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深城 英弘 (ふかき ひでひろ)

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1969 年生 東京都出身


【学歴】

1988. 3
東京都立戸山高等学校卒業
1989. 4
京都大学理学部入学
1993. 3
京都大学理学部卒業
1993. 4
京都大学大学院理学研究科植物学専攻修士課程入学
1995. 3
同課程修了・修士(理学)
1995. 4
京都大学大学院理学研究科生物科学専攻博士後期課程進学
1998. 3
同課程修了・博士(理学)


【職歴】

1997. 4
日本学術振興会・特別研究員(DC2) (京都大学大学院理学研究科生物科学専攻・植物学教室・植物生理生態学講座)
1998. 4
奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科・博士研究員 (形質発現植物学講座)
1998. 11
ニューヨーク大学生物学科・博士研究員(Philip N. Benfey 研究室)
2000. 5
奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科・助手 (形質発現植物学講座)
2006. 4
神戸大学理学部・助教授
2007. 4
神戸大学大学院理学研究科・准教授
2014. 4
神戸大学大学院理学研究科・教授   現在に至る。


【学会活動・その他】

日本植物生理学会、日本植物学会、植物化学調節学会各会員
Journal of Plant Research, Editor(2009-2012)
日本植物生理学会 Plant & Cell Physiology 将来計画検討ワーキング委員(2010-2012)
日本植物学会広報委員(2013.1-2014.12)
日本植物生理学会運営委員(2013.1-2015.3)
日本植物生理学会評議員・代議員(2014.1-現在)
Plant & Cell Physiology, Editorial Board(2013.4-2016.12)
放送大学教養学部「植物の科学('15)」分担講師(2015.4-2020.3)
Journal of Plant Research, Editorial Board(2018-)
日本植物学会・代議員(2018-2020.6)


【研究活動】

令和元年度〜令和5年度 新学術領域研究「細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生」計画研究班員
 研究課題「側根新生の時空間的周期性と可塑性を実現する仕組みの解明」
 新学術領域研究「細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生」領域ウェブサイト

平成25年度〜平成29年度 新学術領域研究「植物発生ロジックの多元的開拓」計画研究班員
 研究課題「根の成長・発生ロジックの解明」
 新学術領域研究「植物発生ロジック」領域ウェブサイト

平成19年度〜平成24年度 特定領域研究「植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系」計画研究班員
 研究課題「根系構築の基礎となる根端メリステムの発生機構」
 特定領域研究「植物メリステム」領域ウェブサイト

現在までに参画した研究課題【科学研究費助成事業データベース】

【受賞】

1998.3
Human Frontier Science Program Organization, Long-Term Fellowship Award
2008.3
2008年度日本植物生理学会奨励賞「高等植物における根の発生機構に関する分子遺伝学的研究」

 

【これまでの主な研究】


 植物の器官発生・組織分化および環境応答の機構を明らかにするために、主にモデル植物シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) を材料として、これまで主に以下の 3 つのテーマで研究を行ってきた。


(1)植物の側根発生の機構に関する研究

  1. <側根形成開始に関わるオーキシン応答リプレッサーSLR/IAA14の解析>
     側根を全く形成しないシロイヌナズナ優性変異体slr (solitary-root) を単離し分子遺伝学的解析を行った。slr 変異体がオーキシン応答リプレッサーAux/IAAファミリーメンバーの IAA14 の機能獲得変異体であること、および slr 変異によって本来不安定な IAA14 タンパク質が安定化したことにより、側根形成開始の内鞘細胞分裂が抑制されることを明らかにした。これらの結果から、オーキシンを介した遺伝子発現制御が側根形成開始に重要なことを強く示唆した.
    (Fukaki et al., 2002, Plant J. PubMed

  2. <側根形成開始を制御するARF7-ARF19-SLR/IAA14モジュールの解析>
     側根形成を正に制御するオーキシン応答転写調節因子 ARF7、ARF19 とオーキシン応答リプレッサーIAA14 との相互作用解析から、slr 変異体では安定化した変異型 IAA14 タンパク質が ARF7、ARF19 の転写活性化能を抑制することにより、側根形成開始に必須な下流遺伝子の発現が負に制御されていることを強く示唆した.
    (Fukaki et al., 2005, Plant J. PubMed

  3. <側根発生を制御する組織特的オーキシン応答の解析>
     変異型 IAA14 タンパク質を用いて組織特異的にオーキシン応答を抑制させた形質転換植物の解析から、側根形成開始や側根原基形成に必要なオーキシン応答組織を明らかにした。特に原生木部に接する内鞘細胞におけるオーキシン応答が側根形成開始に必須なことを初めて示した.
    (Fukaki et al., 2005, Plant J. PubMed

  4. <SLR/IAA14に制御される側根形成関連遺伝子群の網羅的同定と解析>
     野生型と slr 変異体の根におけるマイクロアレイ解析から、slr 変異によって発現抑制される側根形成関連遺伝子を多数同定した.
    (Vanneste et al., 2005, Plant Cell; ベルギー・Ghent 大学・Beeckman らとの共同研究. PubMed

  5. <クロマチンリモデリングによる側根形成制御の解析>
     slr 変異体の側根欠失表現型を抑圧するサプレッサー変異体ssl2の解析から、クロマチンリモデリング因子 PICKLE がオーキシンを介した側根形成を負に制御することを遺伝学的に明らかにした.
    (Fukaki et al., 2006, Plant J. PubMed

  6. <側根形成開始を制御する転写因子ARF7, ARF19の標的遺伝子LBD16, LBD29の解析>
     側根形成で機能するARF7、ARF19の標的遺伝子として、根で特異的に発現するLBD16/ASL18, LBD29/ASL16遺伝子を同定した。形質転換植物を用いた解析などから、ARF7、ARF19がこれらの遺伝子を直接活性化することにより側根形成を制御することを明らかにした.
    (Okushima et al., 2007, Plant Cell . PubMed

  7. <側根形成とシュート発生に関わるオーキシン応答リプレッサーCRANE/IAA18の解析>
     側根形成能が低下した優性変異体craneを単離し分子遺伝学的解析を行った。crane変異体がオーキシン応答リプレッサーAux/IAAファミリーメンバーの IAA18の機能獲得変異体であること、IAA18がARF7、ARF19と相互作用すること、および crane変異によって側根形成だけでなく地上部シュートの形態にも異常を引き起こすことを明らかにした。これらの結果から、CRANE/IAA18がSLR/IAA14と共にARF7/19による側根形成を負に制御することを示した.
    (Uehara et al., 2008, Plant Cell Physiol. PubMed)

  8. <オーキシンを介さない側根形成制御因子RLFの同定と解析>
     側根の形成頻度が低下した劣性変異体reduced lateral root formationrlf)を単離し、分子遺伝学的解析を行った。rlf変異体の原因遺伝子が、細胞質に存在する機能未知なシトクロムb5様ヘム/ステロイド結合ドメインタンパク質をコードすることを明らかにした。また、rlf 変異体ではARF7/19を介したオーキシン応答に異常がないことから、RLFがARF7/19を介したオーキシンシグナル伝達とは独立に側根形成を調節していることを示した.
    (Ikeyama et al., 2010, Plant J. PubMed)

  9. <側根創始細胞の非対称性の確立におけるLBD/ASL遺伝子群の機能解析>
     側根の形成開始に必要なSLR/IAA14-ARF7-ARF19オーキシンシグナルモジュールの下流で誘導されるLBD16/ASL18を中心としたLBD/ASLタンパク質群の機能解析を行った。LBD16/ASL18タンパク質が根の内鞘細胞のうち,側根を生み出す細胞(側根創始細胞)において,側根形成が開始される時期に特異的に発現することを示した.さらに,LBD16/ASL18とその類似タンパク質群の機能を同時に抑制したところ,側根創始細胞において核の移動をともなう非対 称性が確立されずに等分裂が1回起こるだけで,その後の側根形成が完全に阻害された.これらの結果から,LBD16/ASL18タンパク質や類似の LBD/ASLタンパク質群は側根創始細胞の非対称性の確立を制御することで,側根の発生を誘導していることが明らかとなった.
    (Goh et al., 2012a, Developmemt PubMed)

  10. <オーキシン応答リプレッサーSHY2/IAA3を介した側根形成制御の解析>
     SHY2/IAA3の優性変異体アリル(shy2-101)をシロイヌナズナのColumbia系統から新たに単離し,この変異体の側根形成を詳しく解析した.shy2変異体では側根原基の形成や側根の出現が抑制される一方、側根形成部位の数が著しく増加していた.shy2変異体では内生のオーキシン量が増加していたことから,正常なSHY2/IAA3-ARFsシグナル伝達がオーキシン量の制御に重要であり,それを介して側根形成頻度を調整していると考えられる。また,shy2変異体における側根形成頻度の増加は,SLR/IAA14-ARF7-ARF19モジュールに依存して誘導されることを示した.これらの結果から,側根形成では複数のAux/IAA-ARFモジュールが互いに協調しながら,オーキシン応答を適切に調節し,側根形成を制御していることを示した.
    (Goh et al., 2012b, Phil. Trans. R. Soc. B. PubMed)

  11. <側根形成制能が顕著に低下するfewer roots変異体の解析>
     側根形成制能が顕著に低下する変異体として、小胞輸送を制御するArf-GFF因子をコードするGNOM遺伝子の点変異体アリルfewer roots fwr)を単離し,解析を行った.既知のgnom変異体アリルの多くが胚性致死または芽生え致死となるのに対して、fwr変異体は稔性があり側根形成特異的な異常を示す. オーキシン応答レポーター(DR5::GUS, pLBD16::GUS)の発現解析から、fwrでは側根形成開始部位におけるオーキシン応答の蓄積頻度が低下していた。これらの結果から、GNOMは側根形成開始のオーキシン応答の確立に必要なことが強く示唆された。
    (Okumura et al., 2013, Plant Cell Physiol. PubMed)

  12. <植物の側根の分裂組織を構築する仕組みの一端を明らかに -3Dライブイメージング技術を用いた新手法で->
     共焦点レーザー顕微鏡をもちいた3Dライブイメージング技術により、シロイヌナズナの側根発生過程を、生きたまま長時間に渡って観察できる手法を確立した。また、側根の形態形成に異常のある変異体(scarecrow)と野生型の発生過程を比較することによって、側根の発生および根の分裂組織を構築する仕組みの一端、特に根の分裂組織の働きに重要な静止中心(quiescent center)が確立する仕組みを明らかにした。
    (Goh et al., 2016, Development. PubMed)

  13. <根が適切な間隔で分岐する仕組みに働く植物ペプチドを発見>
     植物の根を分岐させる「側根」を作り出す細胞(側根創始細胞)が、すぐ近くに生じないように働くペプチドTOLS2(トルス2)を、シロイヌナズナから発見した。TOLS2ペプチドは側根創始細胞で産生され、植物ホルモンのオーキシンとLBD16タンパク質(転写因子)によってその発現が誘導される。また、TOLS2ペプチドは、側根創始細胞の周囲の細胞にあるRLK7受容体タンパク質に受容されると、側根創始細胞の形成を抑制する遺伝子を活性化する。本研究で発見したTOLS2ペプチド-RLK7受容体を介した経路は、「側根形成の側方抑制」の仕組みに働くことが初めて示されたペプチドホルモン応答経路である。
    (Toyokura et al., 2019, Developmental Cell. PubMed)

(2)植物の放射パターン形成機構の研究
 植物器官の放射パターン形成機構を解明する目的で、シロイヌナズナ放射パターン制御遺伝子 SCRSHR の機能解析を行なった。SHR が GRAS ファミリーに属する転写調節因子をコードすること、および SHR が SCR の上流で非細胞自律的に働き、内皮形成のための細胞分裂と分化を促進することを明らかにした(Helariutta, Fukaki et al., 2000, Cell PubMed)。また SCR が根だけでなく胚発生の放射パターンや葉や茎の放射パターンに必要なことを明らかにした(Wysocka et al., 2000, Development PubMed)。現在、根の放射パターンの多様性に注目して、シロイヌナズナの近縁種であるタネツケバナ属を用いた解析を行っている。

(3)植物の重力屈性反応機構の研究
 重力屈性反応機構を解明する目的で、シロイヌナズナ野生型におけるシュート重力屈性反応の生理学的解析を行うとともに、シュートの重力屈性異常変異体(sgr1sgr7rhg)を世界に先駆けて単離し、それらの生理学的・遺伝学的解析を行った。その結果、シュートでは内皮細胞層が重力屈性に必須であることを初めて証明し、内皮が重力感受組織であることを強く示唆した(Fukaki et al., 1996a, PubMed; Fukaki et al.,1996b, Plant Physiol. PubMed; Fukaki et al., 1997, Plant Cell Physiol. PubMed; Fukaki et al., 1998, Plant J., PubMed