質科学連合(IUGS)における上位の委員会に答申中である。

海洋環境科学研究分野は、海事科学研究科の練習船深江丸や小型舟艇などを用いたフィールド研究を強みとしている。内海域の自然資本(水、大気、生物資源など)の価値を適切に評価し、環境保全・修復技術を開発することを目的として、産官学の共同研究による成果を上げてきた。水環境中での有害化学物質の環境動態と環境影響評価に関して、新規防汚剤とその分解産物が日本の沿岸海水に残留することを初めて報告し、一連の水生生物を用いた環境影響評価試験法や画像解析を用いた高感度な水生植物試験法を提案する(Ecotoxicology, 2012)などの成果を上げた。沿岸域の環境動態解析と将来予測に関して、富栄養化が著しい大阪湾(Mar.Pollut.Bull., 2008)やマニラ湾(La Mer, 2012)の物質循環モデル、潮汐を考慮した津波モデル(Int.J.Offshore Polar Eng., 2016)と海底堆積物・物質の巻き上げ推定モデル(The Sea under Human and Natural Impacts, in press)などを構築し、行政機関と共に沿岸域のレジリエンス強化を推進してきた。閉鎖性水域の環境改善に関して、石炭火力発電所で発生する石炭灰(Chem.Eng.J., 2014)、製鉄の過程で発生する鉄鋼スラグ(Environ.Sci.Technol., 2012)などをリサイクルした底質改善材の研究開発を産官学連携の元に推進している。また、渓流水や外洋の海水などの貧栄養水域におけるリン酸の環境動態を解明するために、世界最高感度に匹敵するリン酸イオンの超微量分析法を開発した(Chem.Geol., 2014)。

海域生物多様性研究分野では、センターの母体である臨海実験所時代から海藻類の基礎生物学的な研究や生物地理に関わる研究で優れた研究成果をあげてきており、藻類の系統分類や進化、生態の研究に特色がある。たとえば同分野教員らによるユーグレナの走光性光受容に関わる新規蛋白質複合体の構造と機能の解明(Nature, 2002)、紅藻類のクロロフィルdがシアノバクテリア由来であることを明らかにした研究(Science, 2004)、多細胞海藻類における初の全ゲノム解読・解析に成功した国際共同研究(Nature, 2010)などの科学的に重要な成果や、東日本大震災時の原子力発電所事故による海藻類の放射性物質汚染に関するモニタリング(J. Plant Res., 2014)や、大陸を越えて外来種となった海藻類の起源と拡散経路の推定に関する研究(Phycologia, 2006)など社会的に大きなインパクトをもつ研究成果をあげてきた。