食品検体からの病原性腸炎ビブリオの迅速検出法の開発

 食品検体から、病原性腸炎ビブリオの生菌のみを迅速に検出する方法を開発した。本法は以下の2つの原理を組み合わせて考案された。

1) 運動性を保有する腸炎ビブリオの生菌のみが軟寒天でコーティングされたフィルターを通過できる。
2) 病原性腸炎ビブリオから溶出した遊離のDNAは、前処理としてDNase処理を行うことで分解されるため遺伝子検査では検出されない。

 以上の原理を検証した上で、食品サンプル19検体、5品目に実験的に、病原性腸炎ビブリオの病原因子である耐熱性溶血毒遺伝子(tdh)、と類縁溶血毒遺伝子(trh)を保有する腸炎ビブリオを添加し、本法の実用性を検討したところ、 全ての食品サンプルにおいて、添加した菌と同様のtdhtrh遺伝子が検出された。本法は、生菌のみを選択的に培養することが可能となったため、これまでの遺伝子検査の問題点であった死菌DNAによる偽陽性がなくなった。 このことによって病原遺伝子を検出し病原性のある腸炎ビブリオのみを検出可能となった。また、従来の公定法と比較して検出時間も4日間から2日間に短縮され、より迅速に目的とする菌を検出可能となった。 更に、本法は菌を食品検体から直接検出するのではなく、一度増菌することから、初発の菌数が少ない場合でも検出が可能であった。実際の食品中では菌数が少ないことも想定されることから、本法は検出感度の点から見ても有用であると考えられる。 本法は運動性を保有していれば、他の食中毒を起こす細菌の検出においても応用可能であると考えられる。



 
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