(5)Lactobacillus delbrueckii及びLactobacillus paracaseiにおけるイヌリン型フルクタン分解パターンの相違




 イヌリン型フルクタンは有用細菌の増殖を促進する代表的なプレバイオティクスの一つである。イヌリン型フルクタンとは末端にグルコースが結合したフルクトースの重合体で、重合度が3から100を超えるものまで多様な化合物が存在する。このイヌリン型フルクタンの分解メカニズムに関して、L. paracaseiについては細胞外で多重合の分子を分解した後に遊離したフルクトースを細胞内に取り入れることが報告されている一方で、L. delbrueckiiについては詳細な報告がない。そこで本研究では、L. delbrueckiiのイヌリン型フルクタンの分解メカニズムを明らかにすることを目的とし、基礎的な知見を得るため2菌種のイヌリン型フルクタンの分解パターンを比較した。
 乳酸菌の選択培地には通常グルコースを炭素源として含有するMRS培地が用いられる。そこでMRS培地からグルコースを除き、フルクトース、スクロース又はイヌリン型フルクタンにそれぞれ置換した培地を作製し、それらの培地での2菌種の増殖を観察した。その結果、L. delbrueckiiは重合度の高いイヌリンで旺盛な増殖を示したが、フルクトースやスクロースといった単糖や二糖では緩慢な増殖を示した。一方で、L. paracaseiは全ての糖で旺盛な増殖を示した。
 次に、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)法によりイヌリン型フルクタン添加培地での培養上清を展開し、そこに残存する糖成分を可視化し、イヌリン型フルクタン分解様式を比較した。その結果、L. paracaseiはイヌリン型フルクタンで培養すると培養上清中に短鎖の糖成分の蓄積が観察されたが、L. delbrueckiiでは観察されず重合度の高い領域のスポットが消失していた。以上より、L. paracaseiはイヌリン型フルクタンを細胞外で単糖や二糖に分解した上でこれらを菌体内に取り込むが、L. delbrueckiiはそのまま直接細胞内に取り込んでいることが示唆された。  


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