Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第51回インターゲノミクスセミナー
「コロナウイルスだけがウイルスじゃないのです」

講演タイトルと講演者

「家畜に病気を起こすアルボウイルス」
白藤 浩明 先生(農研機構 動物衛生研究部門)

世話人より

昨年度50回目を迎え、100回目を目指して再スタートをした2020年度最初のセミナーをコロナ禍の中、なんとか開催することができました。
今回はコロナ対策のため、対面とオンラインでの開催になりました。on site 21名、online 13名の31名の参加者が集まり、途中通信トラブルが起きたものの、学生さんからの質疑応答もあり、盛況な会になりました。

農研機構・動物衛生部門の白藤先生を講師としてお招きし、日本の家畜に重篤な症状を与えるアルボウイルスについて講演いただきました。現在パンデミックが起きているコロナウイルスと違い、節足動物の吸血行動によって感染が拡大するウイルス(アルボウイルス)は、節足動物の行動如何によって流行が決定されるため、流行の予想が困難です。家畜のアルボウイルス感染症は、毎年流行するわけでなく、また、人には感染しないためにニュースになることはありません。しかし、一旦流行するとか畜産業に大打撃を与える可能性があります。この様なアルボウイルスについて、臨床症状や国内での発生状況を紹介いただきました。また、日本で感染症を引き起こしているアルボウイルスのいくつかは、国内に常在しているのではなく、東アジアや東南アジアから下層ジェット気流にのって飛んできた節足動物によって持ち込まれている可能性など、非常に面白い話題が満載でした。さらに、動物衛生部門でどの様に国内の家畜の感染症発生に対応しているかなどの実際の業務についても少しご紹介いただきました。世話人としては、シャーレやフラスコではなく試験管で回転しながら野外試料からウイルスを分離しているというのが衝撃でした。

講演者からのコメント

白藤 先生

この度は、第51回インターゲノミクスセミナーにて講演の機会を頂きまして、ありがとうございました。講演の中でも触れましたが、私たちのグループが行っている仕事は、アルボウイルスを分離しては性状解析をするという内容が大きな部分を占めており、研究というよりもむしろ作業に近いものですので、異分野の方々や学生の方々にどこまで興味を持って頂けるか、正直不安でした。しかし、自分が普段よく目にするものであっても、他の方々には新しい情報と思われる内容を多く紹介したところ、多様な反応が返ってきて、安心するとともに有り難く感じました。ヒトに病気を起こすアルボウイルスと比較しても、家畜に病気を起こすアルボウイルスでは研究人口は決して大きいとはいえず、発病機序の解明や、予防法や治療法の開発が十分に進んでいないウイルスも多く残されています。そのため、さまざまな分野の方々の力をお借りして研究を進めていくことが必要と日々感じています。その意味でも、このような機会を通じてさまざまな方々と情報を共有し、ご指摘やご意見を頂くことで新しい視点や考え方を得ることは、非常に大切なことだと感じました。また、セミナーの後にも参加された先生方といろいろなお話をさせて頂いて、非常に楽しい時間を過ごさせて頂きました。重ねて感謝申し上げます。ありがとうございました。本会のさらなる発展を祈念しております。

(世話人:松尾 栄子)