前川敬祐研究内容 <meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=Shift_JIS">

Development of a novel PCR assay for identification of Streptococcus suisStreptococcus suis 同定の為の新規PCR検査法の開発)

 Streptococcus suis感染症は若齢豚を中心に敗血症、髄膜炎、心内膜炎等を起こす疾病である。本病は世界中の養豚国で発生しており、また、人にも髄膜炎、 心内膜炎などを起こす ことが報告されているが、従来は散発的な発生に留まっていた。しかし、近年養豚が盛んなアジア諸国で人への集団発生が続発し 、人獣共通感染症とし ての本病の重要性が世界的に注目されてきている。タイやベトナムなどのアジア諸国においても豚あるいは豚肉等を原因とする人 の集団発生と死亡例が 報告されている。日本でも誌上に報告されていないものも含め少なくとも12 名の患者(うち2名は死亡)が確認されている。 S. suisは1~34型および1型と2型の両方の血清に反応する1/2型の35種類の血清型が当初報告されていたが、。このうち血清型32型と34型の参考 株については、 2005年にStreptococcus orisrattiと再分類され、計33の血清型株から構成されている。しかしながら、16S rRNA遺伝子の塩基配列の相同性を S. suisの標準株NCTC 10234Tと血清型20, 22, 26, 33の参考株を比較したところいずれも98.5%以下であることが判明し、これらの血清型参考株は S. suisに属さないことが疑われている。そこで本研究ではS. suisの標準株NCTC 10234Tと血清型20, 22, 26, 33の各参考株の全ゲノムの相同性をDNA-DNA ハイブリダイゼーション法を用いて調べ、いずれの値も「同種」と判定する閾値である70%以下であること、すなわち血清型20, 22, 26, 33はS. suisに は分類されないことをを明らかにした。次いで本研究ではS. suisの遺伝子群で細菌細胞の生存必須のタンパク質をコードし、同種内では比較的温存された 塩基配列をもつとされる所謂「ハウスキーピング」遺伝子群の中の活性酸素の無毒化に欠かせないスーパーオキシドディスミュターゼをコードする sodA遺伝子とDNAの損傷部への修復に欠かせないrecN遺伝子に注目し、上記33の血清型に属する菌株における両遺伝子の塩基配列を決定した。 得られた塩基配列から統計ソフトを用いて菌株の系統樹を作成 すると血清型20, 22, 26, 33の菌株がそれ以外の血清型の参考株の系統から大きく 「逸脱」した頃に位置する事を報告している。これまで他者による研究では、S. suisに特異とされる16S rRNA遺伝子配列やハウスキーピング遺伝子の 1つであるグルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子配列を標的としたPCRで「S. suis」と同定していたが、これらの同定法では血清型 20, 22, 26, 33の参考株はS. suisと同定されていた。以上の研究結果より、本研究では血清型20, 22, 26, 33参考株を除くS. suis菌株に共通の recN遺伝子配列を標的としたプライマー用いた正真正銘のS. suis同定用PCR法を開発した。今後人や家畜の臨床現場での迅速簡便かつ正確な診断 にこのPCR法が大いに役立てられることが期待される。


 
戻る