前川敬祐研究内容 <meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=Shift_JIS">

Streptococcus gallolyticusの為のMLST[multilocus sequence typing]法の開発

 Streptococcus gallolyticusは連鎖球菌の一種であり、3つの亜種に分類されている。本菌は通常、哺乳動物の腸管で正常細菌叢を構成しているが、 ヒトや家畜に 心内膜炎や敗血症を引き起こすこともあり、人獣共通感染症起因菌として危惧されている。近年、S. gallolyticus感染症は世界各地で 報告されているが、本菌の疫学研究はほとんど行われていない。そこで、世界規模での疫学研究を可能にする MLST(multilocus sequence typing)法に着目し、 S. gallolyticusのMLST法の開発を下記のごとく試みた。
 まずS. gallolyticusと同定された58株を供試菌株とし、生化学的性状解析により、58株を3つの亜種に簡易的に分類した。 次に、供試菌株全株の Housekeeping遺伝子7つのシークエンス解析を行い、その結果を基に、MLST解析用ソフトウェアを用いて、 系統樹の作成等を行った。 その結果、S. gallolyticusの亜種を分類できる可能性が見出されたため、 これまで遺伝的な亜種同定法として用いられてきたDNA-DNAハイブリダイゼー ションを行い、より正確な亜種の同定を行った。 その結果MLST解析の結果と亜種分類の結果には、関連が見られたため、MLSTが新規のS. gallolyticusの亜種同定法として利用できることが示唆された。 亜種 gallolyticusに関しては、同一の祖先から分岐した菌株集団が様々な由来の菌株によって構成されていたことから、 subsp. gallolyticusは人獣共通の日和見感染症起因菌であることが示唆された。一方で、subsp. pasteurianusに関しては、ST14 complexという菌株集団が 大半を占めており、その由来、分離年との関連から、ST14 complexが環境に適応して、長期間生存し続けており、現在もヒトに病気を引き起こしている危険株 であることが示唆された。本研究により、今後のS. gallolyticusの疫学研究の進展が期待される


 
戻る