好塩性細菌を使ったアンモニア脱臭装置の開発に資する研究

 現在、環境問題意識の高まりにともない、家畜の糞尿を堆肥化し、その豊富な有機質を土壌改良材として有効に活用し ようという動きが積極的に進められている。また家庭から出される生ゴミも堆肥化によってガーデニングなどの肥料へと リサイクルすることを考え、複数の電気機器メーカーから家庭用生ゴミ処理装置が発売されている。この堆肥化の過程で 好気的発酵によって悪臭物質のアンモニアが発生することが作業上最大の問題であり、生ゴミ処理装置の普及を妨げる要 因のひとつとなっている。この物質を微生物によって除去する方法として、硝化菌および脱窒菌を組み合わせて利用する ものが一般的で多く研究がなされている。硝化・脱窒とは、アンモニアを前者の過程で酸化し、次いで後者の過程で還元 することにより最終的に無害である窒素ガスに変換する過程であり、上述の細菌がそれぞれの反応を担当する。これらの 多くは独立栄養細菌で、一般に増殖速度が遅く極めて限定された環境を要求するため、その扱いが難しい。そこで我々は 、アンモニアを窒素源として微生物自らの菌体を構成するたんぱく質に転換(同化)することによって除去できるのでは ないかということを着想した。1999年、夏、我々はアンモニアを単一の窒素源として資化でき、かつ8%の高塩濃度 下(海水の塩濃度は約3%)で旺盛に増殖する数種の好塩性細菌を海水から分離することに成功した。好塩性細菌に着目 したのは、高塩濃度下では脱臭装置に雑菌が混入しても増殖できない為、安定したパフォーマンスが期待できると考えた からである。  さらに、我々はガス分散型曝気法による「微生物脱臭装置」を独自に組み上げ、これらの細菌を用いてパフォーマンスの 測定を行っている。2001年春には、オーストラリアの塩湖から採取したサンプルからも数種の好塩性細菌を分離 >することに成功し、今後の測定結果が待たれるところである。

卒業研究要約

 海水および鹹水より分離した好塩性のアンモニア資化性菌を用いて、独自に組み上げたアンモニア脱臭装置にてアンモニア脱 臭能の測定を行った。最も優れたアンモニア脱臭能を示したのは、Vibrio alginolyticus AKO101を用い炭素源をスクロースと した時であり、2,100 ml/分、濃度約200 ppmのアンモニアを脱臭装置へ流入させた時、除去率が75%を下回るまでに要した 時間は24日間であった。なお、このアンモニア除去率の低下はスクロースを再添加することによって解消された。しかしながら 本アンモニア脱臭装置は、培養液に多量のスクロースを添加しなければならない点、また菌体から排出される不溶性タンパク質 の沈殿をどのように処理するかなど、その実用性において今後検討すべき問題があることも確認された。

 
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