Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第38回インターゲノミクスセミナー
「植物やその組織における網羅的解析とその応用」

講演タイトルと講演者

「イネのゲノム情報を利用した有用遺伝子の同定」
矢野 憲司 先生(東京大学 農学生命科学研究科)
「レーザーマイクロダイセクションを利用した植物組織特異的ストレス応答性遺伝子の発現解析」
中園 幹生 先生(名古屋大学 生命農学研究科)

世話人より

インターゲノミクスセミナーが、平成29年1月20日(金)「植物やその組織における網羅的解析とその応用」というテーマで開催されました。今回は、オミックスと言われている網羅的解析を念頭におき最新の研究に取り組まれている先生方に話題提供を御願いしました。

矢野先生は主にゲノミクスを念頭にお呼びいたしました。イネ集団を使って次世代シークエンサーで全ゲノム配列を決定し、一方で形質を調査した結果も合わせて遺伝解析を行う、ゲノムワイドアソシエーション解析についてご紹介くださいました。新規な遺伝子も同定でき、利点と欠点もお話いただきました。欠点についてはその原因ならびに欠点を克服する技術も開発されました。学生がまだ馴染みのないゲノムワイドアソシエーション解析をわかりやすく説明いただき、今後参加者にとって参考になるセミナーであったと思います。

中園先生は主に発現解析、トランスクリプトームを念頭にお呼びいたしました。まず植物におけるレーザーマイクロダイセクションの開発の経緯を、動物のケースを比較しながら丁寧にお話いただきました。植物での御苦労がよくわかりました。微細な組織、さらに1細胞も単離できるようになってきたことは、研究分野によってはこれからの新展開が期待できます。次に、この技術を使った事例をイネやムギ類、トウモロコシについてご紹介いただき、他の植物への応用展開が見えてきたと思いました。

講演者からのコメント

矢野 先生

 この度は第38回インターゲノミクスセミナー(IG公開セミナー)でお話しする貴重な機会を下さり、誠にありがとうございました。今回は、ゲノムワイドアソシエーション解析(GWAS)を用いてイネの農業形質に関わる遺伝子を同定する試みについてお話させて頂きました。質疑応答では、多くの方々からご質問やご意見を頂き、これまで私が行ったきた研究を見直す良い機会となりました。特にGWASにおける偽陽性の対処法について多くのご質問を頂きましたが、汎用的な解決方法はまだ確立していないため、今後取り組むべき課題であると再認識致しました。また、レーザーマイクロダイセクション法の先駆者である中園先生の最先端の研究のお話を拝聴し、とても刺激を受けました。今後は、今回のIG公開セミナーで勉強させて頂いた事を活かし、より一層作物の育種に貢献できるような研究に精進して参りたいと思います。今後ともご高諠を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

中園 先生

 この度は、インターゲノミクスセミナーで研究紹介をする機会を与えていただき、どうもありがとうございました。多くの先生方、学生さんにご参加いただき、また、活発な議論をしていただき、私自身がとても良い刺激を受けました。懇親会では先生方と親睦を深めることができた上に、様々な視点からのご意見・ご質問をいただき、大変有意義な情報交換の場となりました。セミナーでご紹介したレーザーマイクロダイセクションによる組織・細胞単離法を試みたいという方がおられたら、喜んで協力させていただきますので、ご連絡をください。今回参加させていただき、インターゲノミクスセミナーは様々な専門分野の研究者が集まり、多様なテーマについて議論や情報交換ができるすばらしい会であると思いました。本セミナーのますますのご発展を心よりお祈りいたします。

(世話人:山崎将紀)