かなり、永ながと書きます。暇な方は読んで下さい。
1999年、元旦。無事新年を迎えることができました。今年もよろしくお願いします。
今年、最初の日なのですが、仕事が丸一日休み(出港後、初の)で朝から祝賀会
でした。料理も今まで以上に豪勢で、船の上で、そして、南氷洋海域の付近でおせ
ちが食 べれるとは思いませんでした。朝から祝賀会ということは、朝から酒を飲む
!ということで、船内そこら中で酔っ払いがゾンビのように彷徨ってました。まあ
、船の方は かなりお強いのですが。僕はというと、日本酒を一升瓶の半分ちかく飲
んで昼頃には ダウン、ずっと寝てました。船内放送で、二次会を始めるからどうた
らこうたら・・ とながれてました。怖ぇ船だ。
船の現在地は南緯55°東経103°付近の暴風圏にいます。一回目の調査が終わり調 査海域から離脱、一度オーストラリアに戻るところです。おかげで船は揺れる揺れる で酒にもガンガン酔うといった有り様です。このあたりまで来ると、AM2:00頃には暗 くなり夜らしくなってきました。初日の出も観れそうだったのですが曇ってて無理だ ったそうです。どっちにしろ寝てましたが。夜が暗くなり始めたのでまだ観ぬオーロ ラを期待してる次第です。南十字星はちらっと観ました。ノルマのひとつをクリアです。
出航から7日目、ベッドで横になっていても転がってしまう暴風圏を越えて調査海
域(南緯60°付近)に到着。出航3日目以来船酔いは全く大丈夫だったので、海の青
と空の青が交互に窓を染める揺れ自体は平気だったのですが、それは体調についての
話。なにに困ったかというと、朝ごはんのみそ汁が飲みにくいじゃなくて、部屋の荒
れ模様。夜中からえらいもの音がしてるとは思ったのですが、朝起きたら机の上に置
いていたものがほとんど何処かしらに飛び散ってました。そのころの僕はまだ未熟者
だったので、本やノートからカメラ、シャンプーまで机上に並べてました。おかげで
、友達のベッド(二段式の下段)に飛び込んでた物品も多々ありました。その同室の
友達は仕事が夜勤なのでより悪い事をしてしまった気分。ちなみに部屋は2人部屋で
す。
朝ごはんのみそ汁が、と書きましたが食事は三食全て食べてます。学生で朝も食べ
てるのは僕だけみたいです。船に慣れてからは食事が美味しくばかみたいに食べてま
す。昼、夜の食事などはメインのおかずが二種類あるんじゃないかと言われてるぐら
いにボリュームがあります。それに対して(止めときゃいいいのに)飯を一杯ずつ食
べているので、太らないのが不思議なくらいです。やせの大食いとまで言われました
。みえないストレスが食べることにいっているのかと思うこの頃です。実際、消化し
て排泄してるというより、上から押し出しているといった感が強いですね。外での作
業でかなりのエネルギーは消費しているはずですが、帰るころには少々ふっくらした
体になってるかもしれません。
村上さんから体重に気をつけろというメールを頂いたのですが、その頃には三食たら
ふく喰ってる状態でした。手遅れっす。喰う量減らんし・・・。
さて、本船での仕事なのですが、調査海域に着くまでは海底地形デェジタイズがメ
インであとは採泥(コアサンプリング)の準備とプロトン磁力計の海への投入、調査
が始まってからは採取したサンプルの様々な処理がずっと続きます。
海底地形デェジタイズというのは、PDRとよばれている12kHzの波(音波)を船から
発し海底からの反射を拾った図(プロット)をデジタイザー(TVのリモコンみたいな
もん)でなぞりパソコンに読み込む作業です。生データを読み込むだけで、水圧、水
温、塩分濃度などの影響(音波にたいする)の補正は専門家が何処かでします。
本船からはSDRという3.5kHzの波もだしてますが、これは仕事にはかんでません。この二
つの音波は船底にいくと聞こえて、チュンチュン鳴いてます。これも仕事に関係ない
のですが、調査海域に入ってから地震探査も始まって海底に向かってガンガンとエ
アガンぶっ放してます。こっちは船に響きわたるぐらいやかましく、震動もうっ
とおしいです(メールかいてる際にパソコンがおちる)。地震探査では地電の教
官方の講議でおなじみの機器が海へ投入されてました。ほんと絵に忠実なものが。
フロートといって魚雷の様な浮きにエアガンを吊るしたものと、ストリーマーとい
って反射波を受 け取るセンサー(ハイドロフォン)の付いた5kmにわたる紐(ゴム
チューブですが)を海に放り込んでました。それに伴ってプロトン磁力計を揚収、投
入するのですがその補佐も仕事のひとつです。
コアサンプリングの準備はサンプルケース、袋に番号を書いたり、グラビティ
コアラー(ピストンコアラーと異なり重力で落下させて海底に突き刺すタイプ)組み
立て 、その手順についてや、ちょっとした約束事(コアサンプルを置くときの方向や
上側のキャップは赤のビニテで、下側は青で止めるなどなど。サンプルが最大5.4mま
で採れるので1m毎に分けた時のための習慣として。)を覚えたり、その他諸々です。
サンプリングが一度行われると区切りがつくまでサンプルの処理が続きます。
これまで3本採りましたが、全工程に3日、4日かかることもあります。一本めのサンプ
ルは15:30ごろに上がって来たために作業終了は23:30とハードワークでした。内容
は、コアを包丁で半割り(インナーチューブはあらかじめ半分のものをビニテでつな
いで いる)にした後に、先ず写真撮影、岩石(?)記載、色測定(200万位する機械で
) 、顕微鏡ようのプレパラートー1の作成、含水率用・含砂率用・C14用・ソフトX線
用(微細な堆積構造を調べるとのこと)・化学分析用のサンプルを採取(片方の半
割れサンプルから)。これが初日。
サンプル採取を行った穴ぼこのほうを2cmずつ採取。
微化石用と化学分析用にひとつおきににわける。この時点でコアの片割れは綺麗
に無くなる(インナーコアに触れてた部分は切り落としてますが)。含砂率をだすた
めの計量。そのサンプルからもプレパラートー2を作成。上の作業と平行してもうひと
つの反割れサンプルで熱伝導率を測定。測定後、そのサンプルからみなさんおなじ
みの古地磁気用のキューブサンプルを採取(一列だけですが)。ここまでが2日目。3
日目は帯磁率の測定(LF,HF)、平行して顕微鏡で粒子、有孔虫、珪藻などの比率を見
た目で記載。だいたいこんなところです。それらを分担して平行させながら行ってます。
なかなか多いと思いません?
他にも、グラビディコアラーと天秤状につるしたミ
ニコアラーで採取した海底表層のサンプルとかもあります。ドレッジ(海底をばけつ
引きずってサンプリング)も一回やったな。マンガンでコーティングされた石英の多
い岩が採れました。グラビティーコアラーで採ったサンプルの処理はいろいろと勉強になります。
ああ、仕事だけでかなり書いたな・・。
氷山はもう見慣れました。が、陽が当たってるかどうかでも色が変わって見え
ますし、同じ形なんてないので見飽きることがないです。陽が当たってると鮮やかな
水色ですし、曇ってるときは真っ白です。虫歯のようなのもあれば、平らで土俵のよ
うなのがぷっかりと浮いてたりします。おおきな氷山(船よりも明らかにでかいから
、クラッシュするタイタニックみたく劇的に沈むどころではなく、はじかれて転がっ
てしまいそうな。)も多々流れてきて、感動もしました。初氷山は12/17(木)、四回
生のゼミの日でした。初雪は12/22の朝。真横に吹雪いてました。南緯60°あたりま
で来ると気温も2°くらいになります(気持ちいいから作業時以外は防寒具は着ない
けれど)。夜中になってもぼんやりと明るく日が沈みきってません。白夜ってやつ
です。白夜になると、海が鏡のような色になってなかなか神秘的でもあります。波が
あまりたたない曇った日に見れます。
オーロラ観ました!!始めのほうにまだ観てないと書きましたが、うだうだと
書きつづっている間に現れてくれました。1/2(土)、22:40(オーストラリア時間、
日本より1時間遅れ)頃から20分ぐらい。感激でした。どのようだったかというと、始
め 、薄いぼんやりとした白色の一枚のカーテンでした。ぼんやりでしたが波打って
いる(脈動)してるのがよくわかりました。しばらく続いた後、次第に薄緑色にかわ
り、何本もの槍のように縦に別れました。これは、オーロラの真下にきたためにオー
ロラのレイ(鉛直方向への光の筋)がくっきりと見えたのだと思います。光はさらに
明るくなり雲に隠れている部分も白と緑の混ざった光に照らされてました。消えるま
で15分ぐらい。消えるときは雲のように(一本の帯ですが)見えたかとおもうとすっ
と無くなってました。
バックに南十字星と別方向に満月、そのまま額にはめてもって帰りたい情景で
した。
興奮がおさまってから、色、形、変化を思いだしながらオーロラの分類に照 らすと 、この日のものはタイプCのバンド・オーロラでした。タイプCのオーロラっ てのは高 度100〜150kmまで進入してきた荷電粒子が酸素原子に衝突したときに原子 にエネルギ ーを与え、その原子が元の状態(エネルギーが安定な)に戻るために発 する5577オン グスロームの光(緑)で現れます。このエネルギー段階は2段階目で 、もう一段階低 い状態もあり、その段階からは6364、6300Aの赤い光が出るのですが 高度の関係上光 をだす前に他の粒子とぶつかってエネルギーを無くしてしまうので結 果として緑色の オーロラに見えます。粒子密度の低い高度でなら、緑の後に赤のも のも観れます(も ちろん、それだけのエネルギーを受け取っていればの話)オーロ ラのタイプはA〜Fま であるみたいです。 オーロラ発生時の位置は南緯50°50分、東経106°20分のあたり。曳航してるプ ロトン磁力計の値はさほど変わってなかったですが、63000nT以上で本航海で最も高 い地域でした(と思う)。
もっとも期待してたものが観れて感無量です。後は、南極大陸とペンギン(着 ぐるみじゃないやつ)、願わくばダイヤモンドダストも・・、と思ってます。オーロ ラと違って写真に撮れそうですし。
そろそろ、一回目の航海も終わります。今となってはあっというまに過ぎて しまいましたが、貴重な体験です。少し長めの次の航海(37days)もしっかりと楽し む所存です。 それでは、このへんで。
桐本 尚志
この後、うだうだ日記3を執筆し船上から送る予定でしたが、 船中の生活に堕落してしまいうやむやになりました。