Fundamental

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 イオントラックとは、高エネルギーに加速されたイオンが高分子材料やガラス、 あるいはサファイア等の誘電媒質中に作り出すナノスケール幅の痕跡です。イオン がその通り道の近くにある原子の電子を直接電離し、その電子がさらに周辺の原子 に影響するため、極めて高い密度のエネルギーが瞬時に局所的に付与されます。 その結果、イオンの通り道に沿った狭い範囲内で分子構造が乱され、熱力学的に 不安定な状態がつくられます。そのような領域がイオントラックです。私たちは イオントラックの基礎と応用に関する研究を進めています。

 ここに言う基礎研究とは、イオントラックの構造と形成機構の解明、その物理的、 物理化学的、化学的、そして光学的特性の評価を目指すものです。イオンを検出する 放射線検出器としては、化学エッチングによってイオントラックを拡大・可視化する エッチング型飛跡検出器とレーザー照射によって生じる蛍光を利用する蛍光型 飛跡検出器とがあります。これらはイオンの通り道を直接観察・可視化し、映像から それぞれのトラックを評価するユニークな検出器です。その分析のために赤外線分光、 紫外・可視分光、ラマン分光、光学顕微鏡、原子間力顕微鏡、蛍光顕微鏡等の 最先端の実験的手段を駆使します。分子力学や分子動力学、分子軌道計算による シミュレーションを利用します。これらを通じて両検出器の動作原理を基礎から明らか にします。前者の代表であるCR-39飛跡検出器については世界的に信頼されている成果 を発表しています。