(7)Streptococcus gallolyticusのMLST法の開発




 Streptococcus gallolyticusは通常、哺乳動物の腸管内で正常細菌叢を構成している連鎖球菌の一種である。その一方で、本菌は髄膜炎や敗血症を引き起こす人獣共通感染症起因菌として、危惧されている。しかし、これまでに、本菌の疫学的研究はほとんどなされていない。本菌の疫学的研究を進めるにあたって、我々は世界規模での疫学的研究を可能にする手法であるMLST(MultiLocus Sequence Typing)法に着目した。MLST法は複数の生存に必須であるハウスキーピング遺伝子の塩基配列の違いを基に、菌株のタイプ分けを行う手法である。S. gallolyticusのMLST法はまだ報告されていないため、我々はその開発を試みた。
 様々な由来のS. gallolyticus株に対して、MLST解析を実施したところ、病気のヒトから分離された菌株と健康な動物から分離された菌株が同一クローンであるという結果が得られたことから、本菌は人獣共通の日和見感染症起因菌である可能性が高いと考えられた。また、同一のヒト臨床分離株が異なる年代に分離されていたことから、長い間、環境に適応して、生存し続け、現在もヒトに病気を引き起こしている危険株が存在していることが明らかとなった。さらに、このMLST法によって、S. gallolyticusの3亜種を分類できる可能性も見出された。本研究は今後のS. gallolyticusの疫学的研究に非常に有用であると考えられる。  


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