Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第52回インターゲノミクスセミナー
「ゲノム編集でできた作物開発とその申請や普及について考える」

講演タイトルと講演者

「ゲノム編集技術による機能性トマトの開発と未来」
江面 浩 先生(筑波大学生命環境系・つくば機能植物イノベーション研究センター)

世話人より

ゲノム編集で開発されたトマトが新聞報道で話題となっていましたので、開発の中心である江面浩先生にお願いし、オンライン講演をご快諾いただきました。ゲノム編集は2020年ノーベル化学賞を受賞した技術になります。貴重な機会なので、神戸大学内の学部生や大学院生だけでなく、他大学の教職員や学生、農研機構や企業に所属される研究者も参加し65名が聴講しました。
多様な参加者だったこともあり、トマトを使ったゲノム編集開発へ至った切っ掛けや経緯をお話しいただき、ゲノム編集技術の内容や高濃度GABA(ガンマーアミノ酪酸)蓄積トマトの開発をご紹介いただきました。次にゲノム編集トマトが認められるために安全性の評価や関係省庁との時間をかけた手厚い交渉、知的財産や新品種としての取り扱い、社会受容への広報活動や最近普及に努めておられるトマト苗の配布の現状を教えていただきました。植物を使った先端の科学技術をなんとかして、社会還元したいという江面先生のお考えが熱く語られました。
質疑応答も活発に行われ、大学院生からも多くの質問もあり、これからのゲノム編集技術やできた作物への理解が深まったと私は考えています。

講演者からのコメント

江面 先生

この度は、第52回インターゲノミクスセミナーにお招きいただきありがとうございました。今回のセミナーでは、機能性を高めたゲノム編集トマトの開発経緯と社会実装へ向けてのお話をさせていただきました。この成果はCRISPR/Cas9を使い開発し・商業利用される世界初のゲノム編集作物ということで、我が国だけでなく、世界中で話題になっています。講演では、この開発が単にゲノム編集技術ができたから可能になったのではなく、実はそれに至る、10年以上の基礎研究基盤(ターゲット遺伝子の基礎研究など)と開発したゲノム編集を世に出したいという関係者の熱意とチームワークがあってこそ可能になったことをご理解いただけたら幸いです。このインターゲノミクスセミナーは、まさにその様なチームワークを作り上げるのに重要なものであると感じました。本セミナーが起点となってその様なチームができ、植物科学の成果を世に出す力となっていくことを祈念して、セミナーにお招きいただいたお礼の言葉としたいと思います。

(世話人:Rym, Fekih, 山崎 将紀)