Bifidobacterium longumのレクチンタイピング

 個々の宿主はその腸内には常在している固有のビフィズス菌株群が定着しており、市販プロバイオティクス製品などからの外来のビフィズス菌株は腸管 を通過しているにすぎないと考えられている。しかし、その株レベルでの詳細な定着メカニズムは未だ解明されていない。そこで本研究では菌体表層糖鎖 と腸管レクチンの相互作用が自己の菌株の定着メカニズムに関係していると考え、それを検証するために具体的に製品由来株とヒト糞便由来株での表層糖 鎖構造の違いや個々人の腸内に定着していると思われる菌株表層糖鎖構造の異同についてレクチンブロッティング法を用いて菌株の表層糖鎖抗原性の型別 を行った。
 製品由来株と人糞便由来株間では同じレクチンタイプに属するものがなかったことから、製品由来株とヒト糞便由来株では表層糖鎖構造が異なることが 示唆された。同じ宿主由来の分離時期の異なる株同士でも同じレクチン型が観察されたことから個々人に定着している菌株の表層糖鎖構造は類似している ことが示唆された。兄弟・双子関係にあるヒトから分離された株ではレクチン型が似通っていたことから、親子、兄弟・双子間では定着している株の表層 糖鎖抗原が類似している可能性があることが示唆された。また、同一の宿主から分離された株において同じレクチン型であったにもかかわらず系統的には 相同性が低い株が存在したが、宿主は菌株のDNAの系統性を認識しているのではなく、表層の糖鎖抗原性を認識して自己の株であると判断し、定着を許し ていることが推測される。以上のことから固有ビフィズス菌株は定着でき、外来のビフィズス菌株は排除されるメカニズムとして宿主は自分の固有菌の表 層糖鎖構造を認識することにより外来菌と区別し、それにより固有菌の定着のみ許していることが推測される。

 
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