(3)ビフィズス菌の免疫賦与性に関する研究



1.Bifidobacterium longumの人腸管上皮細胞および免疫関連細胞間のクロストークに関する研究

 ビフィズス菌は腸内細菌叢の優勢種の一種であり、現在は健康を促進するという点で多くのプロバイオティクス製品等に利用されています。ビフィズス菌は疫学的に抗アレルギー作用や免疫賦活作用を持つことが示唆されているものの、その詳細は解明には至っていません。
 そこで本研究ではビフィズス菌の免疫調節作用の有無を、腸管擬似モデル(図5参照)を使用して検討することにしました。
fig1  この理由はビフィズス菌が大腸に多く存在し、ここに存在する腸内粘膜免疫に関与していることが考えられたためです。又、過去の研究では免疫担当細胞へのビフィズス菌の直接刺激が主に調べられてきましたが、大腸にはパイエル板などが少ないために、そのような直接接触は起こりにくいと考えられ、腸管の細胞を介して免疫担当細胞の動向を研究する所に本研究の特徴があります。本研究は大腸上皮細胞としてCaco-2を、免疫担当細胞として単球株化細胞THP-1を使用して腸管擬似モデル系を作製する所からスタートしました。過去の研究でも異種の細胞どうしを組み合わせた腸管擬似モデル系は存在しましたが、免疫担当細胞にはヒトの末梢血から採取した単球細胞を使用しているため、量や質の一貫性などに限界があると思われます。一方の本研究では株化細胞どうしを使用しているために長期にわたって実験をすることが可能です。又、本研究で使用している細胞の組み合わせでは過剰のTNF-αが産生されるために腸管炎症モデルとして使用している研究もありますが、適切な培養条件によってこのような過剰なTNF-αは産生されないことが確認できました。この腸管擬似モデル系を使用した実験で はCaco-2の管腔側(ビフィズス菌との接触が想定される)にビフィズス菌を添加し、免疫担当細胞から産生されるTNF-αを測定しましたが、過剰な産生は見られませんでした。しかし、ビフィズス菌は元来腸管では寛容されている(無駄な炎症を引き起こさない)細菌であるので、腸管擬似モデルでも同様にビフィズス菌に対して過剰な応答があることは考えにくく、この実験結果は妥当だと考えられます。次にCaco-2を介してビフィズス菌の刺激をTHP-1が受けたと考えて、共培養後THP-1にLPSを添加したときのサイトカイン産生について調べました。この結果、ある種のビフィズス菌で刺激していた場合にはLPSに対するTNF-α産生が抑制されることが示唆されました。現在はこの実験の再現性を追試している段階です。





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