Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第48回インターゲノミクスセミナー
「微生物と植物の相互作用 敵か味方か?」

講演タイトルと講演者

「絶対寄生菌の感染戦略と栄養獲得」
八丈野 孝 先生(愛媛大学大学院 農学研究科)
「糸状菌と細菌群からなる植物根圏微生物叢の貧栄養環境下における役割」
晝間 敬 先生(奈良先端科学技術大学院大学)

世話人より

第48回インターゲノミクスセミナーが、令和元年10月25日(金)15:10より農学部B棟B403教室で開催されました。今年度よりポスドクと大学院生からなる若手部門を設け、若手部門から講師の先生をお呼びするということをしました。今回のセミナーは、その第1回目となります。セミナーのテーマは、「微生物と植物の相互作用 敵か味方か?」ということで、八丈野先生(愛媛大学農学研究科)と晝間先生(奈良先端大学院大学)をお招きして、ご講演をいただきました。

八丈野先生からは、絶対寄生菌であるオオムギうどんこ病菌の病原性と感染成立に役割を果たすエフェクタータンパク質の研究について紹介されました。オオムギうどんこ病菌は、植物の感染成立の成否が、自身の生死に直結します。その生死を決める刻に分泌されるタンパク質に着目し、いくつかの興味深いエフェクター候補を同定し、興味深い機能を明らかにされました。エフェクター研究が、植物病原菌の感染生理だけでなく、植物の未知なる機能解明へつながる可能性を示唆するわくわくするようなお話でした。

晝間先生は、植物根圏微生物叢の研究において、微生物叢のカタログ化研究と一線を画し、微生物叢と宿主または微生物間の相互作用の分子機構に迫る先進的な仕事を紹介されました。病原菌が多い炭疽病菌属の中で、土壌のリン欠乏条件下で植物にリン供給することで共生糸状菌となった炭疽病菌がいて、その菌の存在が、植物根圏細菌叢の性質も変えてしまうという驚くべきお話でした。生理学的視点だけでなく、進化的な視点から共生糸状菌を見ることで、共生糸状菌のもつ未知の現象を捉え、分子機構の解明に繋がったというのはとても印象的でした。

講演者からのコメント

八丈野 先生

この度はインターゲノミクスセミナーで発表する機会を与えて頂きありがとうございました。オオムギうどんこ病菌の研究を始めてまだ6年ほどですが、私なりに感じているこの菌の面白さが伝わればと思いお話しさせて頂きました。人間はつい植物の味方になって考えがちですが、うどんこ菌も限られたチャンスをものにして必死に生きようとしています。いかにして成功裏に感染して栄養を得るか、宿主に適応すべく高度に進化してきたと考えられます。その生物間相互作用の仕組みを理解するためにはあらゆる方面からの視点が必要となってきますが、今回のように多様な研究者の方々からのご意見を頂けて非常に有意義な時間を過ごさせて頂きました。研究を進める際にお力をお借りすることもあるかと思いますがどうぞよろしくお願いします。

晝間 先生

この度はインターゲノミクスセミナーにお招きいただき、ありがとうございました。多様な分野の研究者の方々の前で私どもの研究をご紹介できたこと、また、研究のさらなる発展に寄与する貴重なディスカッションをさせていただけたことに感謝申し上げます。良い研究をしていく上では、自身が専門とする分野だけはなく、多様な研究者との議論が必要不可欠だと思います。インターゲノミクスは、まさにそういった議論を活性化させる上で効果的なセミナーであると自身が発表させていただき実感いたしました。今後とも、アクティブな交流をお願いできれば幸いです。ありがとうございました。

(世話人:足助 総一郎、吉田 健太郎)