宿主由来の異なるBifidobacterium longum株刺激による マクロファージのサイトカイン産生に関する研究

 由来の異なるBifidobacterium longum株の免疫系に及ぼす影響はそれぞれ異なっているかどうかを調べるため、先ずUVで不活性化した26株(製品由来株6株、ヒト糞便由来株19株、JCM株1株)のB. longum菌株をヒト単球様細胞のU937細胞と共培養し、それぞれの菌株のTNF-α、IL-10産生の誘導性を調べた。また、それらのサイトカインの誘導性とレクチンタイピング法により調べられた菌体表層糖鎖プロファイル(レクチン型)の間に相関が見られるかどうかも調べた。
 その結果、異なる個人の糞便由来のビフィズス菌は、U937細胞に対して異なるサイトカインの誘導性を示した。また、このとき誘導したサイトカインの産生量から炎症応答の指標であるTNF-α/IL-10の比率を計算したところ、製品由来株は一株を除き非常に近い値を示したが、ヒト糞便由来のビフィズス菌は様々な数値を示した。このことから、異なる個人の糞便由来のビフィズス菌はその後誘導する免疫応答においても、製品由来株に比べ多様であることが示唆された。
 TNF-α/IL-10の値とレクチンタイピング法により調べたれたレクチン型との関連を調べたところ、同じレクチン型に分類された菌株は全く同じ、もしくは非常に近いTNF-α/IL-10の値を示した。しかし、逆にTNF-α/IL-10が近い値を示した菌株にレクチン型は必ずしも一致しなかった。
 次に、本研究ではB. longum株2株を用いて、ビフィズス菌をUV不活性化のほか、加熱処理、破砕処理、DNA抽出を行い、どの菌体構成成分がサイトカインの産生誘導に関わっているかも調べた。
 その結果、破砕処理を行ったサンプルにおいて最も高いサイトカイン誘導が見られる場合が多かった。UV不活性化サンプルと加熱処理サンプルのサイトカインの誘導性は同程度で、DNAによるサイトカインの誘導は低かった。このことから、DNA以外の菌体内の構成成分や細胞質、細胞壁に含まれる多糖などがサイトカインの誘導に関わる可能性が示された。また、糖鎖などの耐熱性の成分も一部サイトカインの誘導に関わっているため、レクチンタイピング法による分類とサイトカインの誘導性に一部相関が見られたのではないかと推測された。
 以上より、異なる個人の糞便由来のビフィズス菌は免疫系からのサイトカインの誘導性が異なっていて、そのサイトカインの誘導には一部菌体表層に発現している糖鎖構造が関与していることが明らかとなった。

 
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