宿主由来の異なるBifidobacterium longum株のオリゴ糖利用能に関する研究

 B. longum subsp.longumの製品由来10株、ヒト糞便由来23株と既存の菌株保存施設から入手した標準株3株について、3種類のオリゴ糖(ラクチュロース、ラフィノース、フラクトオリゴ糖)と対照としてグルコースの計4種類の糖質での資化能を比較し、さらにオリゴ糖の分解、輸送と代謝に関与する遺伝子群の有無を調べた。
 使用した菌株間でオリゴ糖資化能の差が認められた。製品由来株の中には3種類の内すべて或はいくつかのオリゴ糖に対して、顕著に低い資化性を示した株が10株中7株存在した。一方ヒト糞便由来株は製品由来株と比較して、3種類のオリゴ糖に対して、おおむね高い資化性を示していたが、菌株間でオリゴ糖の資化能にバリエーションが認められた。この所見より、オリゴ糖の資化能の低い製品由来ビフィズス菌株は宿主の腸管ムチンや食物由来のオリゴ糖を利用できないため、定着できないが、所謂「土着」ビフィズス菌は食物或はムチン由来のオリゴ糖を利用できるので定着することが示唆された。
 ビフィズス菌のオリゴ糖を資化する上で重要な役割を果たしていると思われる菌体外でオリゴ糖を分解する酵素をコードする遺伝子群、分解されたオリゴ糖の一部の菌体内への輸送に関与する酵素をコードする遺伝子群、輸送されたオリゴ糖断片の代謝に関与する酵素をコードする遺伝子群の有無を調べた結果、遺伝子の有無とオリゴ糖の資化能には明らかな相関が認められなかった。しかしながら、フラクトオリゴ糖の輸送に関与するサッカロースパーミアーゼ遺伝子BL0106はJ9を除くすべての株に確認され、β―フラクトフラノシダーゼをコードする遺伝子BL0105は全株に確認されたにもかかわらず、フラクトオリゴ糖を含む培地での増殖が顕著に低い株が存在していた。このことから遺伝子の発現レベルの強弱がその糖の資化能に関与していることが示唆された。


 
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