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Speaker |
Title ( Abstract : Click the title ) |
4/10(Wed.) |
伊藤飛鳥
(神戸大学)
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高周波重力波の観測に向けて
2015年のLIGO干渉計による重力波初観測(~kHz)に始まって、最近ではパルサータイミングアレイがnHz帯の重力波を観測した。
新しい宇宙背景放射観測プロジェクトであるLiteBIRDが始まるなど、より低周波の重力波観測(aHz~fHz)も期待されている。
一方で、GHz以上の高周波重力波観測は未だ発展途上であり、新しい観測方法の提案と開発が求められている。
本講演では、高周波重力波観測に向けて提案したテーブルトップサイズの実験や、望遠鏡を用いた観測方法について紹介し、
将来の展望について話す。
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4/17(Wed.) |
神野隆介
(神戸大学)
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高エネルギー初期宇宙における一次相転移と重力波生成
今後10-20年の間に、宇宙空間干渉計を用いた重力波観測によって初期宇宙を探る絶好の機会が訪れる。
特に興味深いシナリオは、真の真空の泡が核生成・拡大・衝突し、周囲のプラズマ粒子のダイナミクスを引き起こす一次相転移である。
本トークでは、一次相転移の引き金となる高エネルギー物理から重力波の観測的見通しに至るまで、ミクロ的側面とマクロ的側面の両方を概観し、最近の進展について議論する。
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4/24(Wed.) |
坂本眞人
(神戸大学)
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標準模型の謎
ヒッグス粒子が発見されて、素粒子標準模型に含まれる役者はすべてそろったことになる。
標準模型は膨大な数の実験結果を説明することができ、その地位を確固たるものにしている。
しかしながら、標準模型を最終理論と見なすことはできない。
なぜなら、数多くの謎が標準模型に残されているからである。
本講演では、標準模型を超えた理論(beyond the standard model)の足掛かりとなるように、標準模型に残された謎を紹介する。(内容は、主に4年生と修士の学生を対象にしたものです。)
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5/8(Wed.) |
早田次郎
(神戸大学)
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原始重力波の量子性検証に向けて
インフレーション理論の最大の予言は、宇宙の大規模構造の起源が量子揺らぎにある、という点である。
特に、原始重力波は時空の量子揺らぎであり、それが発見されれば大きなインパクトがある。
さらに、その量子性が検証されれば、量子重力理論という物理学者の夢へ大きく前進する。
ここでは、その始めの一歩を如何に踏み出すかを議論する。
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5/15(Wed.) |
大宮英俊
(京都大学)
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ブラックホール周囲のアクシオン雲による重力波放射
超弦理論から予言される超軽量粒子(アクシオン)を重力波観測により探査する試みが活発に議論されている.
そのような試みの一つとして,ブラックホール周囲に形成されるマクロスコピックなアクシオンの凝縮体(アクシオン雲)が放射する重力波を直接観測するというものがある.
実際に重力波を観測する際には,様々な影響を考慮したアクシオン雲の進化とそれに基づく重力波の計算が必要不可欠である.
本講演では、アクシオン自己相互作用が雲の進化に与える影響と,それを考慮した上で期待される重力波について議論する.
特に,deci-Hz帯において従来考えられていたよりも大きな重力波が放射される可能性について議論する.
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5/22(Wed.) |
山内 大介
(岡山理科大学)
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位置天文を用いた背景重力波の検証
近年、パルサータイミング法を用いて背景重力波の傍証が得られたという報告がなされ、大きな注目を集めている。
この手法ではパルサーから放出される精密なパルスを時計として用いて、重力波による時間のズレを計測している。
その一方で、重力波が存在すると、重力レンズ効果により天体の位置がズレて見えたり、特異速度を持っているように振る舞う。この効果を用いた重力波の観測手法が位置天文(アストロメトリ)法である。
本講演では、位置天文を用いた背景重力波の観測可能性について概説する。
また、Gaia衛星による位置天文の最新の観測データから得られた低周波背景重力波の制限について紹介するとともに、将来の展望についても議論する。
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5/29(Wed.) |
岡林一賢
(YITP)
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リサージェンス理論で見る量子宇宙論
宇宙の起源はなにか?という究極的な問いに対し、重力理論を正準量子化することで時空構造の量子性を取り扱う量子宇宙論によると、宇宙の初期状態としてHartleとHawkingによる無境界仮説とVilenkinによるトンネリング仮説がありうるのではないかと提唱されている。
これらは元々Euclid型の経路積分に基づくもので、通常の場の理論と異なり重力理論の場合Wick回転によってそれを正当化できない。
そこで、Lorentz型の経路積分を考えて有限な結果を与える経路を調べると、無境界仮説とトンネリング仮説に対応するものが縮退して現れうることが明らかになっている。
これは、無境界仮説とトンネリング仮説のどちらが選ばれるか一意的に決まらない場合があることを意味する。
本講演では、そのような場合をリサージェンス理論の観点から見直し非摂動効果を取り入れたときにどのように解釈されるか紹介する。
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6/5(Wed.) |
山本明
(神戸大学)
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Bose-Einstein凝縮を用いた原始重力波検出
2015年、重力波がLIGOによって観測され、重力波天文学が幕を開けた。
中でも、インフレーション由来の原始重力波の直接検出はインフレーション理論を検証できることから盛んに取り組まれている。
重力波を初検出したLIGOはレーザー干渉計であるが、近年、干渉計の代わりにBose-Einstein凝縮を使う可能性が議論されている。
本講演では、主にBose-Einstein凝縮を用いた重力波検出の仕組みのレビューを行う。
また、インフレーション由来の原始重力波の検出方法も概観する。
内容は主にB4向けになると思います。
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6/26(Wed.) |
鎌田歩樹
(University of Warsaw)
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Decay of scalar condensation: three approaches
Scalar condensation and its decay plays important roles in cosmology.
A notable example is inflation and reheating driven by inflaton condensation and its decay.
Three approaches can be found in literatures, to computing the decay (damping) rate of coherently oscillating scalar, One takes a naive time average of 'vacuum' inflaton decay rate in the presence of background field.
Another is based on the parametric resonance in a mode function of a daughter particle.
The other computes the imaginary part of 'vacuum' energy in the presence of background field.
In this talk, we address a question whether these approaches give the same decay rate, and if so in which limit.
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7/3(Wed.) |
千葉航
(神戸大学)
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TeVガンマ線バーストによる円偏光を用いたアクシオンの検証可能性について
2022年にガンマ線バーストが起源の数十TeVのガンマ線を検出した。
これは地球から約24億光年はなれた銀河から放出されたものだった。
標準物理では強い電磁波が銀河間空間を伝搬する時、電磁カスケードが起こるので、この観測事実を説明することができない。
つまり、この観測結果は標準物理を超えた現象であることを示唆する。
この問題を解決する1つのシナリオは理論に「アクシオン」を導入することであった。
本研究では、このシナリオから計算されるガンマ線バーストの偏光について議論する。
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7/10(Wed.) |
泉啓太
(神戸大学)
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中性子星クラストの熱的性質
中性子星は一般に太陽質量のおよそ8〜40倍の質量の恒星が超新星爆発を起こすことによって形成される星で、ほぼ中性子からなるコンパクト天体である。太陽程度の質量を持つ一方、半径がわずか10km程度と非常に高い密度を持つ。中性子星の内部についてはコアだけでなく、クラストと呼ばれる表面に比較的近い領域についても未だ分かっていないことが多い。
本発表ではPage&Reddy(2012)の論文をレビューし、中性子星クラストの熱的性質について理論と観測の観点から説明する。
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7/17(Wed.) |
山田雅俊
(吉林大学)
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汎関数くりこみ群の基礎と応用
本講演では、汎関数くりこみ群についての基礎とその応用方法について述べる。まず簡単な積分の例から始めてくりこみ群の基本的なアイデアを示したのちに場の量子論へと拡張する。応用例として量子力学における非調和振動子を例にとり、基底状態のエネルギーをくりこみ群を用いて評価する。数値的な厳密解と摂動解と比較し、くりこみ群が厳密解とよく一致することを示す。時間が許せば、次の例として、4次元Nambu-Jona-Lasinio模型を考え、相転移が起こる系をどのようにくりこみ群を扱うかを議論する。特に、本講演では、弱解の方法と呼ばれる手法について紹介し、その意味と展望について述べる。
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10/30(Wed.) 14:30~15:30 |
Dibya Chakraborty
Indian Inst. Tech.
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Inflationary Models in String Theory
In this talk, I will discuss a phenomenon called cosmic inflation in which the Universe went through accelerated expansion to solve the horizon problem of Cosmological Microwave Background within a billionth of a trillionth of a trillionth of a second, in the very early Universe. This accelerated expansion, in its minimal form, is driven by a scalar field (inflaton) and it takes place when this scalar field slowly rolls down a potential well. However, the origin of this scalar field and the correct form of the scalar potential remains an open question in cosmology. I will present a string theory motivated model where the inflaton is connected to the geometry of the internal space -- the overall volume of it drives the inflation. In particular, I will present a construction where the overall volume modulus (scalar field) is dynamically stabilized to an exponentially large value only via perturbative corrections, also known as perturbative large volume scenario (LVS). In this framework, the robustness of the single-field inflationary model is checked against possible sub-leading corrections. In the later part of my talk, I will focus on the global embedding of the fibre inflation in perturbative LVS and show how our constructions pose less challenge in realizing a successful period of inflation.
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10/30(Wed.) 16:00~17:00 |
Sagarika Tripathy
Indian Inst. Astrophys.
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Unraveling the origins of magnetic fields in the early universe
Magnetic fields permeate the entire universe, extending from the
smallest to the largest observable length scales. A popular explanation
for the origin of the magnetic fields observed in galaxies, clusters of
galaxies, and the intergalactic medium is that seed fields generated due
to quantum fluctuations in the primordial universe is amplified later by
astrophysical processes. According to the standard paradigm of
magnetogenesis, the seed magnetic fields on cosmological scales are
generated during inflation by breaking the conformal invariance of the
standard electromagnetic action. This is usually achieved through a
non-conformal coupling of the electromagnetic field to the scalar field
that drives inflation.
I will begin the talk with a brief introduction to the essential idea of
inflation. Thereafter, I will discuss the challenges in generating
primordial magnetic fields in non-trivial inflationary scenarios,
particularly focusing on how deviations from slow-roll inflation impact
the spectra of non-helical and helical electromagnetic fields across
large and small scales in single-field models of inflation. To
circumvent the challenges that arise in single-field models, in the
second part of the talk, I will discuss the generation of magnetic
fields in two-field models. In two field models with suitably chosen
non-conformal coupling functions, we can obtain spectra of magnetic
fields of the required strength and shape even in situations involving
strong departures from a slow roll. I will also discuss the imprints of
the primordial magnetic fields generated in certain two-field models on
the anisotropies in the cosmic microwave background (CMB).
Finally, I will discuss an alternative method for addressing the
challenges in magnetogenesis in single-field models, using a
non-conformal coupling function that depends on the kinetic energy of
the inflaton and I will highlight the corresponding spectra of
electromagnetic fields.
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11/13(Wed.) |
神田行宏
名古屋大学
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余剰次元模型における宇宙ひもの相互作用
近年の重力波観測の結果を受け、ワインボトル型ポテンシャルによる対称性の破れで形成される宇宙ひも(ANO string)のみならず、それ以外の種類の宇宙ひもの特性についても研究の動機が増している。我々はコンパクト化された余剰次元をもつゲージ理論において、細谷機構により対称性が破れた場合に形成される宇宙ひもとその相互作用について調べた。我々は、スカラーポテンシャルがワインボトル型から変化することにより、宇宙ひもが特定の距離だけ離れた状態が最安定になるという、ANO stringには無い特性を示すことを明らかにした。一方で、この性質は余剰次元ゲージ理論から予言されるパラメータ領域では顕著にならないことも明らかにした。また、この結果をColeman-Weinberg ポテンシャルでの宇宙ひもに関する先行研究の結果と比較することで、スカラーポテンシャルの変化による宇宙ひも間の相互作用の変化への理解が深められた。本発表は、arxiv:2409.18754 に基づく。
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11/27(Wed.) |
宮地大河
神戸大学
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完全WKB解析を用いたブラックホール準固有振動の解析
完全WKB解析を用いたブラックホール準固有振動の解析について論じる。完全WKB解析は2階常微分方程式の解の大域的挙動を近似無しで与える手法であり、特に固有値の満たすべき条件式を出す際に有用である。本講演ではこの手法を球対称なブラックホールの摂動方程式に適用する。特に一般相対論を超えた重力理論による補正の効果を取り入れた場合に、高減衰率をもつブラックホール準固有振動数の評価について論じる。
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12/18(Wed.) |
相子悠人
神戸大学
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covariant phase space formalismによるcausal diamondの解析
量子重力理論の文脈で、ブラックホールをはじめとするイベントホライズンを含む時空に関する研究がこれまで数多くなされている。
causal diamondは半径rの球から定まる因果的依存領域で、Minkowski時空に対しても定義できるホライズンを持った部分空間である。
これは初めに挙げた量子重力理論の文脈での解析もなされる一方、近年ではcausal diamondを用いた理論的セットアップで時空の量子ゆらぎを観測しようとする動きもある。
本セミナーでは、平坦時空上のcausal diamondにおいて、その半径と関連するもう一つの力学的自由度をcovariant phase space formalismを用いて同定する方法(arXiv:2408.11094)をレビューする。
この定式化によって得られる量の物理的な意味はまだ明瞭ではないため、その議論を行うほか、膨張宇宙への応用可能性についても触れる。
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1/8(Wed.) |
千草颯
MIT
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ダイヤモンド中のNV中心を用いた軽い暗黒物質探索: 電子スピン、核スピン、共磁気測定
本セミナーでは、ダイヤモンド中の窒素空孔中心(NV中心)を用いた量子センシング技術を活用し、アクシオンやダークフォトンといった軽い暗黒物質を直接探索する新しいアイデアについて議論します。これまでの研究(2302.12756)を基に、NV中心による磁気測定の仕組みと、それを暗黒物質探索にどのように応用できるかを解説します。また、窒素の核スピンを利用してアクシオン暗黒物質に対する補完的な制約を提供する方法(2407.07141)を紹介するとともに、磁気ノイズを削減するための共磁気測定のアプローチについても触れます。NV中心は量子センシング装置として、広い周波数帯域での感度向上や新たな量子的利点を持つ可能性があることを強調します。
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1/15(Wed.) |
郭優佳
名古屋大学
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Gravitational entanglement witness through Einstein ring image
量子重力理論はまだ解明されておらず、その理由の一つに実験事実が不足していることが挙げられる。量子重力の解明に向けて、2017年にBose、Marletto、Vederalらは「量子的な重ね合わせ状態にある質点間に働くニュートン重力は量子もつれを生成するか」という問いを検証する実験を提案した(BMV提案)。この提案は、ニュートン重力が持つ量子的性質を比較的低いエネルギー領域で実験検証可能であるとして注目を集めている。
本講演では、BMV提案の相対論的な拡張として、量子的な重ね合わせ状態の質点が作る時空における光の散乱(重力レンズ効果)を解析し、重力を介した量子もつれ生成との関係を議論する。光のトイモデルとして無質量スカラー場を扱い、重ね合わせ状態の時空においてその挙動を計算し、観測されるスカラー場の像(アインシュタインリング像)を示す。最後に、適切な量子測定を行うことで、アインシュタインリング像から重力が作る量子もつれの有無が視覚的に検証できることを明らかにする。
本講演の内容は南部保貞氏との共同研究で、arXiv:2411.12997に基づく。
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1/22(Wed.) |
川平将志
京都大学
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IR divergences and factorization algebras
場の量子論の数学的な定式化は,長年の未解決問題である.近年,Kevin
Costello氏とOwen Gwilliam氏により,因子化代数(factorization algebra)に
基づく新たな場の量子論の数学的定式化が提案された.本発表では,この枠組み
に基づき,場の量子論の赤外発散の取り扱い方法を議論する.
なお,本発表は繁村知宏氏(京都大学大学院生)との共同研究(arXiv:2412.
08183[hep-th])に基づく.
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1/29(Wed.) |
B4
神戸大学
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卒研発表練習
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Every weekday at 12:30~13:00pm in Common room.
astro-ph, hep-ph, gr-qc, hep-thのarXivの最新投稿を大型液晶モニターに映して皆で議論します。
議論の厳密性は過度に求めず、誰でも参加を歓迎しています。