研究解説

ここでは陰山がこれまで行ってきた研究を紹介します。

地磁気の謎と地球ダイナモシミュレーション

dipole_field 地磁気(地球磁場)は地球内部のコアと呼ばれる部分に流れる10億アンペアもの莫大なリング状電流が作り出しています。 この電流が西向きのリング状に流れているために地表のコンパスは常に北を指します。 地磁気の謎は、

の二つに集約されます。

dipole_field_reversal

地球磁場の起源を探る有力な研究手段の一つとしスーパーコンピュータを使った計算機シミュレーション研究があります。 陰山は、1990年代半ばから急速に発展したこの研究分野の発展にわずかではありますが寄与してきました。 地球ダイナモシミュレーションについて詳しくは、 雑誌「科学」に陰山が書いた解説記事をお読み下さい。

地球ダイナモシミュレーションでは、 地球コアを記述する基本方程式であるMHD方程式を計算機を使って数値的に解きます。 MHD方程式にはいくつかの物理パラメータが含まれていますが、 現実の地球コアのパラメータ(特に粘性率)をそのまま使って解くことは 現在世界最速のスーパーコンピュータの計算能力でも足りません。 そこで、地球ダイナモシミュレーションでは 計算で使う粘性率を(仕方なく)現実の地球コアでの値とはケタ違いに異なる値を採用して計算しています。

それでも、双極子磁場の生成やその逆転という興味深い現象が、 少なくとも定性的には計算機の中で再現できることがわかりました。 これはMHD方程式という基本方程式に、 これらの興味深い性質が書き込まれている (つまりマントルの影響など、MHD方程式以外に複雑な原因を求める必要はない) ということを示したという点で、 計算機シミュレーションという研究手法の大きな勝利だと陰山は考えています。

幸い、スーパーコンピュータの計算能力は指数関数的に進歩しています。 その時代のスーパーコンピュータの計算能力を十分に引き出すことができれば (それは実はかなり大変なことではあるのですが)、 より現実に近いパラメータ(粘性率)での計算が可能になります。

陰山は共同研究者の宮腰と共に、ここ数年、地球シミュレータの多数のコア(最大4096コア、これは初代地球シミュレータで一つの計算に許される最大の計算規模でした)を使った大規模な並列計算機シミュレーションを行い、 低粘性率フロンティアとでも呼ぶべき未知のダイナモ領域を調べています。

陰山の地球ダイナモシミュレーション研究については以下も御覧下さい:

インヤン格子

yin_yang_grid 天文学や地球科学では球の形をした空間領域に計算格子を置く必要がありますが、 球座標に基づく単純な計算格子(緯度経度格子)では計算効率を上げることができません。 この問題を解決するために陰山は「インヤン格子」という格子を考案しました。 インヤン格子は、複数の要素格子(この場合は二つ)を、 部分的な重なり合いを許しながら組み合わせて球面を覆ういわゆるキメラ座標の一種です。

yin_yang_symbol

その形状が、中国のインヤン思想のシンボル(あるいはその3次元拡張版)を連想させるので、 インヤン格子と名付けました。「インヤン」は漢字では「陰陽」と書きます。

インヤン格子の二つの要素格子は、向きがちがうだけで実は全く同じもので、 通常の球座標における緯度経度格子の低緯度領域を抜き出したものです。 インヤン格子には、通常の緯度経度格子法において問題となる二つの問題、 (1)座標特異点と、(2)格子間隔の極端な不均一性を持たないという特徴があります。

baseball_picture

インヤン格子は野球のボールに似ています。 野球ボールの表面にある縫い目は、一本の閉じた曲線です。 この縫いに沿って鋏を入れると、2枚の全く同じ形をした布を組み合わせて野球ボールが作られていることが分かります。

インヤン格子は、2003年の数値流体力学シンポジウムで初めて発表 しました。

ちなみに、この時の反響は皆無でした。 その後、幸いなことにインヤン格子は地球ダイナモ、マントル対流をはじめ、様々な分野で応用されています。

VFIVE

VFIVEはCAVE型バーチャルリアリティ(VR)装置用の3次元可視化ソフトウェアです。 陰山が核融合科学研究所において開発しました。 現在は地球シミュレータセンターの大野暢亮さんが精力的に開発を続けています。 詳しくは VFIVEのホームページ をご覧下さい。

今後はVFIVEをさらに改良したソフトを作る予定です。

VFIVEについては以下も御覧下さい:

2009年オープンキャンパス用ポスター