病鶏および健康鶏より分離された大腸菌株の分子疫学的研究

鶏に対して病原性を示す鶏病原性大腸菌(APEC)の病原性を決定する遺伝子を特定するため、病鶏病変部由来菌株群と健康鶏糞便由来菌株群両者に対してPFGEやARDRAによる系統解析を行った。PFGEによる解析では病鶏由来株に特徴的な系統は認められなかったが、他方、ARDRA解析の結果からは鶏に対する病原因子が過去のある時点で水平伝播によりに伝わった可能性が示唆された。そこで、病原因子を明らかにするため、PCRにより病原性に関連すると報告されている遺伝子について解析を行ったところ、plasmid上に存在するとされている遺伝子がいずれも病鶏由来株で保有率が高く、中でもColV plasmid上に存在するcol Vについて最も顕著な差が認められた。したがって、APECがplasmidに感受性の高い株から系統的に出現した事が示唆されたが、col VがコードするColicin Vは病原性に関与しない事が報告されている事から、col V以外に病原性に大きく関与する遺伝子がColV plasmid上に存在する事が示唆された。

 
戻る