Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第50回インターゲノミクスセミナー
「植物における「性」と「種の壁」を司る分子とその進化」

講演タイトルと講演者

「果樹ゲノムが紐解く「植物の性」の成立と進化」
赤木 剛士 先生(岡山大学大学院 環境生命科学研究科)
「花粉管誘導から解き明かす種の壁の実態とマスター制御因子」
東山 哲也 先生(東京大学大学院 理学系研究科/名古屋大学ITbM)

世話人より

インターゲノミクスセミナーが2006年から始まり、今回で記念すべき50回目となりました。

赤木先生から、植物の性決定因子を司る遺伝子の発見とその進化についてご講演していただきました。数学の四色問題と同じく、カキから植物で初めて性決定の遺伝子(雄側と雌側両方)を単離したのは、elephantな手法(elegantの逆の意味)と話されていましたが、ゲノム情報も遺伝マーカーもほとんどない樹木のカキから、短期間で単離されたのは、やはりelegantかつsmartであると言わざるを得ません。続けてキウイフルーツの性決定遺伝子を単離されました。これは、キウイフルーツ栽培にも革新をもたらすことであり、基礎研究が農業の発展に貢献する一つのロールモデルだと思います。世話人としては、植物の性の進化の話が一番面白かったです。性決定遺伝子がもたらす表現型が、既に性決定遺伝子になる前から備わっているというところが、これまでの「植物における性の進化」の定説を覆す結果であり、衝撃でした。

東山先生は11年前の第7回インターゲノミクスでご講演いただきましたが(そのときのタイトルは「花粉管ガイダンス分子から見る細胞間シグナリングと隔離障壁」)、もう一度花粉管誘導の最新成果を神戸大でご披露いただきたいと思い、お招きいたしました。まず、この11年の振り返りと化学や工学と異分野融合研究をご紹介いただきました。また、生きたまま撮影するライブイメージング技術も進んでいること、花粉管の動きがよくわかりました。それまでに相当な準備や実験がされており、東山先生からよく「涙ぐましい努力」という御言葉が印象的でした。新しい成果として、前回ご披露いただいたLURE遺伝子についての新たな結果、花粉管誘導や活性化に関わる物質を紹介いただきました。その際に新発見の経緯などもお話ししていただき、学生も自身の研究の参考になったと思います。

講演者からのコメント

赤木 先生

この度はインタージェノミクスセミナーにお招きいただきまして誠にありがとうございました。カキやキウイフルーツを使った植物の性決定研究を始めて7年ほど経ちますが、何かが見つかったような気がして、まだ分からないことだらけです。セミナーでは、その謎も含めてお伝えさせて頂きましたが、皆様の迅速な理解と鋭い質問で、私の方が多く学ばせて頂いたような気がしております。今後とも活発な交流を続けさせて頂けましたら幸いです

東山 先生

第50回のインターゲノミクスセミナー、おめでとうございました!
この記念すべき回に、第7回に続いてお招き頂きまして、ありがとうございました。第7回は、もう11年前のことです。誘引物質にまだLUREペプチドの名前がついていなかった頃です。第7回で色々な御意見やヒントを頂き、それらを活かして進んできた様子が伝わったようでしたら幸いです。以前の自分の感想を見ますと、セミナー自体も夜の会も、当時から熱気あふれる会であったことが感じられます。このような熱気あふれる会を第50回まで続けてこられたことに、敬意を表します。今回一緒に講演した赤木さんや、若手スタッフの皆さまの新しい力を頼もしく感じるなか、当時からの皆さまに囲まれて過ごせて、あらためて貴重な会だと強く思いました。インターゲノミクスに関する理解は、第50回のセミナーを迎えるまでに、大きく進んだと思います。知見やテクノロジーが大きく進んだことで、新たな疑問に挑むチャンスも生まれています。会の益々の発展を、心から期待しています!

(世話人:吉田 健太郎、山崎 将紀)