藻の語り

シオミドロの章 v.2010.7. by かわい

シオミドロとは

 褐藻シオミドロEctocarpus siliculosusの全ゲノム塩基配列が解読され、2010年6月にその概要を報告する論文が出版されたa)。ここではその報告の概要と、褐藻類のモデル生物シオミドロの特徴と、シオミドロを対象に行われた研究の一部について紹介する。「シオミドロ」または「シオミドロ類」は「分枝糸状」と呼ばれる、枝分かれした単列の細胞糸からなる褐藻である。日本では大型になった個体を野外でみる機会はあまりないが、ゲノムプロジェクトの中心となったヨーロッパではかなり普通にみられる褐藻で、長さ30cmをこえることもまれではない。また、船体表面に付着して、船舶の航行を阻害する船体汚損生物 (fouling) としても代表的な種の一つである。

 「シオミドロ」とその近縁の種を含めた「シオミドロ類」は後述するように、全ゲノム解析に用いられた系統株(クローン)を含めて、その分類が現在でもかなり混乱した状況にある。このため一般にシオミドロ類というとシオミドロ属(genus Ectocarpus)に属する種を指す場合と、肉眼的にはシオミドロ属と区別が難しい分枝糸状の褐藻を総称的に指す場合がある。後者の場合、これらのシオミドロ属と近縁の属としてはピラエラ属、フェルドマニア属、イソブドウ属等があるが、シオミドロ属は葉緑体の形状が特徴的であることや真の「褐藻毛」をもたないことでこれらの属と区別することができるb)

 褐藻類は沿岸域の重要な生態系である藻場(もば)の主要な構成種である。藻場は陸上生態系における森林と同じように、ある空間(場所)に大型でかつ多年生(または一年のかなりの期間にわたって繁茂する)植物が存在することにより、その空間が立体的に、また長期にわたって安定的に生物の生息場として確保されることに特徴がある。このためには、その空間に大型で長い寿命を持った藻類が存在することが重要である。さて、大型の藻体を作る藻類(海藻類)としては、緑藻類、紅藻類、褐藻類という3つの大きな系統群があるが、このうち褐藻類が最も大型の藻体を作る。最大の褐藻類であるMacrocystis (マクロキスティス:いわゆるジャイアントケルプ) は水深15 m以上の海底から立ち上がり水面に広がって、その全長はしばしば50 mを越える。Macrocystisの含まれるコンブ目にはほかにもコンブ属Saccharina (+Laminaria)、チガイソ属 AlariaNereocystisなど全長10mを越える種を含む属が多く含まれる。また、このようなきわめて大型の藻体を作る褐藻類は他にもホンダワラ類Sargassum (Fucales)、ウルシグサ類 (ウルシグサ目Desmarestiales)、Saccorhiza 類(チロプテリス目 Tilopteridales)などがあり、極地から亜熱帯まで世界中の様々な海で藻場の構成種となっている。一方、その理由は明らかではないc)が、紅藻類、緑藻類ではこれほど大型になる種類はみられない。褐藻類が誕生したのは数億年前ころとされており、進化的にはそれより古い緑藻類、紅藻類ではこのようにきわめて大型化した種類が進化してこなかったことは興味深い。

なぜシオミドロがモデル生物として選ばれたか?

 1990年代後半には、ヒトゲノムプロジェクトが進み、またいくつかの真核モデル生物で全ゲノム情報が整備されはじめた。そこで、語り手を含む古くから褐藻類を研究材料としてきた研究者達は、遅ればせながら褐藻類でもモデル生物と呼べる種を定めて、情報を共有して集中的に研究をすすめ、あわよくばこれまで褐藻類を研究材料としてこなかった研究領域の研究者にも褐藻を研究してもらおうと言うことを考えた。これは、この時代には海藻類の系統株を大規模に保存・提供する公的は施設もなくd)、各研究者が自ら野外で採集し、実験に供するか、ごく少数の研究者が培養していた株を個人的なつながりで入手して、利用する以外に手段がなかった。この状況が、褐藻類の研究者が増えない(研究者コミュニティーが大きくならない)理由の一つであろうという、褐藻類研究者の反省に基づくものでもあった。このことは「褐藻」とう語を「海藻」と範囲を広げて置きかえてもいえることだが、緑藻、紅藻を実験生物とする研究者のコミュニティーと比べても、褐藻類研究者のコミュニティーは大きいものではなかった。実際、このような視点から1999年には植物学会で海藻類をモデル生物とするための提案を中心にしたシンポジウムを開催したが、この際の論点としては、1)実験室規模で単藻培養が容易であり、必要であれば無菌化も可能であること、2)生活史が明らかになっており、世代時間が短いこと、3)有性生殖が知られており、交雑実験、突然変異の誘導など遺伝学的な解析が可能であること、4)これまでに様々な生物学的、生化学的な知見が蓄積されていること、5)培養株が入手容易であること、6)形質転換などの分子生物学的な実験が行えること、などであった。その結果、依然としていくつかの困難はあったが、シオミドロがカヤモノリ Scytosiphon lomentaria とともにモデル生物として最も適していると結論した。しかし、シオミドロがモデル生物の候補としてあげられ、また最終的に最初のゲノム対象種となったいきさつには、単純にこれらの条件の比較による評価だけではなく、後述するDieter G. Müller氏のさまざまな業績と氏のもつ広い人脈が大きく影響した。

 シオミドロを対象とした生物学的な研究の多くはD.G. Müller氏個人と、彼の研究室に所属した、あるいは研究において交流のあった研究者の活動に基づいている。この全ゲノム塩基配列解析の報告も、Müller氏自身は著者に加わっていないが、その謝辞の筆頭に示されているように、氏のさまざまな研究活動の集成のひとつと行って良いだろう。そこで、かなり偏った視点からの記述になるが、語り手の知る範囲で関連する研究の歴史を紹介しよう。

 Müller氏のシオミドロを対象とした研究は、氏の学位論文にさかのぼり、褐藻類の概月(または概年)リズムを調べるための研究材料にひとつにシオミドロが選ばれたことがその直接の始まりである。その後、氏の研究上の興味は生活史や有性生殖に移り、教科書的な多くの成果が報告されるようになる。そもそも、ドイツ人の多くの海洋生物学者が研究フィールドとした地中海(この場合はイタリア・ナポリ)では、シオミドロはBerthold (1881) とOltmanns (1899) らにより19世紀前半に有性生殖が報告された種類であり、褐藻類の有性生殖に関しては最も初期の報告の一つである。その後、Hartmann (1925) のrelative sexuality 学説を巡る論争があり (Papenfuss 1935)、そのときにもシオミドロはその例の一つとして用いられた。この説(相対的雌雄性:有性生殖における雌雄性が絶対的なものではなく相手によって変化することがあるという考え方)の真偽を明らかにするため、Müller氏はきわめて精力的にナポリのサンプルを対象にシオミドロの有性生殖に関する実験を行った。はじめの1,2年の培養実験で生活史の概要は明らかになり、上述したように胞子体と配偶体が形態的に区別可能で、胞子体上に生じる単子嚢で減数分裂が起こることなどが確かめられた。しかし、なぜか肝心の有性生殖が確認されなかった(このことは後に野外で採集された配偶体が雄性個体ばかりであったためと明らかになる)。そこで、実験のスケールを拡大し、約200個体について雌雄の配偶体を識別し、有性生殖を確認することに成功したが (Müller 1964)、その過程で雌性配偶子からだけ放出される特有の芳香成分に気づき、化学分野の研究者との共同研究を経て、褐藻類で初めての性誘引物質(フェロモン:エクトカルペン)が同定されることになる。この成功を踏まえて、様々な褐藻類の有性生殖と性誘引物質に関わる研究が展開する一方、Müller氏の興味はシオミドロ類の多様性にも広がっていく。また、この過程で世界各地からシオミドロとそれと近縁の種の培養株が収集され、また交雑実験が行われた。

 この時期(1970-1995頃)に、Müller氏とその共同研究者により、シオミドロ類の有性生殖に伴う細胞と鞭毛の運動の解析 (Geller & Müller), 細胞構造と鞭毛微細構造に関わる研究 (Müller and Falk 1973, Katsaros et al. 1991)、シオミドロ類のベタイン脂質の含量と系統に関する研究 (Müller & Eichenberger 1995)、シオミドロの走光性に関わる光受容体・作用スペクトル (Kawai et al. 1990)、眼点の構造と機能 (Kreimer et al. 1991) など走光性メカニズムに関する研究の研究も行われ、さまざまな生物学的な知見が蓄積されている。

 その後、1980年代の終わり頃、米国人の藻類研究者Eric Henry氏がMüller氏の研究室にフンボルト財団フェローとして滞在し、シオミドロと近縁のFeldmanniaに寄生する藻類ウイルスを対象とした研究を行った。このことをきっかけに、研究室全体で褐藻類に寄生するウイルスに関する研究が開始し、Müller氏自身がニュージーランドからウイルスに感染したシオミドロを持ち帰り、これを対象とした一連の研究がスタートする(Stefan Lank, Micheel Klein, Hiroshi Kawai, Birgit Stache, Rolf Knippers, Ingo Maier, Suzane Wolf, Mario Sengco, Chrisine E. Schimid, Markus Kapp, Martin Brautigam, Michael Klein, Nicola Delaroqueほか担当)。これらのウイルスは生殖器官の形成時のみに発現し、また培養条件によっては発現しなかったり、宿主遺伝子に潜り込むものもあるなど、様々な実験を行う上で興味深い性質を持っていた。また、当時(そして現在でも)、褐藻類の形質転換の系が確立されておらず、ウイルスを用いることで遺伝子導入ができるかもしれないという期待もあった。その後、Boland博士のサポートもあり、これらのウイルスの全ゲノム解析が行われることになる。

なぜシオミドロが全ゲノム塩基配列解析の対象種として選ばれたか?

 生物資源としての重要性や、上述した沿岸生態系における役割から考えると、コンブ類、ヒバマタ類、ホンダワラ類などの藻場構成種の方が、ゲノム解析のターゲットとしてとして多くの人の興味を引くと考えられた。なかでも、経済的に非常に重要で、最も大型で複雑な形態をもつコンブ類を対象とすることは非常に魅力的であった。しかし、その一方でこれらの種類は、コンブ類は異形の世代交代を示し、有性生殖のコントロールを含め生活環の制御は容易だが、胞子体が大きいために実験室内での培養に困難が伴うほか、成熟に時間を要するという問題があった。一方、ヒバマタ目は大型のひとつの世代だけしか持たず、世代時間も長いことから培養実験に困難が伴う。また、これらの種は褐藻の中でも比較的ゲノムサイズが大きいグループであった。このため、研究上の戦略として、まず小型で、世代時間が短く、実験操作がより容易な種(モデル生物種)のうち、可能な限りゲノムサイズが小さい種を対象とした解析を先行して、その成果をふまえて大型種に関する研究を進めるという方針になった。この段階での対象として、Myriotrichia, ヨコジマノリ Striara, シオミドロ Ectocarpus等を詳しく比較し、最終的にシオミドロのペルー産の配偶体株を対象とすることとなった。そして、シオミドロのゲノム解析が終了した今、次のステップとしてコンブ目(コンブ属、Macrocystis属、ワカメなど)、ヒバマタ目(ヒバマタ)が次のターゲットと考えられている。

シオミドロの生活史と分類

 褐藻類の分類は、分子系統学的な知見が得られるようになった1980年代以前は、1930年代に提唱されたKylinの分類系の影響を強く受けて、藻体の構造と成長様式、生活史が高次の分類形質として最も重要なものとしてとらえられていた。この際、コンブ類やナガマツモ目のように著しく形態が異なる胞子体と配偶体の間で世代交代(異形世代交代)する分類群と異なり、胞子体、配偶体のいずれもが比較的単純な形状を示すシオミドロ類(シオミドロ目)は、アミジグサ目などと同様に同形世代交代をするととらえられることが多かった。これに対しては、培養下で詳細な生活史の研究を行っていたMüllerは早くからEctocarpusは胞子体と配偶体で形態が顕著に異なると指摘しており、そもそもシオミドロ類の藻体の形状が単純であることを考えると、これをその後も同形世代交代として扱ってきたことは適切ではなかっただろう。この生活史型の解釈は下で述べる目レベルの分類が混乱する一つの要因もなってきた。

 シオミドロ属ははじめ、現在よりはかなり広い分類群を含んでいた。それは、葉緑体の形状という形態学的な特徴がまだ一般的に用いられておらず、藻体の分枝の状態などが重要な形質であったためであり、現在の分類ではGiffordia, Feldmania, Hincksia などとして扱われているものの多くがEctocarpusに含められていた。また一部の研究者によって、形態学的な違いに基づいて数多くの新種が記載されたことからもその分類が混乱していた。これに対して、一部培養下における形態学的な可塑性の検証や数量生物学的な解析にも基づいた研究によって、ヨーロッパのシオミドロ類の分類を再検討した、Russelは、それまでに記載されていた多くの種をシノニムとして、Ectocarpus属はE. siliculosusE. fasciculatusの2種に整理することを提唱し、多くの研究者はこの考え方を受け入れた。また、Müllerも培養下における形態学的な可塑性の確認や、交雑実験の結果などから、基本的にRusselの考え方を受け入れた。これに対して、Müllerらの世界各地から集められた培養株を用いて最初の分子系統学的な解析を行った、Stache-Crainらはいくつかの独立したクレードを見いだしたが、基本的には2種に分類する考え方を踏襲した。

 全ゲノム解析に用いられた系統株 (Ectocarpus siliculosus strain Ec 32, KU-1372)は、暫定的にEctocarpus siliculosusと同定されているが、実はこのEctocarpus siliculosus-complexとでも呼ぶべき分類群に含まれており、タイプ種であるE. siliculosusとは異なる種である可能性が高い。この問題を解決すべく、全ゲノム株を選定、提供したAkira Peters博士を中心に現在、神戸大学、SAMSが協力してシオミドロ属の分類の再検討を行う共同研究を実施している。

 シオミドロ類の分類上の混乱は、科や目レベルの高次分類においてもみられる。すなわち、1990年代まではシオミドロ属を含むシオミドロ科は他のいくつかの分枝糸状の形態をもった分類群(例えばイソブドウ科など)と一緒にシオミドロ目として扱われてきており、一方、顕著な異形の世代交代を示す分類群は独立した目として取り扱われてきた。このうち、胞子体が配偶体より大型で、多列形成的な組織(柔組織)をつくるものとしてウイキョウモ目(ハバモドキ目)、単列形成的だが柔組織のような組織(偽柔組織)を作るものとしてナガマツモ目、これらとは逆に配偶体が胞子体より大型で柔組織を作るものとしてカヤモノリ目が区別されてきた。このうち、カヤモノリ目は細胞あたり1個だけの葉緑体を含んでおり、複数から多数の葉緑体を含むシオミドロ目、ウイキョウモ目、ナガマツモ目とは明らかに異なっており(これらは何れもピレノイドと呼ばれる付随する構造も持っている)、この特徴が目を定義する形質とされた。このように、これらの目の形態学的な分類形質の定義は明確だが、実際には多列形成的か単列形成的かの区別が難しい種があり、そもそもシオミドロ類も明確な同形世代交代とは言いがたいことから、以前からその分類には疑問が出されていた。その後、分子系統解析によってカヤモノリ目は単系統になるものの、そのほかの3つの目は単系統性を示さないことが示されたことから、これら全体をシオミドロ目として取り扱い、それ以前に目として扱っていたものを科のレベルで取り扱うことが提唱されている。しかし、これもそれぞれの科の単系統性が明らかではないことから根本的な解決とはいえず、上述したように依然として混乱した状態にある。

注記

a) Cock, J.M., Sterck, L., Rouze, P., Scornet, D., Allen A.E., Amoutzias, G., Anthouard, V., Artiguenave, F., Aury, J.M., Badger, J.H., Beszteri, B., Billiau, K., Bonnet, E., Bothwell, J.H.F., Bowler, C., Boyen, C., Brownlee, C., Carrano, C.J., Charrier, B., Cho, G.Y., Coelho, S.M., Collen, J., Corre, E., Delage, L., Delaroque, N., Dittami, S.M., Doulbeau, S., Elias, M., Farnham, G., Gachon, C.M.M, Gschloessl, B., Heesch, S., Jabbari, K., Jubin, C., Kawai, H., Kimura, K., Kloareg, B., Küpper, F.C., Lang, D., Bail, A.L., Leblanc, C., Lerouge, P., Lohr, M., Lopez, P.J., Martens, C., Maumus, F., Michel, G., Miranda-Saavedra, D., Morales, J., Moreau, H., Motomura, T., Nagasato, C., Napoli, C.A., Nelson, D.R., Nyvall-Collen, P., Peters, A.F., Pommier, C., Potin, P., Poulain, J., Quesneville, H., Read, B., Rensing, S.A., Ritter, A., Rousvoal, S., Samanta, M., Samson, G., Schroeder, D.C., Segurens, B., Strittmatter, M., Tonon, T., Tregear, J., Valentin, K., von Dassow, P., Yamagishi, T., Van de Peer, Y., Wincker, P. 2010. The Ectocarpus genome and the independent evolution of multicellularity in the brown algae. Nature 465: 617-621.

b) シオミドロ属の葉緑体は、栄養細胞では一つの細胞あたり数個から多数含まれており、それぞれは通常「リボン状」と呼ばれる細長い形状をしており、それぞれにピレノイドと呼ばれる突起状の構造を持っている。一方、シオミドロ属と近縁の属の多くは、同じく細胞あたり数個から多数の葉緑体を含んでいるがそれぞれは円盤状か短い板状で、シオミドロ属のそれとは異なる。また、シオミドロ属と近縁の属では真の褐藻毛(栄養細胞が、特殊化して直線的に細長くなり、また葉緑体が小型化するとともに光合成色素を失い白色化した細胞列をさすが、細胞列の基部付近に活発に分裂する部分:成長帯を持つものを真の褐藻毛として、成長帯を持たないものと区別する)を持つものも見られる。

c) 褐藻類がきわめて大型化して繁栄することができた理由として、気胞(浮き袋)を発達させることで、藻体を水中で立ち上がらせることを可能にしたことが考えられる。すなわち、これによって藻体が大型化し、より深いところから生える(着生する)ようになっても、光合成のための光が十分得られる水面近くに到達することができるようになった。発達した気胞はコンブ目、ヒバマタ目などでみられるが、これらはいずれもきわめて大型の藻体を形成するグループであり、また進化的にも新しいグループである。一方、系統的に古い(分子系統樹の根元近くで分岐するグループ:例えばアミジグサ類など)は単純な形状のものが多い。また、褐藻類の大型化と繁栄をもたらした要因として、生殖細胞の高い運動能力と性誘引物質(性フェロモン)を介した効率的な有性生殖が考えられる。

d) 現時点で、神戸大学海藻類系統株コレクション (KU-MACC)、Culture Collection of Algae and Protozoa (CCAP)、University of Texas Culture Collection (UTEX)などが100種を越える海藻類を保存・提供している。このうち、KU-MACCとCCAPはそのコレクションにD.G. Müllerのコレクションを含んでおり、200を越えるEctocarpusの株が入手可能である。また、全ゲノム解析に用いられた株はRoscoff Culture Collectionでも提供されている。

e) 細胞分裂時にそれぞれの細胞が二つの分裂軸で分裂することにより二次元的な(平面的)な組織を生じるものを多列形成と呼び、この様な組織を柔組織と呼ぶ。一方、分裂様式は基本的に分枝糸状の藻体と変わらないが(側面に枝を生じることはあるが、基本的に伸張分裂のための軸は一つ)、生じた細胞糸が粘質などの細胞外物質によって密着し、外観上柔組織と似た組織を作るものを示す。具体的にはいわゆるモズク類(モズク、オキナワモズクなど)がこれにあたる。

附記

シオミドロEctocarpus siliculosusを用いた主な研究

分類, 生活史:Oltmanns 1899; Hartmann 1925, 1934, 1937; Knight 1931; Schussinig and Kothbauer 1934; Papenfuss 1935; Kormann 1959; Müller 1964, 1966, 1967, 1970, 1972, 1975, 1976, 1977, Russell 1966; Ravanko 1970; Bolton 1983; Müller and Kawai 1991; Stache-Crain et al. 1997.

生態:Kiirikki and Blomster 1996; Kiirikki and Lehvo 1997.

生理:Thomas and Kirst 1991; Chen et al. 2005.

交雑実験:Müller 1976, 1979, 1988; Stache 1990; Peters et al. 2004

形態,微細構造,細胞骨格:Baker and Evans 1973; Müller and Falk 1973; Kreimer et al. 1991, Katsaros, et al. 1991, 1996; Maier 1997a, 1997b; Katsaros et al. 2004,

染色体:Cole 1967; Müller 1967.

走光性:Kawai et al. 1990; Kreimer et al. 1991.

走化性(性フェロモン):Müller 1968, 1976; Geller and Müller 1981; Müller and Gassman 1980; Boland et al. 1984; Müller and Schmid 1988; Amsler et al. 1999; Boland et al. 2005

光合成, サーカディアンリズム:Schmid and Dring 1992, 1993, 1996; Schmid et al. 1992; Schmid 1998.

鞭毛運動:Müller 1978; Geller and Müller 1981; Müller and Falk 1973; Maier and Calenberg 1997.

金属イオン耐性:Russell and Norris 1970; Hall et al. 1979; Heerden et al. 1997; Winter et al. 2005

生化学, 生合成:Eichenbeger 1994; Makewicz et al. 1997; Müller et al. 1997.

ウイルス: Müller et al. 1990, Müller 1991, 1992, 1996; Knippers 1993, Lankaet al. 1993, Brautigem et al. 1995; Klein et al. 1994, 1995; Müller et al. 1990, 1992, 1993, 1996, 1998. Kapp 1998; Sengco et al. 1996; Maier and Müller 1998; Delaroque et al. 1999, 2001; Mougel and Zhulin 2001.

遺伝子構造, コドン:Ehara et al. 1999.

遺伝学: Peters et al. 2008; Bail et al. 2008.

モデル提言: Peters et al. 2004.

ゲノム解析:Cock et al. 2010.

Ectocarpus siliculosusゲノム解読株

神戸大学 海藻類系統株コレクション(KU-MACC)では、Ectocarpus siliculosusゲノム解読株(KU-1372)の分譲を行っています。詳しくはこちらをご参照ください。