重イオンを用いたガン治療が展開され、その成果と実績が積み上げられている一方で、人体への放射線影響、特にガンの発生機構については、まだまだ分からないところがあります。 遺伝子に生じた損傷が、突然変異を引き起こして、それがきっかけとなってガン細胞が生まれるといった見方は既に保古になっています。1990年代以降に盛んになったマイクロビームを使った実験では、イオンが当たった細胞ではなくて、その近くにあった細胞や数世代後の細胞で突然変異の確率が高くなるバイスタンダー効果と言った現象が確認されています。イオントラックはイオンの当たった場所の確かな証拠として実験に利用されています。また、高分子中で確立しつつあるトラック内損傷構造に基づいて、生体組織中のトラック構造についての研究に活用させる方途を探っています。 |